属性が欲しい!
ちょっと変更をしました。
この前の話を三つほど入れているので。
申し訳ありません。
よろしかったら前の話も読んでください。
「こちらはいかがでしょう?水属性の魔導士の方に人気ですが?」
今、私とルイードは街の魔法道具屋にいる。
「そうじゃなくて、火属性のものをお願いします」
私の装備を整えるためだ。だけど、私は自分の属性強化の物じゃなくて火属性のものを注文している。その属性が欲しいからだ。
「失礼ですが、お客様は水属性でいらっしゃいますよね?」
店員の男の目がとても冷たい。そんな目で見ないでください。傷つきます…。
「いいから、いただけませんか?」
傷つきつつも、何とか平静を装って返事をする。私にはその道具が必要なのだ。
「………………」
「この子の好きにさせてあげてください」
とうとう店員さんは黙り込んでしまった。ルイードが苦笑しつつ、カバーしてくれる。
「かしこまりました」
店員さんは私の言うことは聞けないがルイードの言うことは聞けるようだ。七歳しか違わないのに、不公平。
無事に火属性の魔力入りの宝石を獲得して店を出た。これを買ったお金は最近のクエストで稼いだお金だ。
「それをどうするんだ?アクア」
ルイードが怪訝そうに聞いてくる。これも決して安くはなかったのだ。当然の反応だろう。
「もちろん、私の属性にするのよ?」
ただ、私にはそれをする術に心当たりがあった。だから、無駄だとは思わない。
「どうやってだ?属性は生まれ持って…って、アクア⁉」
ルイードが声を荒げる。それもそのはず、私は今買ったばかりの宝石を丸呑みしていた。
「な、何やってんだよ⁉それはそうやって使うものじゃないって!」
慌てるルイード。この、心配されると言う感覚はとても心地いいなぁ。
「大丈夫だよ、ルイード……あう、ちょっと熱い…」
「当たり前だろう⁉吐け、吐きなさい、アクア‼」
私の肩をゆさゆさと揺さぶる。待って、今せっかく飲み込んだの。そんなことされると本当に吐いちゃう…。
「大丈夫、大丈夫だから…ちょっと試しうちに行きたいから、クエストへ行こう?」
ここ最近、討伐系クエを多くやっているおかげで私はかなり水属性の魔法には慣れていた。この間の水柱の他にも水玉や聖槍などを利用している。まだ氷属性を持つほどにはなっていないけれど、十分に戦えるようになった。レベルは未だ7のままだけど。
「…はぁ、お前には是非、クエストの危険性をきちんと理解して欲しいよ……なんで安全保障を考えずどころか自分より10までならレベル上でもオッケーなんてルールを作るんだ…」
「大丈夫、ルイードは私が守るよ」
元気良くそう返したのにルイードはそう言うことじゃねぇ、と疲れたように返すのみだった。私、何かしたかなぁ?
クエストまでの道すがら、私は先日見た夢について思い出す。
お城の広場のような場所、長い階段が前にあって、その頂点には壮麗な椅子ーー玉座がある。そこへ腰掛けるは…
「…おじさん」
私をこの世界へと導いたおじさんだった。
おじさんは相変わらず渋い笑みを向け、手招きしてくれる。私は何の迷いもなく階段を登り始めた。
一歩。一段。足が階段の一段目に乗った、そのとき。
「っ⁉」
私は慌てて飛びのいた。おじさんは微笑んだまま、手招きを続ける。私はなぜかそれに逆らえなくて再び階段へ足を乗せる。
「ーーっ〜〜‼」
私を襲う謎の感覚。何も考えられなくなる。なのに、身体は動く。その気持ち悪さに涙が出てくる。
「それは、魔法を使うときに大事な感覚なんだよ」
おじさんが渋くて低い声で言う。私の耳はおじさんの声しか拾えない。私の悲鳴は声なき声になっているようだ。
「う…ぅぅう……」
私は決死の思いで階段を登り切った。おじさんはにこにこと私を迎えてくれ、頭を撫でる。
「いい子だね、お嬢さん。よく頑張ったよ」
「…はぁ……はぁ……そ、それで、何?おじさん?」
息が上がる。苦しい。だけど、おじさんは気にした様子もなく、私を抱き上げて膝の上に乗せた。そのまま、頭を撫で続ける。
「……?おじさん、質問に答えて?」
「うん?ああ、そうだねぇ」
おじさんは言いつつ撫でるのをやめない。仕方なく私は自分で考えることにした。
ここまでの階段は全部で五十段。
十段毎に感じる不快感が変化した。
始めは身体の中を水が駆ける感じ。
次は風が吹き抜ける感じ。
その次は何かが燃え盛るような感じで、
次は少し心が病んだ。
最後には身体の働きが促進された感じがして、おしまい。
特に最後の働きが顕著。私の身体は五、六歳くらい成長したようだ。そりゃ、あれだけ身体の各器官が働きまくれば、あり得るか。
恐らく、始めは水属性、次は風属性、次が火属性で闇、光属性だ。闇属性は精神を光属性は身体を司る魔法か。
これだけ感じ取れたのだ、恐らく、私はすべての属性を持つことができるだろう。しかし、今できるかと聞かれればNOと答えるしかない。私にはその力がまだない。
なければどうすればいいのか。
諦める?いやいや、それは普通の人がすることだ。
私は、普通じゃない。特別なんじゃなくて、異常なんだ。
そう、異常な私が取るべき手段。それはーー
「食べればいいのね。その力を、私の身体に取り込むために」
そう呟くと撫で続けていたおじさんの手が止まった。そして、そっと息を吐く気配。
「すごいな…ノーヒントでわかるものか?」
「ノーヒント、と言う割には、ヒントが転がっていたよ。けど…やっぱり、正解か」
ああ、とおじさんが頷く。私としても、何とも言えない気分だ。
「おじさん、名前、教えてくれるかな?」
おじさんは少し考えるように黙っていたけど、やがて、今度ははっきりとため息をついた。
「君に嘘はつけないな。ついても無駄だろう……オーディン、と言う」
「オーディン……神様、なの?」
オーディンという名に聞き覚えはない。しかし、家の近くの神殿に二羽の烏と狼を従えた片目の神の像があった。おじさんはきちんと両目があるし、烏も狼もいないけどどこか雰囲気が似ている。だから、ふとそう思い立っただけのこと。しかし、おじさんは苦笑した。
「やはり、お見通しなのか?その通り、私は神だよ。最高神、オーディンだ」
「最高神?」
「神様のリーダーのことだ」
神様のリーダー。神様で1番偉い人。
「そんな人が、どうして私なんかを迎えにきたの?あんな、辺境の街まで、わざわざ」
偶然じゃなくて、迎えに、故意に来たよね?と私は付け足す。おじさんは少し困ったように笑ってまた頭を撫で始めた。
「うん。故意だったね。だけど、お嬢さんは私なんか、と言うような立場じゃないなぁ。なんか、とはそれこそ迎えに行く価値もないものを指していう。君には、その価値があった。それだけのことだよ」
「………?」
「いつかきちんと説明してあげよう。私たちのことも、君のことも」
「あの程度の魔法石じゃ、まだまだ足りない…やっぱり、モンスタードロップを待った方が確実かなぁ」
ぽつりと言った呟きにルイードが軽く首を傾げながら振り返る。私は何でもないと手を振って誤魔化した。
ルイードには夢のことは言っていない。
言っても信じてもらえないだろうとか思ったわけじゃなくて、ただ、純粋にその機会がなかっただけだ。
私の身体は夢と同じくらいまで成長していた。つまり、ルイードと同い年くらい。仕方が無いのでルイードに服を買って来てもらったのだ。さすがに幼女のときの服は着れなかったから。しかし、ルイードはこのことがかなり衝撃的だったみたいでここからは何を言っても上の空。私をぽけっと見ていることしかできていなかった。そこへ神様にあったんだよーなんて、言えるわけが無い。
仕方ないよね、しばらくは黙っていよう。
それにしても、そんなに見られるほど成長した私は変なのかな?そう考えると、恥ずかしい。元に戻ってくれることを切に願う今日この頃だ。