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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
新しい生活
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神々の大喧嘩3

「よく来たな!フレイア神よ!!これからは儂の妾として儂の側で暮らすがよいぞ!!」

「「……」」

「おおっ!なんと麗しいことか!流石は神々一の美女よ!」

「素晴らしい!アレをこれからは自由に出来るのだぞ!」

「アレはもう、我々のものなのだ!!」

「神々の宝を得たのだ!!我ら巨人の時代が来た!」

「「………」」

頬が引きつるのをなんとか止める。

今にも剣を呼び出しそうな右腕を左手でぐっと握った。

隣を見ると、顔隠しの魔法をかけた侍女の振りをしているフレイアの肩がピクピクと揺れている。

…こいつ…笑ってやがる!!

トールに負けず劣らずムキムキの男の腕に抱かれながら、俺はぐっと怒りを我慢した。

まだだ!まだお前の出番じゃねえよ、我が愛刀!!

そもそも、俺の今の格好も頂けない。

髪はフレイアの時空魔法でガンガン時を進めて伸ばし、本物のフレイアの髪の長さと同じ、腰を隠すほどにしているし、服は何故かフレイアとフリッグがノリノリで選んだ純白のシンプルなデザインのワンピースだ。丈は足首を隠すほどに長くしてくれているのでまあ、いいが、スカートである必要はないよな…そのおかげで中にいろいろ隠せてるが。

ノースリーブワンピの上には淡い碧のカーディガンを羽織り、首には声変えの首飾りをしている。流石に、声は然程似てないからな。

そして、これが割とフレイアに似てたりするから頂けない。

オーディンとロキ、トールの熱っぽい視線は気づかなかったことにしたい。

……一生記憶に残りそうだが。

いつもあんな視線を受けているのかと思うとフレイアが心配になってくると同時に尊敬の念が湧く。俺には耐えられない。

そして、この巨人の抱擁も俺にはそろそろ耐えられないっ!!

「離してくださいますか?」

「大丈夫、妾と言っても正妻と儂との愛はもうとっくに冷めておる。お前だけを愛すと誓おう!」

「おい?聞いてますか?離せ」

「他の有力巨人たちと共に過ごせという夜もあろうが、基本は儂だ。何も心配しなくて良い!」

「てめっ!おい!聞いてんのか!離せってんだ!」

「フレイア様?そんな言葉遣いはいけませんよ?」

かなり崩れてきた喋り方に後ろに控えていたフレイアが笑混じりに言ってきた。

こいつだけはっ!

ガチで楽しんでやがる!!

これは兄としての教育が必要だ!!!

「っ!フローラ!お前っ……」

ベリっと巨人を剥がすように投げ捨て、怒りを顔面に貼り付けてフレイアに向き直る。フレイアは今は侍女のフローラと名乗っているのだ。

「何でしょう?」

「…っ〜〜!!」

怒鳴ろうと、叱ってやろうと振り返ったのにニコニコと本当に楽しそうな笑みを見て何も言えなくなる。

くそっ!俺の妹可愛すぎだろっ!!

「なんでもねぇよ…」

「? 左様でございますか?」

不思議そうに見上げんな!抱き締めたくなるだろうが!

「では!宴だ!!」

未だに騒ぎまくりの巨人たちがそう叫び、俺たちは宴会会場へと案内された。


とにかく酒を飲ませてベロベロにして寝かせよう。

これが、俺の考えていた作戦だった。

その後はフレイアに魔法で探してもらえばいいしもし起きているやつに見つかってもフレイアの魔法で寝かせればいいし、ミョルニルが見つかったあとなら、何人殺っても構わないとお許しが出ている。

そんな、甘い考えを持っている時もありました。

「飲んでるか!フレイア!!ほら!もっと飲め飲め!!」

「あ…ありぁとーございます……けど、もういらなーー」

ヤバいんだ。もはや呂律も回らないし意識が混濁するし…俺がこんなに飲む予定じゃなかったのに!

「何を言ってるんだこのくらいで!もっと飲め!ほら!侍女の方が飲んでいるではないか!」

そんな声と同時にアスガルドにあるどの酒よりもずっと強いモノを口に入れられ、むせつつも何とか飲み下す。喉が焼けるように痛い。

というか、侍女の方が飲んでるってなんだ!と思いつつそちらに視線を向けると…

「ふふ、美味しいお酒ですね?」

にこやかに微笑みながら巨人と酒比べをして連戦連勝しているフレイアの姿があった。

あいつ、ズルしてやがるっ!!

本来は俺よりもずっと酒に弱いクセしてあんなに飲み続けられているのは口内に空間魔法を開けているからだ。全部、その中に放り込んでいる。

ちらっと視線が会うと向こうが意思伝達魔法(テレパシー)でのコンタクトがあった。

[お兄ちゃん、そんな目で見ないでくれる?勝手に酔いつぶれてくれるまでかかりそうだったから、私が勝負して強いのから潰してあげてるんだよ?]

[そうは言っても、ズルはダメだ、フレイア。ズルは神がすることじゃない]

何よそれ、と呆れたような声が聞こえて以来、何も言ってこなくなったが、一応言ったことは理解したらしく、少しだけ飲むことにしたらしい。顔を赤くし始めた。

これであいつもすぐ潰れるな…

何故か、妹に負けたくないがためにこんなことをしてしまったが、さて、俺もあいつも潰れてしまったらどうしよう?

「いやぁ!本当に綺麗だな!」

「いや…触んなぁ……」

無駄に身体を触りまくる巨人の指を何本が折りながら、俺は意識を手放した。


お兄ちゃんが潰れた。

それをいいことに巨人たちがお兄ちゃんに触りまくる。

あー、服脱がされると面倒だなぁ。

何せ、中は男なのだから、脱がされれば一発でバレる。そもそも、私のお兄ちゃんに触るなんて許せない。

そんなことを思いながら、私はアルコール度数が不明な謎なくらい強いお酒をまた空間魔法に放り込んで勝負に勝ち、丁重な言葉遣いをしつつ次の勝負を辞退してお兄ちゃんの方へ向かった。

「最初は儂だー!儂の嫁なのだぞー!!」

向かうと既に半分ほど剥かれたお兄ちゃんの上にスリュムとかいう、今回トールからミョルニルを盗んでくれた巨人が跨っていた。

うわぁ…不快だわ…

お兄ちゃんには一応胸だけは変幻魔法をかけて私と同じくらいのサイズにしてある。

それをああして揉まれると気分いいはずがない。お兄ちゃんも無意識でかなり嫌らしく、胸を触る手の指をぼきぼき折っているが、巨人は痛みを感じにくい人種だからあまり効果がないらしい。

さて、どうするか。

一応、ここまで近づいてきてはみたけれど、今は巨人たちはお兄ちゃんに夢中なのだし、今のうちにミョルニルを探してきた方が今回の目的としてはいい気がする。

しかし…この状態のお兄ちゃんをこのままここに置いていたら、絶対にただじゃ済まないだろう。

というか、神はそういうことはしないので、知識が殆どないのだが、お兄ちゃんはそれをされて大丈夫だろうか?

宝剣を呼ばれたら…それこそ大惨事だよね…

私とお兄ちゃんは意識を失っている状態でも自己防衛を本能的にしてしまう癖があるので、アスガルドでは例え私やお兄ちゃんが道端で眠っていたとしても手を出すものはいない。それをしたらアスガルドが良くて半壊することを皆理解しているからだ。

そして、お兄ちゃんの宝剣には幾つもの私が魔力を込めた魔法道具(マジックアイテム)が付いており、何もしなくても所有者を守るようにできている。さらに付け加えるならば、お兄ちゃんの動作魔法(モーションマジック)は全て私かお兄ちゃん自身のオリジナルということだ。

大惨事になる要因はバッチリ揃っている。

寧ろ、これでならない方が可笑しい。

これは、止めるのが吉だろう。

「お待ちくださいませ、スリュム様」

「あ?」

さて、いよいよ!と言った具合に目を輝かせていたスリュムに待ったの声を掛けると同時にお兄ちゃんの身体を回収する。乱された着衣を整えてやりながらにっこりと笑いかけてやった。

「フレイア様に触れる順番は、私との勝負に勝てた方から、ということに致しませんか?」

私の言葉にこの宴会場に来ていた巨人たち大体百名ほどが驚きの声を上げる。

それはそうだ。私はすでに三十五連勝無敗を成し遂げているのだから。これ以上勝負をしてまだ勝てる自信があるのかと思われ驚かれたのだろう。

「おい!フローラ…だったか?お前、酔わねえじゃないか!そんなんに勝てるわけねえだろ!」

スリュムよりも若い感じの巨人が叫ぶ。他の巨人たちもうんうんと頷いた。

どうやら、驚きはそっちだったらしい。

本当は酔わないんじゃなくて、飲んでないんだけど。

「だからこそ、ですよ?フレイア様に触れるためには、そのくらいしてもらわないと困ります」

にっこり笑った私の顔に何を見たのか、何人かは顔を青くさせたけれど、既にお兄ちゃんの身体を欲して止まない奴らは何人かいるらしい。

「やってやろうじゃねえか!!」

そう意気込んで私に勝負を挑む巨人たちが次々と現れ、そいつらに影響されたのか他の巨人たちも続々と挑んできた。

こうして、私のチートな酒比べ勝負が幕を開けた。


目を開けると、世界が90度傾いていた。

どうやら、寝かされているらしい。

枕にしているのは、人の太腿か温かくて柔らかかった。いつまでもこうしているわけにもいかないだろうと頭を上げかけるが、頭痛がひどくてできそうもない。

ヤバイ、もうしばらくこうしてよう。

そんなことを考えて、俺は膝枕状態を続けることにした。

そこで、やっと思考が回り始めたか、俺は目の前の光景に目を向け、息を飲んだ。

多数の巨人たちが地面に倒れ伏している。

口からヨダレを垂らして酒瓶を持っているところを見ると酔っ払って潰れたのだろうか。

しかし、あんなに酒に強かった奴らが、なぜ皆潰れているのだろう?

「おにーっちゃん!起きたなら、一声かけるものじゃないの?」

頭上から楽しげな声が降り注ぐ。目線を向けるとそこには…


1人涼しい顔で酒を煽るシラフ状態の妹がいた。


なるほど。

それだけの光景で俺は全てを理解する。そして、

ドンマイ、なも知らない巨人たち。

ズルして勝って皆を酔い潰した妹の代わりに巨人たちに合掌した。

フレイアちゃん最強咄でしたー!

あれです。フレイはお酒、人間から見たら弱くないけどちゃんと酔う人ですww

フレイアは酔わないようにしてるんです

フレイは酔ったら寝るだけだけど、フレイアは酔うと何するかわからないんですw

前はオーディン半殺しだったとかあのロキが泣いたとか…そんな噂があったりなかったりしますww

皆さん、お正月で沢山お酒を飲んだと思いますし、新年会でこれから飲むという方もいらっしゃるでしょうが、お酒には気をつけましょうねw


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