棒が怖い
ずいぶん昔に見たテレビ番組で、最近「棒の手紙」なるものが流行っているという話をしていました。内容は、数日以内に複数人に同じ内容の手紙を送らないと、あなたの元に棒が訪れるというものです。番組では、家にたくさんの棒が押し掛けるシュールな映像が流れていました。
……この内容、聞き覚えありませんか? そうです、「不幸の手紙」です。じつは棒の手紙というのは、誰かが不幸の手紙を書き写すとき、差出人の字が汚すぎて「不幸」の文字を「棒」と勘違いしたものでした。それをみんながまた同じように写すので、いつしか「棒の手紙」になってしまったのでした。
さて、わたしは本当にこの「棒」が怖いです。まずは単純ですが、突かれたり刺されたりすると痛いこと。棒を地面などにトンと突く音には、本能的な恐怖を感じます。
また、縦長であるため、シルエットが人間のように見えること。どんな棒でも、ずらりと並んでいると威圧感があります。しかし当然ながら普通の棒には顔も手も足もなく、しゃべらないので、人間に似ていながら人間ではない奇妙な存在です。そしてたいがいの棒は人間よりも細長いので、体が縦に圧縮されてしまったような不安な気持ちになります。
それから、あまりにもなんにでも使えるということ。棒の用途は本当に幅広く、杖でも箸でも手すりでも広い意味ではみんな「棒」です。そう思うと、私たちは知らぬ間にもの言わぬ棒に支配されているのではないかと、心がざわつきます。