残念な義理父
えっと、先日投稿した兄妹と話が違うため、混乱する方もいると思います
しかし、それなりの理由があるので、今は流していただけると助かります
「ところで、さ。お前らとなんで会話できてるわけだ?」
俺は目先の疑問だけは解決しておくことにした。
しかし、3人は同時に首を傾げ、何のことだかわからない、と言った態度を取る。しかし、花菜は割とすぐに理解したらしく、俺の言葉に同意した。
「そう言えば、この4ヶ月間一度も気にしたことなかったけれど、どうして?」
「……」
気にしてこなかったのか。
聞いたことあるけど答えでなかったーとかじゃなくて。
そのマイペースさに俺は少し引いていたが、冷静にこいつの育った五年間を振り返ると、そう思った自分が情けなくなった。
こいつは起きたことを深く考えないようにするくせができているんだ。
どんなに理不尽なことにも耐えて生きてきたことが、こいつにそうさせている。
そう思うと申し訳なくなって、十年前、こいつにとっては4ヶ月前、助けられなかったことを深く詫びたくなってきた。しかし、せっかくあの頃のことを感じさせないくらい明るくなったのだからーー未だに無表情が基本なのは置いておいてーー思い出させることもないだろう。俺の勝手なエゴに付き合わせちゃダメだ。
「……あ、言葉についてにゃ?それは、簡単にゃことにゃよ。小学校でにゃらうにゃ」
「…そっちにもあったのか、小学校」
どうでもいいことを突っ込んでしまいつつも、話の続きを聞く。
「あったにゃ。そもそも、裏には言語って理念がにゃいにゃ。それは、全員が共通してルーンを使っているからにゃ」
「ルーンって、陣に書くあれ?」
花菜が口を挟む。ノアはそうにゃ、と頷いて話を続けた。
「世界想像の神様、オーディン神が片目を代償にその知識の全てを得られたのがルーン文字。そして、オーディン神は愛する人間界にルーン文字の秘密の一部公開を行ったのにゃ」
けど、存在自体が魔力のルーン文字は表に与えるわけにもいかず、裏にだけ与えたそうだ。
「その後、天界でも一部公開を行ったオーディン神はすごいすごいと崇められて嬉しくにゃって、妖精界と巨人の国にも少しだけ、教えたにゃ。要するに、表の世界以外全てに教えたってことにゃん」
なんだ、その神。超マヌケ……
「ルーンは言語の代わりににゃって、人々の意思疎通を手伝ったにゃ。だから、ここ以外全ての共通語はルーンと言えるにゃ」
「けど、その話じゃ、ここだけは会話が通じねぇんじゃないのか?」
そう問うと、うん、とノアは頷いて説明を再開した。
「ルーンは意思疎通に長けているにゃ。この魔法は特別で、人々が望む形に成長したようだにゃ。それで、表の言語を解するようににゃったのにゃ」
「なるほど!それで、表の言葉とルーンを交互に訳してくれてるんだね?」
「そうにゃ。けど、アクアちゃんは裏の言語を使っているにゃ。そもそも、表の言語の知識が薄いっぽいにゃ…というか、最初からルーンで話していたと思うにゃ」
「あー、まあ、一応神だからね…」
花菜は照れたように頬をかいた。
正直、話は半分もわからない。だが、まあ、それがこいつらだと割り切ろう。
「オーディンがそんなにドジ…というかバカだとは思わなかったけどね…」
どうやら、その神とは知り合いらしい花菜は呆れたように呟いたが、まあ、それもスルーして。
とりあえず、こいつらについて深く考えるのは禁止だ。
「あ、忘れていたが、父さんにも担当が着いているのか?」
うん、とノアはコクンと頷き、その隣に座る花菜を見た。
「いるよにゃ?」
「うん。いるよ」
何の会話かわからなくて首を傾げた俺にアイルが苦笑しつつ説明してくれた。
「隆太様、宗太郎様の元には現在、我々と同業のルシウス・ガルシア様がいらっしゃると思います。彼はどうやら、この家にて魔法を行使しているようで…よろしければ、そちらに向かいたいのですが」
「……はい?」
現在、この家で、魔法を使用中?!!
何言ってんだこの人!?
そうは思うものの、俺に向かって安心させるような優しい笑みを向け続けてくれているアイルは嘘をついている様子ではなく…
「いいかにゃ?個人的には急いだ方がいいっぽいと思うけど」
「無理に急ぐことはないよ?私たちも気づいててスルーしてたし。ただ、この魔法が中規模空間魔法ってだけだからね」
「つまり、戦闘中ということですよ」
先の2人の発言をアイルが俺にもわかるように細くしてくれる。
戦闘中…ああ、戦闘中ね………戦闘中?!
「い、急ごう!」
俺は慌てて廊下に飛び出した。
花菜たちの案内のもと、魔法を使用している部屋の前まで来た。その部屋は、大きな空の、吹き抜けになっている部屋だったはずだ。父さんが体を動かす時に使う用の。
「アクアちゃん、読める?火属性でやられるとわかんにゃいにゃ」
「んー…」
花菜はしばらくその部屋のドアを撫でた後、ノアに何かを言った。ノアは一つ頷いてドアに触れ、何かを呟く。
パンッ!!
そんな音が鳴り響くと同時にノアと花菜は満足げに頷いた。
「さーて、何やってるのかにゃ、ルシウスはー」
「ルシウスー!何やってんですかー?」
意気揚々と花菜とノアが部屋に入っていく。仕方がないので俺とアイルも中に入り……
「…何やってんの、父さん……」
部屋の中の光景を見て俺はしゃがみ込み頭を抱えた。
「お?今日は帰りが早かったんだな、隆太。おかえり」
「む?あ…ね、猫姫、それに、アクアさん……違うんだ、これはあの…宗太郎に誘われて…」
入ってきた俺たちを見るなり、父さんはこちらに笑いかけてきて、父さんと向かい合って立つ、赤髪赤目の男は怯えた色を見せた。
二人は剣を持った構えのまま、父さんは呑気に、男はおどおどと言う。
どうやら、ここで剣の勝負をしていたらしい。
……父さん、確かに趣味は剣道だけど…しかも、他の武術もやってるけど…何も、剣と魔法の世界から来た人とやらなくても…
俺が誰にでも勝負をしかけてしまう悪いくせを持つ父親に呆れて頭を抱えていると、俺よりも先に入っていた二人は明るく言い返す。
「うん?何も言ってにゃいよ?まだ」
「ルシウス、もう名前で呼び合う仲ですか。いい事だと思うよ」
しかし、声に反して目が笑ってない。
ノアは辛うじて笑顔だけど花菜は笑顔すら向けてない…
「ルシウス様、対象に危害を加えるのは禁止という条約をお忘れですか?」
「わ、忘れてない!だから、これは遊びで!!危害を加えようなんて、微塵も思ってなくて!!!」
アイルでさえ、冷たい感じで見ている。そう言えば、魔法があるってことは勝手にいろいろ聞き出すことも可能になるのか。いや、本当にそれができるのかは知らないけどさ。それでも、できるのならば、そんなルールも必要になるのかもしれない。もしも協力的でなかったら、魔法で聞き出すか従わせればいいんだから。
けど、彼はどうやら父さんにそんなことをしていたわけではないようだし(父さんが協力を拒否する可能性は低いし、いつもと様子が一緒だから)、父さんなら剣の勝負を挑んだだろうし。
助け舟を出すべきだろう。
「3人とも、誰だか知らないが、彼を責めないでくれ。これを頼んだのは父さんだと思うんだ!」
俺が3人の前に立ち言うと赤髪の男がぱあっと顔を明るくした。
「おおっ!誰だか知らないが、少年!ありがとう!その通り、俺はこの部屋を壊さないように魔法をかけただけなんだ!!」
「あれ?車椅子はどうしたんだい、隆太?」
「父さん!まずはその構えを解いて空気を読んでもらえませんか!!」
必死過ぎる男とマイペースすぎる男。この場合はどちらの方が厄介だろうか。
ここで、ん?と思う。いつの間にか花菜はフードを深く被り直していた。室内だからアイルは帽子を外しているしノアも日傘を手で持っているのに、なぜ、今更?
「宗太郎様の御意志でしたか…アクア様、ここの魔法はルシウス様がおっしゃるようなものでしたか?」
「うん、そうだったよ」
「そうですか。では、条約違反とはかなりギリギリではありますが、なりません。以下がなさいますか?ノア様」
「しょうがにゃい。貸し1、だにゃ、ルシウス」
アイルがさっと状況を確認して話をまとめ上げる。どうやら、許す方向で話がまとまったようだ。
「あ、わ、わかった……俺は何もしていないんだが……」
男は何処か悔しげに呟いていた。
うん、ドンマイ。名も知らぬ男よ。
「では、自己紹介をしようか。俺はガルシア王国国王ルシウス・ガルシアだ。アクアさんには借りがあり、そこの抜けまくりのようで抜け目のない猫姫にも、さっき借りができたから、俺が1番立場が低くなるな」
そう、自虐的に言うのは先ほどの必死過ぎる男だ。こいつがノアと同業だというルシウスだったか。
だが…
「猫姫?」
猫の王だから、猫姫か?
そう問うとノアは何処か嫌そうに目を逸らし、ルシウスはにやりと笑った。
「そこの猫人は異常なまでの闇属性の適応度でな。闇属性で彼女の右に出る者はいないんだ。そんな彼女にいつしかついた通り名だよ」
「やめて、ルシウス。殺すにゃよ」
ノアは不愉快そうに眉根を寄せる。しかし、ルシウスは止まらない。にやにやと笑ったまま話を続ける。
「なぜだ?とても光栄なことだろう、通り名はそうそう着くものじゃない。少年、彼女の通り名はな、夜歩猫姫だ」
「……」
うーん、それは確かに嫌かもな。かなり中二くさい。
案の定、ノアはとても嫌そうだった。
「あっちの世界ではいいにゃ。けど…こっちは、そんにゃのは…恥ずかしい…」
と言ってとうとう顔を隠してしまった。
どうやら、多少なりともこっちの知識を得ているらしい。それが、悪かったのか、不運にも自身の通り名を恥ずかしく感じるようになったんだな…ドンマイ!
「ルシウス殺すルシウス殺すルシウス殺すルシウス殺すルシウス殺すルシウス殺すルシウス殺すルシウス殺す…」
俺の向かい側に座る少々過保護が過ぎる様子の執事が何かを呟いているような気がしなくもないが、なに、それは気の所為さ!!
「お前らは自己紹介しないのか」
「ノア様の執事のアイルです」
「…猫姫のノアです…」
ルシウスがそう言うとアイルは父さんに向けてにっこりと微笑んで言い、ノアは消え入りそうな声で言った。しかし。
「……」
花菜だけは今だアイルの隣でフードを深く被ったまま俯いている。
「アクア様?自己紹介を致しましょう?」
「…私は…いい。オマケみたいなもの…だし…」
小声でそう呟いて拒否をする。そうですか、と困ったように言ったアイルが代わりに紹介しようとしたとき、
「…君は昔、助けたかった少女と何処と無く似ているね。よかったら、顔を見せてくれないかい?」
父さんがにっこりと笑って花菜に語りかけた。
はい!
明日は番外編の予定ww
以前リク頂いていた喧嘩の方ですね
その後は白愛とフレイアの出会いも書けたらなーっと思ってます
本気の喧嘩とはまた違うと思うんですが、一応喧嘩
このタイミングつ?!
って、なるかと思いますが、まあ、それなりに理由があるのでお許しを
何日かに分けます
この続きは少し先になるかな
一週間はかけません!!




