拘束される生活
あー!
なんでこいつらはこうなるのかな……
とりあえず、BL注意です
いつも通り、苦手な方はあとがきだけをご覧ください
連れて来られた部屋は薄暗く、部屋の端が見えないほどに広かった。ロキは何の迷いもなくベッドに俺を乗せ、隣に座った。
「……はぁ…で、何の話し合いだよ?」
「んー、契約について…みたいなもんだなぁ」
ロキは上機嫌に俺の髪をいじりながら言う。そう言えばしばらく切っていなかったから、肩くらいまで伸びてしまっている。これではより一層女に見られることだろう。そう思って何度目とも知れないため息が出た。
「契約って…俺がお前に捕まってるだけじゃダメなのかよ?」
「ん?ルイードはされるがままでいいのか?」
いや、何を?
その喉まで出かかった言葉を何とか飲み込み(口に出して答えられるのが怖かった)、俺は頬を撫でてくる手を払って向かい合うように座り直した。
「よくねぇよ。取り敢えず、なんで俺をここに呼んだのか説明しろ」
言うとロキは手を払われたことに不快げな顔をするでもなく、寧ろ楽しそうにしながら話を始めた。
まあ、その真面目な態度がずっと続いてくれたわけじゃないので、攻防を繰り返しながら途切れ途切れに聞いた話をまとめると、こういうことだった。
俺を呼んだのは俺を気に入ったからで、今日から俺はここの一室をもらって生活することになる。
基本的には自由だが、ロキが呼んだ時はすぐに駆けつけることを義務付けられ、中途半端になっていた呪いの方も完全にかけられて、その使用を変化させた。が、この呪いについてはこのあと話すとして、今はここでの生活についてだ。
この館を出ると自動的に心臓が止まるようになっているので俺の外出は確実に無理だと言うのはまあいいが、ロキも外出しないというのは意外だった。なんでも、取り敢えず俺を手に入れて満足したし、俺との約束でアクアに手も出せないから出かけることに利点はないんだとか。(神々に索敵され、見つかり殺されると言う不利点はバッチリあるらしいが)
俺の生活の世話はチェリーがしてくれ、ついでに(というか、こっちがメイン?)ロキとの連絡もチェリーが伝えてくれるらしい。俺の自室にはベッドがないので、就寝は基本ロキの部屋だそうだ。(ソファはあったのでそこで寝ようと思う)
また、大浴場は一つだけだから、風呂は基本的に自室のシャワーを使うこと(これは俺が無理矢理認めさせた)もルールとなった。
また、呼ばれた際はすぐにロキの元へと向かわねばならないが、到着後は最大限の抵抗をしていいそうだ。キラサギの使用も認められている。(ロキは魔法も使うらしいが…)
そして、最後に、ロキが俺に飽きたら即座に人形に作り変えてチェリーをはじめとした者たちのように不老となって使えさせられるそうだ。
こればっかりは、俺にはどうしようもない。飽きられたら飽きられた時だと諦めておこう。
さて、生活についてはこんなものだった。
そして、変更された呪いについてだが…
その一つはもう言ってある。外出すれば即死亡と言ったものだ。その他にもアクアたちに連絡を取れば死亡や抵抗を諦めれば死亡など様々な行動に制約がついてしまった。
命令無視の場合のペナルティも変化を見せた。
前は激痛というものだったが、現在はロキの希望によって帰られるのだそうだ。
身体が感じることのできる感覚であればなんでも即座に与えることができ(命令無視の場合のみ)、当然だが命を奪うこともできる。
当然だが、以前から働いていた情報流用はさらに細かくなり、今は何を感じ何を考え何を望むのかも全てロキに筒抜けなのだとか。もはや隠し事はできない。ロキの悪口を頭の中で思考することすらできなくなったわけだ。また、身体機能及び異常も全てロキには手に取るようにわかるそうだ。
あと、追加としてロキは支配権を得たので、俺の身体を自由に操作することができるようになった。これは遠距離でも可能なため、もう2度とアクアたちに会うことがないよう、心の底から望む。何と言っても、これは世界を跨いでの使用も可らしい。そんな状態で人間界の裏とかに行って会ってしまえば、俺がアクアを攻撃するかも知らないのだ。絶対にしたくない。
しかも、最悪なことにロキは俺の精神も操れる。アクアに攻撃しておいて、何の感情もわかない可能性があるというわけだ。考えただけで恐ろしい。
以上が、俺がここに来て変化したことの全てだった。俺はあまり考えずに来てしまったわけだが、こうも完璧にロキの所有物にされてしまうとは…その場のノリって怖いな。
「どうだ!理解できたか!!」
「ああ、まあ、大体はな。つまり、俺はお前に抵抗しつつ、従えばいいんだろ?」
その通りだ。理解が早くて助かるなどと褒められながら俺は静かにベッドから降り、距離を取る。
「じゃあ、チェリーでも呼んで俺は自室に行ってみるよ。これで失礼する、ロキ神」
「はぁ…ルイード、ご主人様かロキと呼べと言っているだろう。そんなに呼びたくないか?……じゃあ、命令だ!ご主人様と呼べ!」
「…なんだそれ、変態じゃねえか!」
なんだよご主人様って!俺は所有物だが、お前のメイドじゃない!!
ジリジリとドアに向かう俺をニヤニヤと見つめるロキ。と、次の瞬間カッと身体が熱くなった。
「なっ!?あ、熱っ!!?」
「熱いか、解放されたいか?んん?」
どうやら俺がご主人様と呼べと言う命令を無視したことになったらしい。それでロキが俺にペナルティを与えたのだ。
身体が燃えているのではと思うくらいに熱くて辛い。喘ぐように必死に息をして、床に身体を押し付け冷まそうとするも、効果が見えない。まあ、実際に燃えているわけではないんだから、当然のことではあるか。
気づけば傍まできて俺のことを見下ろしていたロキが嬉しそうに笑いながら俺の顔を愛おしげに撫でる。
「苦しむ顔も愛おしいな、ルイード。もうしばらく苦しむか?」
悔しくてしばらく我慢してその手から逃れるように床を転げ回る。ロキは声を上げて笑っていた。趣味の悪いことだ。
「ほら、苦しいのなら俺に助けを求めろよ。助けれんのは俺だけだぜ?」
「…くっ…!……嫌だ!」
「…そんな反応に俺が喜んでんのにまだ気付かないかな…ほら、この手を掴んで、助けてくださいって、言ってみろ」
前半はうまく聞き取れなかったが、後半ははっきりと聞こえ、手を差し伸べてくる。俺はしばらくの逡巡のあと、もういい、と引かれかけたロキの手を縋るように掴んだ。
「…ん?言わないのか?」
「……」
「あと五時間くらい苦しんでろ」
いつまで経っても救いを求められない俺にため息をついてロキは部屋を出て行った。
ドアの向こうで未だ苦しみ悶える声が聞こえてくる。
今日でに入れたばかりの、新しい俺のおもちゃだ。
強情で強気で従順じゃないが、壊さないように調節をしつつ、躾ければいい。幸い、この館は神々にはまだ見つかっていないのだから。
流石に五時間も火炙り並みの熱さを与え続けるわけにも行かないか、と思い、少し用事を済ました後また来ることを誓って部屋から離れる。その際にドアに施錠の魔法をかけることも忘れない。
ここは俺が作った人形と俺とあいつしかいないのだから本来ならその必要はないのだが、万一、ここに神々が突入してきた時に備えてだ。
俺はその足で食堂へ向かった。そこでは昔人間界で料理人をしていた人形たちが十数名働いている。
「ロキ様。何用でしょうか?」
「スード。夕食には人間のガキが喜ぶようなものを作ってくれ」
料理長である、一番初めにさらって来た料理人スードにそう命令すると、スードは少し顔を綻ばせた。
「人間のガキとは、あの少年のことでしょうか?」
俺は視線をそらしながらそうだ、と答える。と、スードははっきりとわかる形でわらった。
「了解しました!」
食堂からの帰り道、俺はため息をついていた。
ここの奴らは俺には逆らえない。ルイードほど複雑なものはかけていないが、全員に服従の呪いをかけているのだから。しかし、長い年月を寿命を止められて共に過ごしているとあいつのように俺と友好的に付き合ってくるやつも出てくる。…いや、もはや俺の配下にはああ言うやつらしかいない。あいつらは、俺が新入りを連れてくるととても嬉しそうにするのだ。
「しかし…躾、か」
正直、あの容姿ならばもう少し幼いと思っていたが、予想以上にあいつは大人らしい。それならば……
「ブロッサム」
「はいはーい?」
そう軽い感じで俺のすぐ隣に現れたのはチェリーと同じ桜色の髪と目を持った美少女。俺の世話を担当しているメイドだ。
「何ですか?」
「オリジナルの魔法はどうなっている?」
ああ、とブロッサムは少し暗い表情を見せた。
俺は配下の人形たちと共同のオリジナル魔法を作っている。と言っても、絶対に世界樹が認めてくれるはずのない内容なので、既存の魔法を組み合わせた新術式の考案だ。そのため、かなり難しく、もう何千年もかかってしまっていた。
…あの時、フレイアを勧誘しておけばよかったな
そうすれば、絶対にもう何年か短縮できたはずなのだ。しかし、今それを言っても仕方がない。
「…うん、その表情をみる限りまだーー」
言いかけたところで、ブロッサムの口角が上がっているのに気がつく。
「いいえ、ご主人様…」
そうして、立ち止まってしまった俺と目を合わせ、ニヤリと顔を歪ませる。
「なんと、試作段階ではありますが、完成いたしました」
「っ!本当か!!」
驚き肩を掴んだ俺にはっきりと頷きかけて、
「実験体は以下がいたしましょう?」
と小声で問う。
新しいやつをさらってくるか、今いる奴らを使うか。
「新しいのをさらって来い。そんで、実験成功したら、また報告に来るんだ。わかったな?」
そう命令すると、ブロッサムはとても嬉しそうに笑って
「畏まりました」
美しくお辞儀をして、現れた時同様に何処かへと去って行った。
「これが完成したらどうするか…」
もう、昔のこと過ぎてなぜこれを作ろうと思ったのかさえ曖昧だが、今でも十分に有用性はある。
「…あんまり強情だと、ルイードにかけてやるのも面白いか…」
この館の時間の流れや重力などは好きに弄れるのだ。なぜならば、ここは俺の空間魔法の中なのだから。この館から俺と俺が許したもの以外が出れば、すぐに空間の魔力に変換されてしまう呪い付きの。
まあ、要するに、やりたい放題。
そう考えて無意識にニヤニヤしながら他の所用も済ませ、自室へ戻りドアを開けると、虫の息のルイードが未だに苦しんでいた。
…あー、忘れてた
俺が出て行ってそう何時間も経っていないはずだが、体力の限界は近そうだ。
「おい、助けを求める気になったか?」
そう言いながら手を差し伸べるとルイードは恨みがましいような目で睨んできた。
「……」
ただし、涙目だ。
むちゃくちゃかわいい。
深緑色の宝石をはめ込んだような大きな目が涙目で潤んでこっちを睨んでいる。しかし、次の瞬間、フッとその目が緩み、
「……た…すけて…ください」
熱さに顔を歪め、身体中から汗を流し、顔に汗で髪を貼り付けながら、絶え絶えの息をして、震える手で俺の手を掴み、消え入りそうな声で呟く。
かっわいいわぁ…本当、なんなんだこの生物…
そう考えつつ前にしゃがみ込み、頭を撫でてから解除してやる。ルイードは本当に体力が尽きたらしく、解除と同時に俺の方に倒れこんできた。
「…はぁ…はぁ…」
俺の胸に頭を預けて、身体を弛緩させて荒い息のみを繰り返すルイード。
ヤバイわ…こいつはヤバイわ……
フレイアよりもずっと好きになってしまいそうでかなり危ない。いや、手遅れか?もう神々に喧嘩売る意味なくないか?
「辛かったか?ごめんな?今度からは命令無視んなよ?」
「……うん」
優しく頭を撫でてやりながらそう言うとルイードは小さく頷いた。返事をする体力は残っていたらしい。
しかし…うんって!
お前、本当はガチで女だろっ!!
その容姿で男はねぇよ!!
心の中でそう叫んでいると、ルイードが不満げな声を漏らした。
「お前…鬼畜過ぎ……絶対、神より鬼のが似合ってる…」
「そりゃあ、結構な褒め言葉だな?今度は凍えたいらしい」
俺がにやりと笑いながらそう言うとブンブンと首を振り必死にやめるよう訴え出した。俺や仕方が無いななどと言ってやらない意思を伝えるが…
命令無視もされてねえのにできるか、バーカ
といった心境だった。しかし、こいつの心は今、もう二度とあんな目にあいたくないという意思でいっぱいだし、そんなことにも気づかないこいつはやっぱ可愛いしでなんでもいいや。
「チェリー呼んでやるから風呂行ってこい」
「……」
俺の言葉に俺の腕の中のルイードが小さく頷く。それを見てから、俺が風呂に入れたかったなーなどと考えつつもチェリーに引き渡した。
はじめからがっつくべきではないだろうと思うからだ。その内、他の奴らのようにお前も俺に友好的になれよ、と心の中で願う今日この頃だ。
ここで大事なのは…ルイードの命がロキに掴まれたーってことくらいですね
あと、ロキが意外に配下と仲がいいことと、その配下たちと魔法を開発中ってことを抑えておいてくだされば、まあ、大丈夫です
いや、本当。なんでこうなるんでしょうね!
もう、ルイード女にしようかな!!
さて、そんな冗談(笑)は置いてといて、
明日からはしばらくルイードくんはお休みです。
アクアの方、進めないとですからねー
表と裏は、裏の一日で表の三十日だと思っていただければわかってもらえるかと
つまり、アクアは裏に来てから四ヶ月経っているので、
30×4=120日がアクアが裏で過ごした日数で、これを表に換算すると、
120×30=3600日となるわけで、
大体10年が過ぎているという計算に!
だから、隆太くんは10歳、年をとっていますよー!
よくわからないって方がいらっしゃったら参考までにww
しかし…そうなると、アクアは3日表に行く予定なので…
ああ、面倒だな!
と作者は頭を悩ませておりますww




