高い建物がないのが怖い
怖いというか、めちゃくちゃ心もとない気持ちになります。今年の秋、バリ島に行ったのですが、思った以上に高いビルなどがないことに驚きました……。昔ながらの暮らしというのは、すこしの間ならいいけれど、長く滞在していると気が滅入りそうになってきます。猛烈に不安な気持ちに襲われるんです。これは外国で、旅行だからいいですが、もし世界全体がそんな状態で、しかも一生暮らせと言われたら。そんなことを想像して、怖くなります。
拙作『aiolos(アイオロス)』からの引用です。
>ぼくは周囲の家々より明らかに頭ひとつ抜けて高い建物に目を奪われた。まぶしいほどにまっ白な、円筒形の塔。五十メートルはあるだろうか。この国に来てから、初めて見る高さだった。
>「鐘楼だ。恐らくアイオリアでは一番高い建物だな」
これはすこしこだわって書きました。わたしの力量では全く表現されていませんが、妄想だけはしっかりしています。この後彼らは船出するわけですが、船から見える景色は、全て低い建物なんです。高い建物が全くない世界のことを思うと、そして自分がそんな世界に閉じ込められることを思うと、不安で発狂しそうです……。もちろん建物の高さに限らず、あらゆる場面において旧時代的であるはずなのですが、なによりも「建物が低いこと」が怖さを感じさせます。最も視覚的に生活レベルを実感しやすいものだからですね。