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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
央都編
70/157

二千年前のこと

ちょっと雰囲気変わります

今回だけ!

一千年前になるのかな。

私は死にました。

あっけなく、死にました。

誰に看取られるでもなく、死にました。

悲しい、と想いますか?

可哀想だと同情してくれますか?

いえいえ、そんなものは必要ありませんよ。

だって、私は不死の女神。

死にたくても死ねない存在なのです。

では、なぜ死んだって?

簡単なことですよ。

私には強奪ってオリジナルがありますが、これは姉妹品なのです。

押し付け。これが、私の強奪魔法の姉妹品。

私は、一千年前に私に不死の女神の力を押し付けました。

まあ、私が力を失わないように生まれ変わりのメカニズムを解析したのですが、ね。

これは、私が作った最悪の魔法の話です。

その名は、皆さん聞いたことあるんじゃないかな?

結構、メジャーなものなのです。

だけど、どんなに魔法ありの物語でも最近はそれだけは使えないものが多いらしいね。

うーん、そう言えば、この世界でも扱えるのは私だけだね。

さて、その名前は、


蘇生魔法。


どう?聞いたことあったでしょう?

今までに、私から見ればとても短いあなたの人生の中でも何度か人の死に直面したこと、あるでしょう?

身近な人をなくしたことはあるかな?

まあ、そんな経験をした人なら、誰でもこの魔法があればいいのにって、思ったことあるはず。

てか、思ってて?

きっと、願うはずなんだって。

私は、この蘇生魔法を使って死にました。

私は、私の不死はとても正常に働いて、

もう何度も聞いてると思うけど、巨人にフルボッコされ続ける生活が終わらなかったのね?

想像、できるかな?

100年やそこらを寿命だというあなたたちには無理かもしれないけれど。

一千年間、休みなく繰り返される暴力。

吐き続けられる暴言。

そして、傷つかぬ、死なぬ身体。

けれどね?精神は不死じゃないんだ。

私だって傷ついてた。

まあ、それで、間がさしたというか、何というかで、私は人間界の表に意識を飛ばしました。

あ、当時の私は幽体離脱的な、魔力を外で具現化させたモノに自分を宿らせるとか、片手間にできるくらいの実力はあったのね?

そこだけ了承してて?

ああ、あれが私の全盛期だったなぁ。

そこの泉に蘇生魔法の魔法陣を描いた。

そして、私は自分の体を、木っ端微塵に弾け飛ばした。

もう、原型も残らないくらいに。

その理由は、冥界で致命傷を残しておくのが嫌だったからだ。

致命傷もわからないくらいにしておけば大丈夫だと思ったからだ。

それと同時に人間界の表の陣が発動されて、魔力をため始めたの。

これは生まれ変わりを促進する魔法だからね?

それで、生まれたのがアクアってわけ。

正直に告白すると、私はなんだってよかった。

アクアに心が生まれる予定はなかったからだ。

自分は、あの生活を抜け出せたしね?

だけど、わからないこともある。

どうして、私はーー


ーー人間界の表に陣を貼ったのだろう?


普通に暮らしたかった。

私の願いはそんなもの。

私の才能は魔法だけ。

なら、魔法がなかったのなら?

私は普通にくらせたのではないか?

そんな思考が働いたのかは知らないけれど。

まあ、私は経緯なんてどうでもいいので、

結果から判断して、前だけ向いて進んで行きましょうか。


ん?ああ、そっか。

私は二千年前の話を語らなくてはならなかったんですね。

二千年前、それを語るためには、それ以前の話が必要です。

あなたは神々の黄昏(ラグナロク)はご存知でしょうか?

遥か昔、オーディンが聞いた巫女の予言にて、死ぬことがほぼ無い神々の大半が死に至る、巨人軍との戦争がありました。

その話では人間が2人と神が5人以外、全てが死んでしまうそうです。

神々は世界を守らなくてはなりません。

私たちはそれを回避することを望みました。

もちろん、それをロキも知っています。

ある時、私はロキに告白され、

何の考えもなくフりました。

私は兄と夫で満足していたし、

ロキは好みではなかったからです。

アクアは中世的な顔立ちも好きなようですが、

私はそうではありませんでした。

まあ、お兄ちゃんは私と同じ顔なわけですが、

彼は性格が好きということで(笑)

さて、話がそれましたね。

その日、ロキはアスガルドを出ました。

行き先は巨人の国。

彼の故郷でした。

この話は、オーディンはしているでしょうか?

彼はあまり有能ではないから、していないかもしれませんね。

ロキはオーディンの息子に当たります。

いえ、ロキは私の子ではないですよ?

オーディンは私と出会う前にロキと出会い、血の契約を交わしました。

それは両者の血を半分ずつ、飲み合うこと。

キッモチワルイでしょ?

私は絶対しません。

しませんしません、絶対しません。

まあ、それで、ロキは半神になったのです。

それで、主要神に入っていたことは…まあ、彼の努力と才能なのかもしれません。

とにかく、神の世界を離れたロキは自身の故郷へ行きました。

彼は半神であると共に、半巨人でもありましたから、入って行っても問題はなかったのでしょう。

それどころか、指示を得て、巨人軍をまとめ上げました。

しかし、そこは狡猾の神ロキ。

ただ単純に攻めて来たりはしませんでした。

そうしてくれたら、どんなに良かったでしょうか?

しかし、それは私にとって良かったか、という話であって、世界にとっては、ロキのとった方法の方が良かったのです。

彼は、神々に、いえ、主要神にこう言いました。


神々の黄昏を起こして欲しくなければ、

不死の女神フレイアを、魔法を使えない状態で寄越せ。


当時の私は、アクアのように聖槍を主力武器(メインウェポン)とせず、ただの単杖(ワンド)主力武器(メインウェポン)としていました。

その杖はとても高性能で、この世界に存在するどんな杖よりも強い、その名の通り、それ一本、単体しかないものでしたが、魔法を使えない状態で、と指定されていては意味がありません。

魔法が使えない魔女にとって、世界最強の杖が頼りになるでしょうか?

答えは、否。

そして、私は槍術ができるわけでもなかったのです。

とどのつまり、私はお兄ちゃんの妹であったのに、いや、あったからこそ、身体を使っての戦闘経験が皆無なのでした。

運動神経は悪い方ではありません。

しかし、巨人たちは魔法を使えない戦闘種族。

つまり肉弾戦闘に慣れているということ。

そんなやつらといい勝負ができるほどの運動神経など、女神に期待されても困ります。

神々は、もちろん反対しました。

私も嫌でした。

お兄ちゃんは巨人の国に攻め入ろうとしていました。

夫、オーディンも怒り、握りしめた拳から血を流す程でした。

しかし、彼は最高神としての職務を、捨てることはできなかったのです。

つまり、世界を、見捨てられなかった。

神々の黄昏が起きれば、どうなるか。

神々の世界は大丈夫でしょう。

お兄ちゃんも、トールも、お爺様も、私やフリッグ、オーディンもいるのですから。

全員が、神々の世界だけを守ろうとすれば、大丈夫でしょう。

しかし、その場合、世界はどうなるか。

妖精界は諦めるでしょう。

彼女たちは魔法は神以下、力は巨人の足元にも及びません。

人間界など、話にもならぬでしょう。

あっという間に全滅させられるだろうと思います。

九つある世界の大半を失ってしまうことになる。

それは、世界の崩壊を意味していました。

神として、看過できることではありません。

神々は世界を守る存在ですから。

それは、魂に刻まれた義務のようなもので、決して逆らうことは叶いませんでした。

ある日、とうとう、お兄ちゃんが巨人軍に攻め入りました。

何と、素手で。

善戦しましたが、ロキが出てきてしまい、敗北となりました。

半神半巨人のロキは巨人の力を持ち魔法を扱います。

敵に回して初めて気づきましたが、

とてもチートな存在なのでした。

お兄ちゃんが素手で向かったのは、自分のトレードマークになってしまっていた金色の剣、宝剣がなければ自分だとバレないと思ったからだそうです。

あ、思いました?

はい、私も同じ感想ですよ。

アホですよね〜。

はっきり言えば、私の七色に輝く単杖もお兄ちゃんの宝剣も、トレードマークと言えばそうですが、あくまでも、第二の、ってやつです。

例えば、正義のヒーローが出て来た時、

赤いマントに仮面をつけていたとして、

その髪が黒だったら、トレードマークはこの3点で決まりでしょう。

しかし、メインとしてのトレードマークは赤いマント。

サブが仮面と黒髪です。

私の単杖とお兄ちゃんの宝剣は仮面と黒髪と同じ。

つまり、メインではありません。

えっ?例えがわかり辛いって?

では、トンカツとキャベツだと思って下さい。

トンカツがメイン。キャベツはサブです。

まあ、私はものに例えるのが苦手なんです。

サラッと行きましょ?

とにかく、私とお兄ちゃんのメインのトレードマーク。それは、

この、顔なのでした。

そりゃあ、神々一と言われる私の顔と同んなじつくりをしているのです。

お兄ちゃんだって、顔を覚えられていて当然でしょう?

まあ、そんなわけでお兄ちゃんのアホな特攻が行われたのでした。

そして、案の定、大怪我をして逃げ帰ってきました。

あいつの絶対有利(パーフェクトメリット)はこの時に生まれたものです。

剣を持たないお兄ちゃんはあっさりとではありませんでしたが、ロキの拘束魔法にかかり、その後に巨人たちにタコ殴りされ、逃げ帰って来たというのです。

いや、よく帰ってこれたなと。

本当、運のいい人です。

その後、ロキから私たちに通達がありました。

これはあまり公になっていないのですが、

その内容では、こう言っていました。


フレイアを十日以内に寄越さなければ、麗麟を殺す。その後は白愛だ。


ゾッとしました。

いくら、信頼する仲間の麗麟と白愛でも、主要神相手では部が悪過ぎます。

その日から私の側にいさせていましたが、常に不安に駆られるようになりました。

そして、お兄ちゃんの怪我を見ていて、思ったんです。

いえ、違いますね。

思った、みたいな、頭で理解できたようなことではありません。

私は頭で処理しきれず、感覚で感じました。

私の所為で、皆が傷ついているんだと。

麗麟や白愛に手を出されてはたまりません。

私はロキのところに行くことを決めました。

そして、封魔の首輪をして、

私の鎖で繋がれた玩具生活が始まったのでした。

こんなところですか?

まあ、細かいところは思い出したくないんです。

いい感じに忘れてるんだから、忘れていさせてください。

ご満足頂けたかな。

それじゃあ、そろそろこの辺で。

次は、つまり今回は、

私、もう神じゃないからさ。

元神だからね?

前にできなかったことをするの。

そのためには、

ねぇ、アクア。

私に協力してくれるよね?

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