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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
再会と別れ
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狡猾な男

投稿が遅れました。

昨日は一日キャラ紹介を書いていたので…

今日の分は少し話が進みます。

ドゴォン、ドゴォンと鳴り響く破壊音を聞きながら俺はフレイアに説得を試みていた。

「だーかーらー!ここはギルドの所有物なんだって!破壊をやめろ!」

「どうして?この方が早くたどり着くんだよ?予想よりもここ、広がったしさ?」

俺の話を聞きつつも破壊活動に勤しむフレイア。いや、本当は聞いていないのかもしれないな。

「これじゃあ、もしも追いついていた時、気づけないだろ?!」

相手はゆっくり登っているかもしれない。そろそろ半分を超えているんだし、追いついている可能性も視野に入れるべきだ。そして、何より、このままじゃ、気づかぬうちに殺してしまいそうだった。

「ああ、それなら大丈夫だと思うにゃ。もう、辿り着いて待ってくれてるみたいだにゃ」

「「…は?」」

急に話に入ってきたノアさんに俺とフレイアは同時に声を出す。

「予知夢で見たの?」

「うん。今日だとは思わなかったけどにゃ」

『にゃんの夢かわからにゃかったらとりあえず放置するにょが、ノアのくせにゃよね…』

呆れたような声がノアの乗る聖獣からした。最近思ったことなのだが、この2人と話をしたい時はノアよりもノトと話す方がいいかもしれない。

「なら、こうして行った方が楽でいいかもね。*******ーー」

「ちょっと待てぃ!」

さらっと流して詠唱に入ったフレイアを俺は後ろから口を押さえてなんとか止めることに成功した。フレイアは詠唱を止められたことがよほど嫌だったらしく不服そうに俺を見てくる。

「何かしら?ルイード?」

俺以外に対して使う話し方で言われるということはかなりお怒りのようだ。

「何?じゃねえだろ?何しようとしてたんだよ?」

フレイアはちらっと天井を見て、詠唱を始めたのだ。何しようとしてたか、一瞬でわかるわ。

「わかってるのに聞くの?待ってくれてるのなら早く行った方がいいでしょ?」

「いやいや、待ってくれてるなら少しペースを落として普通に攻略してもいいだろう?」

そんな口論をしていたからか、俺はもう一人の問題児の存在を忘れていた。

闇巨塔(ダークポール)!」

ゴン!ゴン!ゴン!ーーガラガラ…

「「………」」

「上まで行ったかにゃ?」

『行ったんじゃにゃいか?』

「んにゃ解除」

ノアとノトは何の疑問もなさそうに会話をする。

今起こったことを整理しよう。

俺とフレイアが口論してるうちに、ノアさんが闇巨塔(ダークポール)なる魔法を行使して、俺たちの前の空間、ちょうどこの試練の塔と中心くらいのところに闇の塔を発生させた。それは縦にグングン伸びて行き、天井も床もどんどん突き破って行く。そして、最上階まで伸びたかな、という時にその塔を解除して消したのだ。

「さっすがノアさん!私のやりたいことをわかってるわね!!」

フレイアが爛々と目を輝かせている。もちろん、さっきフレイアがやろうとしていたこともノアとそう変わらないはずだ。

「もっちろんにゃ!じゃあ、上まで行くにゃ!」

2人は楽し気に笑い合い、聖獣たちに転変させて乗っていた。

「ルイード?早く行くよ?」

「早く乗ってよ。私は置いていかれたくないの」

フレイアの催促の台詞と白愛のイラついたような声。

「ルイードさん?どうかしました?」

すでに白愛の上に乗っている、この状況に何の疑問も持っていないリコを見て、

「はぁ、もうなんでもいいよ…」

俺は、このパーティーで動く時に常識を求めることを諦めたのだった。



予想外に時間を食ってしまい、もう塔に入ってから20分が経過ている。

正直なところ、ルイードがあんなに反対すると思わなかったから、かなり意外。これからはルイードの対応時間も考慮して行かないとなぁ、と思いつつ。

「最上階到着ね。まあ、クエストクリアはできそうかしら?」

「んー!それは可能にゃんじゃにゃいか?」

『ノア、塔内に戻らにゃいか?』

私の台詞に後から最上階に来たノアとノトが返事をする。ノアは抜かりなく日傘をさしているがそれでも不快なんだろうノトが薄暗い塔内に戻りたがっていた。

なるほど。あんな環境が快適なのかぁ。

と、感心しているとルイードたちもようやく登ってくる。

「…急に日の光に晒されると目眩がしますね」

「どうしよう。ギルドに賠償か?修理費はいくらぐらいだろう?いや、そもそも稼ぐためにクエストを取れるのか?もう除名じゃないか?」

「落ち着け。お前の人生はまだまだ長い。一生をかけて払うんだ」

「主上ー!転変の許可をー!」

背に乗るルイードとリコを振るい落とす勢いで白愛がかけて来る。私はと言うと既に転変し終え、服を着た麗麟に抱きつかれている。

「うん。転変しておいで、白愛」

白愛の大きな頭を撫でてあげてから私は許可を出した。白愛は嬉しそうに喉を鳴らした後、すぐに布を被って転変する。人の姿の方が落ち着くのだろうか。

「麗麟!私が抱きつくのー!」

鬼のような速さで転変を終えた白愛が私に突進(ほうよう)してくる。麗麟と白愛の仁義なき争いが始まったので、私はそっとその場を離れた。

ノアとノトは戻っているらしく、あたりにはウンディーネに諭されているルイードと暖かな日差しを受けて眠たくなっているリコと、もう一人知らない人物だけだった。

恐らく、あの人がクエストにあった自殺を図っている人だろう。


「やぁ、待ったよ。待ちくたびれたよ?」


声をかけようとしたタイミングで相手が口を開いた。仕方がないので私が相手に一歩近づく形で話を試みる。

「ごめんなさい。クエストを見た人が動くには、これでも十分早い方だと思うけれど?」

謝りつつ、事実も述べてみる。あのクエストは、嘘なのだろうけど。

「そうか?しかし、五分以上かかっているよ?予定よりも随分遅いご到着で」

「……」

相手はバカにするように言う。

不愉快だけれど、それよりも。

何故、私が設定した目標時間を知っているんだろう?

ここに来てようやく私は相手を観察する。

相手は男だ。黒い髪と底なしの穴のような暗い目。ルイードのような色合いで中世的な顔立ちだが、低目の声と話し方、それに雰囲気で男とはっきりわかったため、あまり似てはいない。

この真円だった塔の端、円周の辺りにも立っていて、ノアの闇巨塔は絣もしなかったらしい。

円周上に柵などはもちろんなく、少しでも足を滑らせれば五十階の高さから真っ逆さまだ。

ーーけど、それでも死なないんだろうなぁ。

なぜだか、そんな確信があった。あいつは、そんなことでは死なないだろう。

ーーここできっちり殺すべきかもしれない。

何か、相手から嫌な感じを受ける。ここへは自殺を止めに来たはずなのに、私はそんなことを考えていた。

「…まあ、それはどうでもいいよ、フレイア。俺は迎えに来たんだ」

「迎え?」

嫌な汗が頬をつたう。ダメだ。今すぐここから逃げなくてはいけない。

だけど、気持ちとは裏腹に身体は動かない。動いてくれない。

「そう。迎え。なぁ、フレイア。また一緒に楽しいことしようぜ」

「…楽しい……こと?」

この男の、この、声。何処かで聞いたことがある。

思い出すのは、ずっと暗い部屋でーー

「そうそう。楽しいこと。お前だって、喉が張りさせるくらい、叫んで楽しんでいただろ?」

「叫ぶ?私が?何を?」

ーー体格差のある男達からされる、暴力の日々。

「何をって、そりゃあ、」

男は間を開けて、私をバカにしたような目で見て言った。

「助けください、だろ?」

「っ!」

私は衝動的に魔法を放つ。今詠唱なしでできる最大の魔法、光炎玉の乱射。

この男は、私が泣き叫び、助けを乞うのをずっと嘲笑っていた男だ。

「おー、怖い怖い。けどさぁ、お前、」

手をかざしただけで私の攻撃を防ぎながら、男はニタリと嗤う。

「よっわくなったな」

瞬間、閃光が走った。

何が起きたのかはさっぱりわからないけれど、気づけば、私の前に白愛が倒れていた。

「……え?」

「…主上…お逃げ、ください……まだ、あいつには…勝てません」

弱々しげに、口から血を吐きながら白愛は言う。男は口笛を鳴らして笑っていた。

「やるなあ、家畜。ま、次でお前を殺したらフレイアはもらってくけどな」

「…させません……」

白愛はフラフラと立ち上がり、臨戦態勢を取る。しかし、魔法を使えない白愛に防御は不可能だ。

「待って!り、リコ!防御魔法をーー」

「そんなことをしている場合ではありません!」

麗麟が私に抱きついてきた。そのまま抱えられてルイードたちの方へ向かう。

「やだ、やだ!麗麟!離して!白愛を置いていけないよ!」

「置いて行きません!私が残ります!」

ルイードに私を押し付けて麗麟は微笑んだ。

「後で必ず戻ります。だから、先にホームへ帰っててください」

そう言って私の頭を撫でた後、ルイードにお願いします、と言って白愛の側へと駆けて行った。

「……フレイア、行くぞ」

ルイードは私を抱えたまま穴から飛び降りる。リコもそれに続いた。

「やだ!やだ!白愛ー!麗麟ー!」

私はもう、錯乱状態で、ルイードをめちゃくちゃに叩きながらその名を泣き叫んでいた。




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