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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
非日常な日常
24/157

世界樹

街の外れにある、お世辞にも広いとは言えない家のやはり少々窮屈なリビングにて、五人の男女が座っていた。

うち2人がその身を血で汚しているが、それは自身の血ではなく、目の前で殺された友とこの街の有力者たちの血だった。

その2人が並んで座るテーブルを挟んだ向かい側には三人の少女が座っている。

いかに広くないと言ってもそこまで狭くもないと言ってやりたいほどに三人は密着していた。その両端の2人は至福の表情。真ん中の一人は少し暗い顔をしていた。それは決してその2人からの密着が嫌だとかからくる表情ではなく、寂しさから来る顔だった。その少女の耳では昨日まではなかった七色に輝くピアスが静かに揺れていた。

重苦しい沈黙。

誰も言葉を発しない。至福の表情の2人はともかく、是非真ん中の少女には何か言って欲しいとこの中のただ一人の少年は説に願っていた。そう言う少年こそ、一言も発していないわけだが。

せめて、空気を読めないことに定評のある少女が何か場違いなことを言ってくれれば、とも思うが、それは願うだけ無駄である。なぜなら、その少女は少年の隣で夢の世界への逃亡を図っているのだから。ここ最近は落ち着いて眠れていなかったので、何らかの手段を用いない限り、帰って来ることはないだろう。

なぜこんな重苦しい沈黙が続く状況になったのか、つい一時間ほど前に遡る。


「俺、しばらくはオーディンとこに行くわ」


フレイに呼ばれたフレイアは軽く言われたその言葉の意味を一瞬、理解できなかった。

「え?フレイお兄ちゃん、もう一緒にクエスト行かないの?……どうして?」

思わず涙目になってそう言うフレイアに罪悪感に駆られたフレイは前言を撤回しようとする…が、フリッグに(ワンド)で一突きされ、止められる。オーディンはフレイアのその表情に見惚れているらしく、何の反応も示さなかった。

「フレイはちょっとした仕事があるのよ、フレイアちゃん。我慢してくれないかしら?代わりに、この子をおいて行くわ」

優しく微笑みかけながら言うフリッグの側におとなしく立っていた少女がいきなりフレイアに抱きついた。もともと抱きついていた麗麟を突き飛ばす勢いだ。しかし、麗麟もしっかりと抱きついているため、決して離れることはないが。

「白愛と申します、ご無沙汰しておりました、主上!」

少女は一瞬麗麟を睨みつけていたが、すぐに満面の笑みをフレイアに向け、自己紹介をする。それを聞いてフレイアはその子と自分の関係性を理解した。優しく微笑みかけ、白銀のショートヘアを撫でてあげる。

「久しぶり、白愛。だけどごめんなさい、あなたのことは覚えていないわ」

その正直な告白に少女は少なからずショックを受けたハズだが、それを微塵も顔に出さずににこにこと答える。

「存じてますよ?大丈夫です!これから楽しー思い出、いっっぱい、作りましょ〜ね!」

美しい紫の瞳はフレイアに会えた喜びに溢れていて、無表情が常の彼女の顔も思わず緩む。

その光景を黙って見ていたフリッグは満足気に頷いて、

「それじゃあ、フレイは連れていくね?」

と言った。それはそれ、これはこれで寂しく思うフレイアだが、大人の事情は理解する良い子である。

「はい……フレイお兄ちゃん、また来てくれるよね?」

再び潤み始めた目に上目遣い。心からのその言葉にかなりぐっと来るものがあるフレイだが、また前言を撤回するようなことはせず、自身の空間魔法から一つのピアスを取り出した。それは七色に輝く、一つの大振りな丸い石を埋め込んだ物で、少し不思議な形をしていた。

「寂しいなら、これをあげるよ…一度付けると取れないんだけど、付けてもいいか?」

戸惑いつつも頷くフレイアの左耳にそのピアスを着ける。フレイアは少しの痛みを感じるとともにプス、と小さな音を聞いた。

「それは、女神(フレイア)の涙って神器でね?私が作ったのよ」

フリッグがどこか誇るように言う。ついつい忘れがちになるが、彼女は神器専門の錬金術士だ。

「俺たちと意思伝達(テレパシー)ができるピアスだ。まあ、一定量の魔力を喰うが。やり方は感覚的にわかるんじゃないかな」

フレイは頭を撫でながら説明する。フレイア自身の涙を元にしたこの宝石はもともとその術式を組み込んでいるのだ。そして、それは主要神全員が付けている。これは付けているだけで主要神である証明になるのだ。

「ん……ああ、確かにわかるね…ありがとう、フレイお兄ちゃん、フリッグさん」

心の底から嬉しそうに顔を綻ばせるフレイアに安心したように2人も表情を緩めた。

「それじゃあ、これからのことを話すわね?フレイは彼に話してくれる?」

そういったフリッグの真剣な表情を見て、フレイアも表情を引き締める。フレイはフレイアの頭をもう一度ポンポンと叩いてフレイアの後方にいるルイードの元へと向かう。ちょっとした相談、いや、命令のためだ。

しかし、ルイードとフレイの話など想像もつかないフレイアは首を傾げる。そんな彼女にフリッグが話を始めた。

「あのね?実は、フレイアちゃんには自分の立場だけは理解して欲しいの。他の何を犠牲にしても、あなただけは死なないようにして欲しいーー」


一方で、ようやく事態の理解が追いついたルイードにフレイが話しかけていた。

「よお、暫く振りだな」

「……フレイ………神…」

驚いて目を丸くするルイード。しかし、彼が驚いているのは自分を嫌っていたはずのフレイが気安く話しかけて来たことだ。それも、フレイアを置いてまで。何事かと不安になるのも当然と言えるだろう。

「なあ、お願いがあるんだよ。聞かないってんなら……命令?神託?そんなんで解釈してくれりゃいいや」

怠そうなその口調には厳格な雰囲気など欠片もないが、事実彼は神であるし、神託は絶対だ。不可能でも叶える努力はしなければならない。例えルイードの信仰する神が別にいたとしても。

「…なんだ?神なら俺なんかに頼らなくてもなんでも出来んだろ?何を俺に頼むっていうんだ」

緊張しつつも敬語を使わないのは、フレイの手が剣の柄にかかっているからか。敬意よりも敵意が先に立つ。もちろん、ルイードごときがフレイに勝てるわけがないのだが。

「フレイアを預かってくれ。別に一緒にクエに行けって言わねえけど、あいつが危険なクエを受けたときは止めてやって欲しいんだ。あと、家に泊めてやってくれ。出来んだろ?そんくらい」

威圧的ではないが、友好的な口調でもない。ルイードはもちろんフレイアを預かるのに否やはないが二つ返事で承諾するのは躊躇われた。

その間をどうとったのかフレイは怠そうな顔を隠しもせずに盛大なため息をついた。

「なんだ。対価が欲しいのか?別にそこまでのことじゃないだろうに。神器が欲しいか?加護が欲しいか?」

軽く神器や加護を与えられるように言うフレイ。もちろん、その気になれば与えるのは簡単だ。しかし、そうそう与える物ではない。事実、フレイが加護を与えた人物はこの一万年でも一人いるかどうかだ。

ゆえに、このようなことを言われれば断る者はいない。もし信仰していなくても、こう言われれば有難く頂戴し、以後は信仰するのが当然だろう。

しかし、ルイードはムッとした顔をしていた。

「いらない。対価なんて求めてない。フレイアを預かるのに対価なんて求めるか。あいつは俺の友達だ。友達が危険なクエを受けようとしてたら止めるし、泊まるところがないなら俺の家に泊める。そんなことを神様に命令される覚えなんてないな」

言って、キッとフレイを睨む。自分の友情をけなされたような気がして、気分が悪かったようだ。そんな幼い、女顏の睨みなどフレイが恐れるはずもないが。

やはり、フレイは恐れていなかった。しかし、その表情には変化があった。ルイードのことなどどうでもいいと言った気怠げな顔は何処かへと消え去り、意外そうな、満足気にな顔になっていた。

「……俺はアスガルドで1番見る目がない神なんだ」

「は?」

急な話題の変化にルイードは間の抜けた返事をする。しかし、フレイはすでに剣から手を離していたが、ルイードは未だ警戒したままだ。以前、フレイが睨んだだけで人が死んだことを覚えているのだ。しかし、そのとき直接手を下した富白はフレイアにくっつく白愛のところにいるため、あれは使われないが。

「昔に加護をやったやつは俺が殺った。悪人だったんだよ。俺が初めて認めたやつなのに」

「そ、そうか」

悲しげに告白された失敗談に思わずルイードは苦笑する。しかし、その失敗で本当に悲しみたいのはその加護を与えられたやつか、そいつに何かされたやつだろう。どんな悪事を働いたのかはもう随分前の話だから確認の使用もないが、フレイの加護を得た人物が手のつけようもなかったであろうことは想像に難くない。

「だが、俺はお前が嫌いだ。今はレベルが低いが実はすごい剣の才能を持っているとか、怒ると爆発的な魔力を発揮するとか、そんな能力なんて欠片もない、ただの一般人に毛が生えた程度の剣の腕で剣士と名乗ってるような男だからな」

いきなり満足げな笑顔と共に言われた酷過ぎる言葉にルイードはショックを受けるが、事実であるため怒ることも出来ない。黙って、フレイの続きの台詞を待つ。剣を持つ腕が少し震えていた。

「それだからこそいいのかもな。俺は絶対にお前には加護を与えようなんて思わねえし」

「…なんだ、加護を与えない理由の話をしていたのか?」

いいや、違うねとフレイは首を振る。バカを見るような、嫌な笑み。

「お前、どの神を信仰してる?それとも無神教か?」

またしてもいきなりの話題の変化。ルイードは少しの間をおいて、おずおずと言った。

「………フレイ神だ………まさか、こんなシスコン野郎だとは思わなかったがな」

その言葉にフレイは腹を抱えて笑い出した。ルイードが社交辞令で言ったのではないとわかっているのだろう。そしてまた、こんな人間界の辺境でもシスコンなどと言われるとは意外だったのだ。彼は、剣豪でその名を全世界に轟かせているが、シスコンでもかなりの知名度を誇っている。神が最も干渉する世界、人間界ではその名を広めぬよう最大限の努力をしていたのだが、すっかり暴露てしまったらしい。まさか、ルイードがフレイの正体を看破(リービル)するとは思わなかったのだ。

「まさかの俺?驚きだな。なら、信仰することだな。俺ならどうするか、どう戦うか、どう対応するか。それを考えて行動するようにしろ。それが俺の信仰だ。お前の場合はフレイアに聞けばいい。聞いて、俺の技を盗めばいい。そうでないと加護の真価は発揮されないからな。もし気が向いたら降りてきて指導してやるよ」

「加護…?指導…?フレイ神が直々にか?」

訝しむルイードにフレイはにやりと笑いかけ、ルイードの額に指を突き立てる。そして、少しばかりの呪文を唱えてから、聖句を言う。

「剣の神、フレイの名において、命ずる。剣の道を目指さんとする者に聖なる慈悲を。ときに鋼のような護りを、獣のような攻撃を、光のような動きを与える。代わりにーー」

聖句が長過ぎる、とうんざりした顔をしたフレイだが最後の句だけは真面目な、試すような顔で唱えた。


「ーー想い人のためにその身を捧げることを厭わない気持ちを」


一瞬の静寂。フレイの聖句が途切れ、ルイードも何も言えない。その静謐なる沈黙は神聖で、破ることそれ事態が大罪のようにさえ思われた。

「これを誓える物に、左様の慈悲を与える」

誓うか?と言う問に、今度こそルイードは間を開けることなく、フレイの目を見てはっきりと答えた。

「ーー誓う」



このような経緯があって、神々は人間界を去って行った。

そして、話は冒頭へ戻る。

フレイの加護を得たルイードだが、今はその力を使いこなせないので今まで通りコツコツと修行を積むしかない。そもそも、ルイードにはそれを頼りにする気などさらさらなかった。

今、目先の問題はこの状況である。

「「あのっ!」」

同時に話しかけてしまうと言う定番のミスを犯し、また気まずい状況へ戻る。

そもそも、暗い顔をしていたのはフレイと別れたからだが、ルイードに会いたかったのも事実であるフレイアはそこまで落ち込んでいたわけではない。いや、その理由はもちろん、ルイードに会いたかったからで、他意はない。決して、左耳のピアスからオーディンやフレイ、フリッグのトリオ漫才のような会話が聞こえるとかではない。

だから、彼女なりにルイードとの距離を縮めようと思考を巡らせていたのだ。どんなに大人に見えたとしてもその所有している記憶の量はたったの五年。さらに言えばその五年はほとんど人と関わって来なかった。そんな乏しい人生経験から、彼女は必死に、久しぶりに会う相手への接し方を、具体的には知らない女性と仲良くしているところへの割り込み方を考えていた。

しかし、いかに聡明なフレイアの頭と言えどもその答えを出すことは出来ない。勇気を出して絞り出した声は彼と被ってしまい、また会話ができなかった。ここへ行くようにフリッグに言われた彼女は黙ってルイードの元へ向かったが、加護を受けた反動で思考の大半が麻痺していたルイードとはまともな会話をしていない。現在の、正常な思考のルイードとは何を話したらいいのか。

やがて、静寂を破ったのはルイードの笑い声だった。

「フレイアは、そんなに無口な子だったか?無表情な子ではあったが、初めて会う相手ともそれなりには話す子だったと記憶しているんだが」

ルイードは優しく微笑みかける。今の台詞は、皮肉や嫌味などではなく、純粋に感じた疑問だ。外見の成長と共に、内面も成長したのではと思ったのだ。

「…ふふ、そうだったかしら?ん、そうだった…のかな。確かに、そうだね。ルイード、実は、謝りたいことがーー」

「奇遇だな。俺もだ。だが、俺はお前に謝られる覚えはない」

「…奇遇ね、私もあなたに謝られる覚えはないわ」

「……」

「……」

無言の見つめ合い。碧の瞳と深緑の瞳が交差する。

今度、先に折れたのはフレイアだった。

ふっ、と軽く笑って、微笑む。正しく、女神の微笑み。

「やめましょう?どうして謝るのにこんな剣呑な雰囲気が必要なの?」

その微笑みには涙と同様に術式が組み込まれていたようだ。その術式は回復。ルイードの喉に残っていた傷跡が瞬く間に消えた。ポーションでは止血程度しかできなかったらしい。

「…そうだな。じゃあ、俺から。あの日、嘘をついてごめんな」

あの日、とは今日一日だけ、別でクエストをしようと言った日のことだ。あれからもう、二週間あまりが経っていた。

「そんなことかぁ。全然、構わないわ。あの時から薄々わかっていたから。じゃあ、私の方。処刑の対象になったのは私の所為ね?その上、護りきれなかった…本当に、ごめんなさい」

フレイアはぺこりと頭を下げようとする。左右からぴったりと抱きつく二人の所為でその身体を傾けることは叶わなかったが。麗麟はともかく、白愛は彼女の身体能力の全てを貰っているのでその力は半端ではない。不死の女神であるフレイアは麗麟にあげた魔力は戻らなくとも身体能力は元通りに戻るのだが、白虎はもともとの身体能力値も高いのだ。

「護りきれなかったって……護ってくれただろ?俺の首がはねられるの、止めてくれたのお前だろ?そのあとも首が切られるのを止めてくれたり……十分だと思うが?」

ルイードは心の底から感謝している。二度も命を救われたのだ。それで感謝しない訳がない。しかし、フレイアは暗い顔で本当に申し訳がなさそうに言う。

「だけど、傷、ついたじゃない。私が甘かったから…」

フレイアは本気で落ち込んでいるのだ。二度救った命よりもつけてしまった小さな切り傷に。

「そんなことはない。本当に、ありがとう」

ルイードの心からの謝辞に少しだけフレイアは安心したようだ。喉の傷も、今は跡形もなく消えている。

「じゃあ、これからのことなんだけど」

ルイードはそう切り出して、隣で眠るリコの肩を揺すった。フレイアはくっつく2人に真面目に話をするように言う。


結果的に、これからのことで決めたことは二つ。

一つは、フレイア、麗麟、白愛が新米パーティー、世界樹(ユグドラシル)のメンバーになることだ。

麗麟とリコは戦闘こそできないが、治癒、支援双方の魔法のレベルは一流。白愛とフレイアは戦闘能力が一流だ。ゆえに、フレイアが今までにこなして来た17個のクエストと同レベルのクエストを受けても大丈夫だと判断された。ルイードに関しては、フレイアが護りながら戦えると言うことで話が纏まった。

二つ目、世界樹(ユグドラシル)初めてのクエストはフレイアが受けたクエストの中で唯一クリアしていない物にした。それはーー

「ーールビリアルフラワー討伐?」

「うん。それだけはまだなの。だから、早急に解決しないと。増えられても困るし…」

ルビリアルフラワーが現れたらその数は数日のうちに十倍にまで増えると言われている。なんと言っても、その増え方がズルいのだ。芋づる式に増えて行く。しかも、集団での行動を主とするのだ。当たり前だがモンスターの数が増えれば増えるだけその難易度が上がる。なるべく急ぐべきだ。

「うーん、別にいいけど、ルビリアルフラワーってなんだ?」

ルイードはそんな高レベルモンスターなど相手にしようとも思ったことがないので一切知らない。

「ルビリアルフラワーはやめた方がいいんじゃないですか〜?あれは、このパーティーにはあまりに危険だと思うな〜」

のほほんとそんな声をあげるのは楽しげにおやつを食べるリコだ。彼女は支援魔法のみに長けているが、実はそれは風属性限定ではなく、全属性の支援魔法を使用できる。ただ、風属性が最も得意なのだが。そんな彼女は一流の支援魔術師(サポーター)を名乗れる。ゆえに、そのくらいの高レベルモンスター討伐に挑む支援魔術師(サポーター)なしのパーティーに何度か臨時で入ったことがあったのだ。そのときの経験と知識による助言である。

「どうして?私もルビリアルフラワーの生態については詳しくないのだけれど、宝石を落とすでしょう?」

不思議そうに首を傾げるフレイアにリコはにこにこと説明を始めた。もちろん、善意で、である。

「ルビリアルフラワーが仲間を増やす方法はね、人間の男に特別な液をいれることなんだよ。えっと、具体的には○○○○○○○○○、○○○○○○……って?あれ?聞いてる?」

いつの間にか、正確にはリコがあまりよろしくないことをいい始めた辺りから麗麟と白愛が全力でフレイアの耳を塞いでいた。麗麟などは治療魔術のオリジナルを使うほどの全力である。

「聞くわけないでしょう!私の愛しい無垢なる主上になんてことを聞かせようとしているんですか!」

「そうよ!主上はそんなことは知らないの!数万年生きてるのにも関わらず知らずに生きて来たのよ!そして知らなくてもいいの!!そんな言葉を聞かせないで!」

真っ赤な顔でそう叫ぶ2人にやはり空気の読めないリコは驚きの表情をしつつ言った。

「え?フレイアさんは未経験ですか?えー?じゃあ、ルビリアルフラワーの○○○○○は痛いですよ?だって、○○○○○○○○ーー」

「そこまでにしろ、リコ。とてもじゃないが聞いていられない」

その場にいる三人が顔を真っ赤にしつつルビリアルフラワーの恐ろしさを理解した瞬間だった。


「えっとな、リコの言ったことを要約すると、ルビリアルフラワーは美女を襲うから、俺たちのパーティーみたいだとかなり危険らしい」

「ふ、ふぅん?つまり、麗麟や白愛みたいに可愛い子や、ルイードやリコさんみたいに綺麗な子は危ないってこと?」

なぜそこに自分を含めていないのか、一番危険なのは自分だということを本当に理解していないのかなどの疑問は湧き上がるが、ルイードがはじめに突っ込んだことは、

「なんで俺を美女にカウントするんだ!」

「まあまあ、とにかく、近づく前に殺せばいいんだよね?大丈夫だよ」

さらっとルイードのツッコミを流しながらフレイアが提案する。もちろん、麗麟と白愛は賛成だ。

「私も賛成ですね。あんまり数が増えてからだと手に負えませんし」

と、リコも賛成した。

「まあ、討伐には行くけどな」

未だ美女にカウントされたとこを根に持っているルイードも賛成と言うことで、フレイアが満足気に頷いた。

「じゃあ、明日はルビリアルフラワー討伐ね!」

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