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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
再会と別れ
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事の顛末

「…ルイード…?」

「っ!…フレイア」

寝ぼけたような目をして俺を見つめるフレイアを俺も見つめた。その間も頭をすごい勢いで回す。何か、何かいい説明は出来ないのか?2人の死をやんわりと伝えられるような、そんな説明は?

「……あ、あのな?」

「…死んだ…んだね……私の所為だね…」

「…ぁ…う…」

何も言えなかった。

フレイアは辺りを見渡して、2人の死に気がついてしまったのだ。

そもそも、意思伝達魔法(テレパシー)があるフレイアに、人の生死を誤魔化すのは難しい。その能力は人の精神に語り掛けるからだ。死んでいては、精神はないのだから、気づかれる。

「気を、使ってくれたんだね、ありがとう」

そう言って、目を潤ませながら、俺を見た。

「全ての責任は、私にあるね…」

ちらりと上を、暴れる富白を見て、フレイアはそういった。そして、簡単な魔法陣を描き、飛んで行った。


「くそっ!落ち着けって言ってんのが聞こえねえのか!富白!」

取り狂ったように暴れる富白を何とかして抑えようとさっきから努力しているが…数多の戦場を共に駆けて来た戦友相手に宝剣なしは厳しいものがあった。しかし、アレを持ち出したら絶対に殺してしまう。それだけは避けたかった。

どうにか方法はないかと頭を悩ませていた時、したから飛翔魔法陣に乗って誰かが来るのが目に入った。

「誰だ!?危ないから来んな!」

「********」

思わず叫んだ。守ってやる自信がなかったからだ。しかし、その人物はオレの言葉を無視して詠唱を行っている。

「だから誰だって…フレイア!?」

「********、睡眠(スリープ)

オレがその人物、フレイアの側に行ったのとフレイアの魔法が完成したのとは同時だった。

そして、富白は眠らされ、落ちて行く。

「って、落ちっ!?ヤバイじゃねえか!」

オレは慌てて富白の下に回り込み、その首根っこを掴んで止めた。そうして徐々に下へと向かう。流石にオレも、富白の巨体を持って自由に空を駆けることはできない。

「おはよう、助けてもらったみたいで、どうもありがとう」

フレイアはいつもよりも感情が薄く感じた。しかし、声に抑揚が薄いのは今に始まったことではないから気の所為だと思うことにして話を進める。

「勝手に来ただけだ。気にすんな」

そう言うと、こくん、と頷いてフレイアは下へ戻って行った。

「わざわざ協力してくれたのか?こちらこそありがとう」

もしかしたら罪滅ぼしのつもりかもしれないが、オレはその後ろ姿にそう言った。


擬似空間魔法により、急遽作られた会議室で、フリッグ、イズン、フレイア、フレイ、フレイア、それに、ルイードがこの順で並んで座っていた。真ん中には通信中のオーディンがいる。

オーディンは現在玉座にて目を皿にしてロキを探しているため、こちらに来れないのだ。未だ見つかっていないが。

「取り敢えず、状況を整理しないと始まらないわ。みんな、フレイアちゃんのことはかなり気になるとは思うけれど、本人の意向により、この場では一切の追求を禁じます。いいわね?」

フリッグの言葉に皆が頷く。イズンだけは、興味なさげに大好きな魔道書をパラパラとしていた。それを見て、フリッグは一つため息をつくと話を始める。イズンの読書好きは今に始まったことではない。本当に、主要神でマトモな性格の持ち主はバルドルただ一人なのだ。

「私たちが今回のことの始まりは、フレイアちゃんがおかしなクエストを発見したと、私、フレイ、オーディンに連絡をしたことだったわ」

おかしなクエスト。

そのおかしいこととは、隠し魔法陣だった。

ふざけた内容のクエスト依頼の用紙には一見してそうとわからない精神誘導の魔法陣が書かれていた。その効果は見れば受注したくなると言うもの。フレイアは一目見たときにそれに気づき、何らかの罠であることを理解した。だから、自殺という一分一秒を争うようなクエストなのにも関わらず、急いだ様子がなかったのだ。

しかし、報告したフレイアも、された神々三人も、まさかこんな強者があんな頭の悪そうな依頼書を作っているとは思わなかったそうで、対した警戒をしていなかったらしい。

「今回は、それが1番の問題だったのかもね」

フリッグはそう言って悔しげに唇を噛んだ。

たまたま、本当に偶然、今日この日は莉八をアスガルドに戻していた。だから、事態が発覚してもすぐには動けなかった。

ただ、フレイは偶然第二層に巨人狩りに来ていたと言ったが、それは嘘だろうとルイードは思う。

絶対、心配でたまらなかったから降りて来ていたに違いない。

「私が話せるのはこれくらい。私やイズンちゃんがこんなに早くに来れたのは、フレイアちゃんからのおかしなクエストの話を聞いていたから降りて来かけていたからだけど、本当に動こうと思ったのはオーディンから報告があったときかな」

「うん、バルドルから、ウルズが伝えてきたと報告があったからな。フレイアが危険だと」

通信を介してフリッグとオーディンが会話をする。

これが今回の件に対する神々の介入の全てだった。

「じゃあ、実際にロキに会ったフレイ、説明を頼める?」

フリッグの指名によって、フレイはため息をつく。面倒そうな顔をするが目は真剣そのものだった。

「オレは真っ先にフレイアのところに行こうとした。けど、ロキはこの人間、ルイードを支配しようとしていたんだ。どちらに行くべきか悩んだときに、このフレイアが現れた」

焦るフレイの耳に入ってきたのはまさに女神の囁きだったという。「こっちは大丈夫。必ず連れて合流するから、ルイードくんを助けてあげて」とそう言ったらしい。

「だから、オレは大急ぎでこいつの元へ向かった。それで、宝剣の結界で支配を返したのだが…」

「その問題については深刻だからあとでいいわ。取り敢えず、ロキとの戦闘の話をして」

フリッグの言葉にフレイは一つ頷き、戦闘の話をした。しかし、然程強くなかった、退屈な戦闘だったくらいしか話せなかったのだが。

「これがオレの話せることの大体全部だな」

その一言を境に、部屋は静寂に包まれた。

もしも、フレイアがパーティーメンバーにもきちんとこのクエストが罠かもしれないと伝えていたら、白愛が庇って大怪我をすることもなかったし、あそこまで圧倒的にやられることもなかったかもしれない。何より、リコを抜いたあのメンバーでは、最も強い防御壁を張れるのは麗麟だけだった。先に伝えておけば、詠唱保存をしておけたかもしれないし、麗麟が負ける理由の大半を占めていた、血の匂いによる体調不良にも何らかの対処が取れていたはずなのだ。ノアやノトにしたって、あの日光の中では全力を出すことなど夢のまた夢だろう。

そのことには、この場にいる全員が気づいていた。

しかし、誰も口にはしない。

その事実が、最もフレイアを苦しめるとわかっているからだ。

「…取り敢えず、今回の件で、現在も残る問題について話し合いましょうか……ロキはどのくらい支配を完了させているの?」

フリッグが困ったような顔でフレイに問う。フレイは諦めたように首を振りながら答えた。

「オレが着いたときにはすでに9割程終わってた。オレが防げたのは最後の一割ほどだけだ」

ルイードは自分の話をされていることはわかっているのだが、何を話しているのかがわからずフリッグとフレイを交互に見ていた。すると、イズンが急に笑い出す。

「? どうしたの?イズンちゃん?」

「あはは、いやぁ、ロキ先輩が好きそうな顔と反応だから。確かに、彼なら支配されるかもですね。ふふ、絶対諦めてないだろうなぁ、完全支配」

「……」

ロキとのやり取りを思い出してルイードは寒気を感じる。気持ち悪いと感じていたが、そこには確かに恐怖も感じていた。何より、ロキがかなり真剣だったのがルイードの恐怖を助長した。

「…解呪はできそうかしら?」

「ご冗談を。フリッグ大先輩の次になる呪術の使い手がかけた支配など、私みたいなのに解呪できるわけがありません」

フリッグの問いにイズンは両手を挙げて笑いながら答えた。

この中で最も解呪に長けた人物が出来ないと言っているのだから出来ないのだろう。フリッグはかけるのは得意だが解くのは苦手なのだ。

「…9割……なら、命令は絶対ね…」

「ああ、その上、こいつを介した情報も筒抜けだ。かなりマズイ状況になってる」

「…あのさ、さっきから何言ってるかわからねえんだけど」

その言葉にフリッグとフレイは時を止める。

「は…?わからない?……お前、まさかとは思うが…呪術を何も知らずに受け入れようとしていたのか?」

「…あ、ああ。そうだけど…」

バカを見る目でそう問われ、ルイードも引き気味に返事をする。フリッグはポカンと口を開け、イズンはやはり笑っていた。

「あはは!なら、教えてあげるよ。どんな支配を受けようとしてたのか、何をさせられるところだったのか、ね」

意地の悪そうな笑顔を浮かべてそう言った後、隣に座るフリッグにいいですか?と確認する。フリッグはコクコクと頷くだけだった。

「君がかけられた呪いは、自我を持ったままの支配だね?それは知ってた?」

「ああ、まあ、それくらいは…」

寧ろ、それだから受けたのだが。とルイードは思うが黙って続きを聞く。

「あれにも何種類かあって、今回君が受けたのは、抵抗アリの支配術。感情は顔に出せるし、嫌なら自分の意志で身体を動かせるけど、主を裏切れないし、逃げることも出来ない。さらに、命令は絶対で、従わないと死んじゃったりとかするんだよ。残りの条件は術者の力量によって付属させられるけど、今回の付属は遠距離操作と精神誘導、あとは、一日一回は主と接触しないと死んじゃうとか、徐々に術者(ロキ)の意にそう性格にされて行くとか、そんなんだよ。接触しないと死んじゃうのはフレイ先輩のおかげでキャンセルされてるけどね」

イズンの笑混じりの説明を聞いてルイードは青くなる。まさかそんな呪いをかけられようとしていたとは…もしもあのままかかっていたらと思うと背筋が凍る思いがする。

「解呪は出来なくても解析は出来るのね…まあ、とにかく。今回キャンセルされてたのはそれだけ?」

フリッグの問いにイズンは微妙な返事をする。

「んー、完璧なキャンセルに成功してるのはそれだけ。だけど、それぞれの効果が緩和はされてる…かな。命令守らなくても死なないけど激痛が伴うとか、精神誘導は強固な気持ちには効かないとか、遠距離操作は距離が長いほど無理とかそんなレベルだけれど」

つまり、ほとんど全ての機能は生きたままだ、ということだった。ルイードはどんどん青ざめて行く。

「…まあ、相手を知らなかったから仕方が無いとはいえ…お前、勇気あるよなぁ……あのままかけられてたら今頃性別や種族は変わってたかも知れないぞ?」

「……」

ロキは、変身系の魔法に長けているらしい、とわかったときにはルイードはショックで倒れていた。

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