参話。
嗚呼、空が青いな。
他の生徒の儀式が終るまで、自由時間だそうだ。だから、今は外でブラブラと散歩をしていた。
快晴の中で真っ黒なロングコートを翻した俺は、眼の前を歩く少女に語りかけた。
「なぁ、エルナ。お前、歳いくつなんだ? 見た所、十四、五くらいか」
「私は十五ですよぅ。……あなたはいくつなんですか?」
なんだ、二つ下なのか。
童顔だからもう少し下にも見えるが、何故か育ちに育ちまくっている"ソレ"のせいで、中和されていた。と言うか童顔巨乳はこの世で反則だろ?
「俺は十七だ。年上だな」
「従魔が年上なのは当たり前なのです。精霊や魔獣、聖獣なんかが従魔になるんですから。ところで、名前をまだ伺ってませんでしたよね?」
「ふぅむ、そうか。俺の、名前……か」
「どうかされましたか?」
彼女は振り返って、俺の顔をやんわり笑いながら見つめる。
「名前なんて、ねぇよ。確かフッた女と一緒に捨てたね」
「え、ええ!? ほほ、本当ですか?」
「嘘だ。名前が無いのは本当だが、彼女がいたのは嘘だ。だからそんな悲しそうな目で俺を見ないでくれ」
とうとう、年下にまで哀れまれちまった。
別に顔は悪くないとは言われる。むしろ、いい方だ。
「そうなんですか。カッコイイのに勿体無いです」
あ、ヤバイ。ちょっと泣きそう。君だけだよ、人生の中でそういう事言ってくれた人は。周りの女は「金、金、金!」だったからなぁ……と、言っても全員危ない仕事の奴等だが。
「ありがとよ。一応二つ名はかなり多いんだが、本名がないんでね」
俺は何故か変な二つ名が多い。例えば、だ。
【死神殺し】やら【二挺一刀】なんかは分かる。
でも、【ふれでぃの孫】とか【じぇいそん君】なんて、もろパクリじゃねぇか。
誰だ、名前付けた奴、出てこぉい!
「じゃ、じゃあ。私が名前付けて良いですか?」
「却下だ」
「え!? な、なんでですかっ?」
「なんか、ネーミングセンスなさそうだから」
ポチとかタマとかゴルゴッソとかハンヌラバとか。
ドラ○エに出てきそうな名前を付けられそうな予感がしたから。
「だって、だって。……付けたいんだもん」
「駄目だ、泣き落としには慣れてるんだ。効かねぇからな」
それで、何回騙されて仕事のギャラを巻き上げられたか。
……くそっ、泣き顔可愛いじゃねぇかっ!
「分かった、分かったから。試しに一個言ってみろ」
「うん……カイト」
案外、まともだった。うん、結構悪くない。
「なんだ、結構まともじゃねぇか。名前の意味は?」
「この国の古い言葉で【守護者】って意味があるんですよっ♪」
「守護者、ねぇ……分かった、その名前貰ってやる」
殺し屋が、転じて守護者か。とんだ笑い話だな、畜生。
しかし、初めて貰う名前は妙に心に染み渡った。
「やった、今日から貴方はカイトです♪」
「分かったから、連呼するな。恥ずかしいだろ」
さぁて、俺はこの先どうなるのかねぇ?




