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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
央都編
83/157

夢か現か

すみません、更新を優先したため、添削をしていません。

変換ミスなど多量にあると思いますし、文章が変なところも多数あると思います。

また、最近のはそれが本当に多いと指摘を受けました。

重ねて謝罪致します。

本当に申し訳ありません。

「ねぇ、なんで怒ってるのー?」

「……怒ってないわよ」

「…そんな、黒いオーラ垂れ流しで言われても、説得力ないよ……」

部屋に戻るとなぜかお母さんの機嫌が悪かった。

なんだろう、私が何かしましたか?

お母さんをちらちらと観察しつつ、布団に入る。なんだか、かくれんぼが終わって戻ってきてからお風呂の時も夕食の時もずっと機嫌が悪い。仮にも意思伝達魔法(テレパシー)を持ってる人間に怒ってないって嘘着くのもどうかと思うけれど、私はそんなことにも気づかないお母さんに驚いていた。

私よりもずっと魔術に長けたお母さんが気づかない。それは、それだけお母さんが正常じゃないということだ。

「…なんだろう…」

まあ、とにかく今は話してくれる気は無いみたいだし、寝てしまおう。なんだか、さっきからとても眠い。

「…おやすみなさい」

「おやすみっ!」

…やっぱり怒ってんじゃん。

そう思いながら私は夢の世界へと旅立った。


…寝てるし。

私が怒っていることは、まあ、誰にでもわかるだろうけど、これだけ怒ってる人が隣にいるのに余裕で寝れるところがすごい。

感情の起伏に合わせて魔力が変化することを知らないのだろうか。怒ってると無差別に魔法が発動したりするのだが。

もちろん、私はそんなことないようにロックをかけているけれど。

それにしても、困った。

巨人に仲のいい人物がいれば、この子は巨人に情が沸いているかもしれない。

そうなれば、私がしたいことに支障が出る。私一人じゃ無理だから最悪の場合でも、この子だけは連れて行かないといけないのに。

明日からこの子は表に行くから、その間にその巨人を探し出して話をするしかないか…。

一応、アスガルドには連絡をとってて、明日のお兄ちゃんの代わりにはバルドルが、その次の日からはお爺様が着いてくれることになっている。

だから、まあ、探す時間はあるかな。

本当に、都合悪いなぁ。巨人の友人なんて。せっかくあの子の友達のルイードくんにあんな目にあってもらったのに。

あのとき、遠距離魔法をかければ、まあ、ロキの魔法がかかる前に止めることはできた…かもしれなかったのだけれど、私は故意にそれをしなかった。

まあ、どうなるかは賭けだったし、最初からそれを狙っていたわけではないのだけれど、都合良く、苦しむようにかかってくれた。

彼を説得して央都に来させたのは、一緒にこの街にいることが重要なんじゃない。大事なのはその道中。

第一、接触禁止なのにどうやって慰めてくれるつもりだったのか。アクアのせいで苦しんでいる姿をアクアに見せてくれれば、それでよかったのだ。

巨人への敵意と怨みが増すから。

まあ、白愛と麗麟が死んでしまっているのだから、もう十分だったかもしれないけれど。ただ、2人が死んでしまったのは誤算だった。

あれは、正直私にとっても辛かったから。

私にはこの一千年の間に作った計画がある。それに合わせて、2人の死という、それを実行する理由もできた。

絶対に誰にも邪魔はさせない。私は必ず、これを実行しなくてはならないんだ。

ーー思い詰めすぎだろ。

そのとき、頭の中に低い声が響いてきた。

思わず少し口角を上げる。私が死んで、唯一よかったと思える、大切な友の声だ。

ーーそう?これくらいでちょうどいいでしょ?

ーーいや、精神崩壊でここに逆戻りはするなよ。私としては、大歓迎だかな。

ーー戻らないわよ。この間やっと表の陣を消せたから、完全復活を遂げたのに。

ーー蘇生魔法は完成したのか。

ーーなんとかね。けど、やっぱりこれには代償が必要だよ。一千年も魔力貯めるのにかけちゃった。

ーー代償、ね…まあ、なんでも良いわ。それよりもその防御魔法を切れ。

ーーん?常時発動のしかやってないはずだけど?

ーーそれを切れと言っている。

ーー?構わないけれど、どうして?

そう問うと、ヘラは迷うように口を閉じた。黙って返事を待つ。

まあ、防御魔法なんて、本当に簡単なもの、神なら誰でも常時発動させてるものしか使ってないから、切っても問題はないんだけれど。これでちゃんと防げるのって精神攻撃魔法くらいでしょ。

ーーそれだ、それ。精神攻撃魔法をかけたい。切れ。

ーーいやいや、待った。攻撃魔法かけられるってわかってて切るバカがどこにいるのよ?

流石に私もそれはしないわ。

ーーお前にかけるんじゃない。なんだ、その、ガキだ。

ーー?アクアにかけるの?それはそれで謎なんだけれど、誰がかけるかによるかな。

今アクアを持って行かれたら、それこそ本末転倒だからね。

ーー麗麟だ。お前の聖獣。納得したなら、そいつのを切れ。

麗麟か。それなら、大丈夫だろう。だいたい、何するかわかるし。

ーーわかった。それにしても、相変わらず、人の回線に入るの上手いね。

勝手に人の頭の中の回線に入ってきてんじゃないわよ、という嫌味を込めてみる。

ーーお前にも教えてやったろう。これのコツを。嫌だったら妨害魔法でも作れ。

じゃあな、と言ってヘラの気配が脳内からなくなった。

「まったく…無愛想な人だなあ」

苦笑しながら呟いて、私はアクアの防御魔法を切った。



「えっと、ナニコレ?」

自分の声が異常によく響く、寒いわけでも暑いわけでもない気温の中で、私の身体だけが、黒い空間に浮いていた。

私は基本的に夢は見ない。ぐっすりと眠り、嫌なことを忘れるようにしているからだ。それが、幼い頃からの自己防衛方法になっていた。

眠っている間は、何も感じず何も考えずにいたい。確かに、この世界は何も感じないけど、これって頭は絶対起きてるよね。

ーー何、これ。どうやってコントロールするの?

ーー知らないよ。あなたの魔法でしょ?

ーーん、わかんないよ…

しばらくその世界で退屈しているとそんな懐かしい声が聞こえてきた。

夢ってなんでもありだなぁ。と苦笑しながら、私からも話しかけてみる。

「術式提示してくれる?」

ーーえっ!?あ、はい!

すぐに出てきた術式をしばらく眺める。

うーん、これは確かにコントロールは難しいかも。

どうやら、時空魔法の一種のようだけれど、同時に意思伝達魔法も使用してる感じかな。超長距離でも使用可能なように書き換えられた感じになってるけど、そのせいで元々あったと思われる世界想像魔法が切れてる。

時空魔法の方もあまり正常な働きとは言えないなぁ。ここでの経過時間を現実よりも早くするようだよね、これ。このままじゃ、現実と同んなじだ。

そう考えて術式を足したり削ったりして、返却した。

ーーわ、すごい。あ、こ、こうですね!

そんな声が聞こえると同時に、辺りが光に包まれる。その眩しさに思わず目を閉じた。

…って、黒一辺倒が白一辺倒に変わっただけじゃない。

目を開けて、私は苦笑した。世界想像魔法を使用したことがないのだろうか。私も空間魔法すら上手く取り扱えないから世界想像なんてしたことないが。

「えっと…主上?」

不意に背後から声をかけられた。

振り返って、私は何度目になるかわからない苦笑をする。

「…本当、夢ってなんでもありね」

そこにいたのは白愛と麗麟。私の初めての友だった。


麗麟と白愛に話を聞いて、私も2人が死んだ後の話をして、ようやく事態を理解する。

「つまり、麗麟の魔法なら、別世界にいる人にもコンタクトを取れるってことだね?」

「はい。まさか、こんな形で初使用するとは思いませんでした……お会いしたかったです」

言って、ぎゅうっと抱きついてくる。それが愛おしくて、私も抱き返した。

夢だけど、ここにいる2人は、2人の意思は現実のものだ。

2人の身体には痛々しい傷がついたままになっていた。本当に痛そうで、現実に痛いそうで、2人は困ったように苦笑していた。

「冥界は悪くないですよ。だけど、来ないよう、努力してください」

「えー、行ったら2人とずっと一緒なのに」

「ダメだよ、主上っ!私たち、そんな形で主上に使えたくない!」

「む、そう言われてもなぁ」

それに、早いとこ死んだ方がまだ幸運かもしれないんだよね。ロキに捕まるよりは。

「冥界に、ロキ神は時々訪れて来ますよ。けれど、いつもヘラ様が追い返してくださります」

「誰かを探す感じでいつもふらふらしてるよね。ヘラ様にあいつに姿を見られるなと言われているから、話しかけられないけど」

まあ、話す気は無いけどねと白愛は楽しそうに話す。

それから遊園地を作ってるとか、グリムって指導員が超怖いとかそんな話を聞いていた。

「あ、主上。そろそろ起床のお時間ではありませんか?」

「え?もうそんなになる?早いなぁ」

「……主上、離れたくないよ」

急に白愛が甘えてきた。目にいっぱい涙を溜めて。

その顔はズルいんだよね、お願い、なんでも聞いてしまう…

「…実はね、白愛。あなたの運動能力が私に返上されてきたんだけど、まだ使いこなせないんだよ。だから、指導してくれる?」

「え?」

「麗麟も、治療魔術のオリジナル術式が思いつかないんだよ。協力してくれないかな?」

「え?…か、構いませんが…どうやって?」

この世界では魔法は使用できない。身体も驚くほどの空気抵抗を受けているように思う通りには動かせない。

「うん。現実で教えてもらおうかな」

私はまた術式提示させる。そして、今回は少し陣の配置を帰るだけで返却する。

「これで、常に私にかけた状態になるよ。いつでも、会話ができるね」

「……ええっ!?ど、どんな書き換え方をしたんですか!?」

「すごーい。流石、主上ー!」

驚く麗麟と無邪気に褒めてくれる白愛の頭をなでて、私は現実に戻った。

「じゃあね、2人とも」

「「はいっ!お気をつけてっ!」」


パチっと目を覚ます。目の前に黒猫がいた。

『起きたか。行くぞ』

「うん、起こしにきてくれたの?ありがと、ノト」

『…まあな』

ノトは機嫌がいいらしい。尻尾をゆっくりと左右に振っていた。

昨夜は満月だったからなぁ。

いつもよりも気持ち大きくなったノトが部屋を出て行くのを見ながら私はいつもの制服っぽい服を着る。お母さんは私の隣のベッドでぐっすりのようだ。

結局、一睡もしてないも同然だったのではないだろうか。

少し眠いし疲れたけれど、昨日までよりもずっと晴れやかな気持ちだった。

『…まだか?』

「ご、ごめん。急ぐ……ん、行こっか」

ドアから不満気に顔を出しているノトに軽く謝りつつ、私はドアを押し開けた。

ーーじゃあ、今日も元気に行きましょ!主上!

ーー十分にお気をつけて行きましょうね、主上!

そんな、いつもクエストに行っていたときと同じ2人の声が聞こえた気がして、口角を上げてしまいながら、私は待ち合わせの中庭へと歩み出した。

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