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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
生い立ち
50/157

フレイアの生い立ち

今日、明日とグロい描写が続きます。

作者的に全然大丈夫な程度なのですが、苦手な方は避けられた方がいいかと思います。

題名の通り、フレイアの生い立ちの話になっています。オーディンに出会うまでの話です。

ここで出てくるキャラを後に書くこともありますが、その時には説明文も入れさせて頂きますので、ご了承頂きたく思います。


12/26

隆太の年齢を変更しました

4歳ほど若くしました

いつ生まれたのか、私にはわからない。

ただ、一つだけ言えることは、私を生まないで欲しかった、ということ。

愛せないなら、生まないで。

育てられないなら、殺してよ。

そう何度思ったことか、わからない。

私の心はループする。

グルグルグルグル、苦しくて、辛い思考が回ってる。

永久に抜けることの出来ない、私の道だった。


「気持ち悪い」

「……」

歩くことが出来るようになった私はすぐにいろいろと働き出した。

誕生日がわからないので正確ではないが、2歳くらいになった今日の仕事は薬草集め。

村の近くの森へ行って、薬草を集めて戻ってくる。

私の薬草で、もう何人助かったか知れないのに、私は褒められたことはなかった。

「…一応、報酬はあげるけど、気持ち悪いからうちの子には近づくんじゃないよ」

「……ありがとうございます、了承致しました」

そう答えるとまた不快そうな顔をされて、投げつけるように硬貨を渡された。地面に散らばったそれを、私は拾い集める。

580円。

「やっすいな。子供でもわかるわ」

「……」

近くを通った子供が一緒に拾い始めてくれた。

確かに安い。

薬草は一束1500円くらいの価値がある。私はそれを何十束と持ってきたのにこの安さ。そして暴言。

もうやめよう。何度思ったか知れないけれど。

家にいるよりは幾分かマシなのだ。

「なぁ、俺と一緒にこの村出ないか?」

「…?」

言っている意味がわからず、その少年の方を見て首を傾げる。

少年は、色素の濃い真っ黒な髪と、色素の薄い淡い茶色の瞳を持った、村長の息子、隆太だった。

「…お前、こんな生活じゃ、死んじまうぜ?」

わかってる。

もう、何日もろくに食事もとっていないんだから、身体に限界が来てることくらい、知ってる。けど、

「…私は、この泉からは離れられない」

私は村にある泉を指して言った。

この泉は私の命を繋いでくれる。水を飲めば、私の中で何かが満たされるのだ。それで、なんとか生きながらえている。この泉から離れられたら、私は忽ち死んでしまうだろう。

「……そっか。残念だよ、俺、お前のこと好きだったからさ」

「……」

それだけ言って彼は去って行った。

6歳の少年がたった2歳の私に何を言っているんだろう。と、思ってしまった。彼はこの村で1番頭がいい。しかし、それは子供の中ではの話。そんな、軽いノリで村を出て行くことを考えるなんて、どうかと思う。それくらい、この村が酷いということでもあるのだけれど。ここは、様々な村から切り離された、出口まで何キロもある巨大な森の中にポツンとある村なのに。


私は、少ないお金を握りしめて家へ帰った。

「金。今日はいくら?」

帰ってすぐ、父親が尋ねてきた。

「580円です」

言って、こちらに向けられている手にお金を渡す。と、私の手からお金が離れた瞬間に蹴り飛ばされた。壁に背を打ち付けて、肺の空気が全て出て行ってしまい、呼吸が荒くなる。貪るように空気を吸った。

「いつもいつも役に立たないなぁ!!」

「ガハッ」

息を整えている間にまたお腹を思いっきり蹴られ、別の壁にぶち当たる。口からビュービューとあまり呼吸とは言えない音がする。しかし、それに気を使うことなどなく、父親は私の方へ歩いてきて、髪を掴んで無理やりに立たせる。

「う…うぅ……も、やめ…」

「ゴミは黙ってやられてりゃいーんだよ!!」

頬を何発も殴られる。口から赤いものが出たけれど、顔が凹んでいる気がするけれどやめてくれる気配はない。

それから数時間、私は虐待に耐え続けた。


「う…あぅ…」

唸りながら死ぬもの狂いで家から泉へと向かう。父親は母との2人の時間を邪魔されたくないといつも夜になったら私を家の外へ出す。恐らく、凍死してくれるのを待っているのだろう。

私だって死んでしまいたい。このまま何もしなければ、いけない方向に曲げられた手足も生暖かい赤いものを出し、呻くしか能力のなくなった口もぐちゃぐちゃに破裂したような内臓も私を死に至らしめてくれるに違いない。

だけど、苦しくて、痛くて。私はそれからの解放だけを望んで泉へ来てしまう。

「ぐっ…んぐ…んん!」

滑り落ちるように泉に入り、ごくごくと水を飲む。すると、内からも外からも身体が修正されて行くのがわかる。ただし、激痛を伴って、その再生はやってくる。

「ガッ…ぐ、ぐぅ…!!」

一時間も我慢すれば、元通りになる。私は毎日ここで呻き続けていた。


そんな生活を2年繰り返した、ある日のことだった。

私は4歳頃になり、身体の成長が早い方でもなかったため、周りの子から浮くことはなかった。

8歳になった隆太は一度家出を図ったために、二度と歩けない身体にされていたが、この村にいることはいた。いつも、私が村で死体の処理などをしているときに、やって来る。

「よお、元気か?」

「……」

私は声帯が潰れたんじゃないかってくらい、無口な子に育っていた。最後に喋ったのはいつだったか覚えていない。最近では父親に虐待されている間でさえ、呻き声を漏らさなくなっていた。泉での治療は今だに呻くほど痛いのだが。

「…たまには、感情、出せよ。でないと、本当になくなっちまうぞ」

「……」

その上、無表情のようだ。しかし、そんなことを気にするつもりは毛ほどもない。

感情なんて、邪魔なだけだ。

「……じゃあな」

隆太はそれだけ言うと去って行った。

私は、物言わぬ人形になったお爺さんに火をつけた。

この時に、思うことはたった一つだけ。

もちろん、ご冥福を祈るほど私は優しくない。

思うことは、これだけ。

「私よりいい人生だったんでしょ?よかったね」

冥界は、ここよりも住み心地が良いだろうか?


家に帰ると父親がいつものように玄関先に立っていた。

「……」

「…来い」

黙って父親を見つめると私の腕を引いて歩き出した。そこは、私が一度も言ったことのない、寝室だった。

「……」

「入れ」

言われるままに入る。ベッドは荒れてて、母親が裸で横たわっていた。ただし、ピクリともしない。口からは赤いものが流れ出ていた。

「……」

それを、無感動に眺める私。父親は焦れたように私の肩を掴んだ。

「治せ」

「……」

無理だ。

正直、即答だった。

あれは、もう、死んでいるだろう。

「…できるだろう。お前はいつも自分にやっている」

焦ったように肩を揺すってくる。

「……」

しかし、私は知ったことじゃないと思い、動こうとしない。

「おいっ!」

パシンッ……

肩を思いっきり引っ張って父親の方を向かせられたので、その腕を叩き落とした。そのまま黙って父親の目を見て、軽くため息をつくと私は部屋を出て行った。父親は驚いているのかポカンとしたまま動かなかった。


あの泉は、私が生きているから働く。それに、私にしか効き目はないだろう。そのくらい、この2年で学んでいる。つまり、私は母親を見殺しにしたくてしたのではなく、私にできることは何もなかったからしたのだ。

そもそも、既に死んでいたし。

父親は母の死体の処理を私に押し付け、新しい女を作った。この女がとんでもない悪女で、後にこの村全滅のきっかけを作ることになるなど、この時は誰も思いもしなかった。

今思えば、この母の死から、この村の運命は決していたのかもしれない。

父親がその女と結婚した頃、近くの村を統治していた国がこの村も統治し始めた。

お陰で随分生活水準が上がったし、法も出来たので殺人が減った。代わりに、税を収めないといけなかったが軽かったためそこまでの苦じゃなかったようだ。

問題は、私にも税がかかるということである。

父親は払いたくないと言い、村全体で私の存在を隠すことにしたようだ。そして、その、最も簡単な方法を、今の母親が進言した。

「あの子、殺せばいいじゃない」

それは、隠すことに疲れ始めていた村人たちにとって目からウロコの考えだったようだ。その日から、村人たちの私殺害計画が発動した。

泉に突き落としてみたり、刃物で1000回ほど刺してみたり、セメントで固めてみたり。

色々されたけど、私はなぜか死ななかった。

セメントに至っては自分で破壊して出てくることができたのだ。

自分で言うのもなんだが、化け物である。

ある日、母親が私の元を訪ねてきた。

私は痛いのは勘弁だったので村から少し離れ、森の中で暮らしていたのだ。

「こんにちは、今、いい?」

「……」

無感情に、微笑む母親を少しだけ見て、興味を失い、森の中へと歩き出そうとした。

「待ちなさいよ」

しかし、ぐっと腕を握られて、また母親の方を向かされる。その顔は人の不幸が嬉しくてしょうがないのか醜く歪んでいた。

「いいもの、見せてあげる」

「……」

私は半ば引きずられるようにして森を出て行った。

着いたのは、村の集会場。

そこでは父親を始め、村の男たちが話し合いを行っていた。村長ももちろんいるし、その隣では隆太もいた。

どうやら議題は、私の殺害方法について。

「火炙りにしよう。これなら死ぬはずだ!」

「何をしてもあいつは死なないんじゃないのか?化け物なんだよ」

「やはり、育てたのが間違いか」

「あの泉で見つけた時、殺しておけばよかった」

男たちは半分が諦め、もう半分が文句を言っていると言った具合で話が進んでいない。

「もう、死ななくてもいいじゃないか。隠しておけば問題ないんだろ?」

隆太がそんなことを言うと、みんながギロリと睨みつけた。隆太はぐっと喉を鳴らして発言する意思を削がれたらしい。

「しかし、一理あるな。なら、四肢を捥いで首も絶って、埋めてしまおう。それなら、死ななくても構わんだろう?」

村長のそんな意見に皆が同意した。どうやら、今度私は四肢を捥がれるらしい。

「どう?気分は?あなたを殺すためにこんなにみんな頑張っているのよ?」

母親の作戦は私を精神的に追い詰め、自殺させることだったらしい。

しかし、頭が悪い。

この程度で精神的に追い詰められるのなら、とっくの昔に死んでいる。

自殺できるのなら、既にしている。

私は、出来ないからしないのだ。


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