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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
神器を持つ者
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人質

「えっ……どうしたらいいのよぅ…」

エレンが泣きそうな顔をしている。当然だ。2人にああは言ったものの、処刑されるのはエレンも同じにのだから。もちろん、この街の町長も、止められなかった冒険者ギルドマスターも。

「…ルイード、なんでもお願い聞いてくれるのよね?」

「えっ⁈」

不意に、エレンが望洋と言った顔で聞いて来る。怖いが、頷く。

「なら、許してね?あの子、ルイードの連れでしょう?」

まるで人形のような表情。フレイアよりも感情を感じないーーいや、生気を感じない表情だ。まるで、地獄の淵を見てきたような顔。ゾッとする。

「ーーっ!ルイードさん、逃げーー」

リコが叫んだ。それをかき消すように、エレンが叫ぶ。


「こいつはあの子の保護者よ!仲間だわ!誰か!捕まえて‼」


えっ、と思ったときにはすでに遅かった。俺を助けようと動きかけたリコ共々冒険者達に捕らえられ、警備団の牢に繋がれる。

抵抗のしようもなかった。

向こうは何の抵抗もなく捕らえて来るが、俺からしたら顔馴染み。剣を振って抵抗など出来るわけもない。口で何を言ったところで信じてはもらえないしな。

「しかし、何のための人質でしょう?ただ、処刑される人数が増えただけのように感じますが……」

リコが静かに呟く。俺とリコは同じ牢に繋がれていた。最も、リコは魔法無効化道具を着けられているだけだが。俺は鎖で両腕を上げた状態で吊るされてる。何だこの差は。なんでこんなときばかり男扱いなんだ。こんなときこそ女扱いしろ。

「なんだろうな。道連れが欲しかったか、あるいはーー」

「フレイアちゃんへの脅しかな。だけど、無理だと思うけど」

おとなしいリコはわりと大人っぽく見えた。なんというか、お姉さんみたい。

いつもそうしてりゃいいのに。

しかし、いい読みだ。実は鋭いらしい。いつも呑気に見えるのにな。さっきも俺が危ないことを感づいていた。しかも、助けようとしてくれた。有難くて、嬉しいけれど、申し訳ない。

「そうだな。フレイアが俺なんかのために動くわけがない」

俺がそういうとリコはぽかんとした。俺を見る緑の目がバカを見る目になっている。うう、これは傷つく。

「ルイードさんはバカですか。フレイアちゃんは絶対に動きます。それはもう、動き過ぎるくらいですよ。怒って手のつけようもないでしょうし、フレイさんだって止めません。彼はフレイアちゃんが望めばなんだってします。問題は、あの2人の行き先です。あの2人の実力なら、私たちが行くようなダンジョンへは行きません。あの先にある光山でしょう。片道三日はかかります。あの時の2人は徒歩でした。フレイアちゃんは12歳ごろ、いくらフレイさんのスタミナが人間の枠を越えていたとしても、三日以上かかるでしょう。この街の冒険者たちはまずフレイアちゃんを調べます。彼女はギルドに登録していますよね?達成クエストとレベルはわかりますか?」

急にペラペラと話すリコに驚いていると、よっぽど驚きが顏に出ていたのだろう。リコは薄く微笑んで説明してくれた。

「私の攻撃魔法が弱いことは知ってますよね?けれど、私は未だきちんとした自己紹介をして来ませんでした。改めて。リコ・マーヤ・アルフレッド、レベル74の冒険者です」

「なっ⁉ 74⁉あんな魔法の人が⁈」

二重の意味で驚きだ。まずはリコがアルフレッド家の娘であったこと。アルフレッド家はこの国、現王の親族の家だ。名家中の名家。名を連ねるのはこの国では一つだけ。レオバート家だ。現当主は息子夫婦を亡くし、その子を失い、現在は跡継ぎがいない状況だが。

そして、そんなどうでもいいことよりも驚きなのが二つ目。あの魔法でレベル74ってことだ。

「うふふ。やっぱりそうなるよね。私、治癒魔導師なのよ。攻撃魔法には向いていないの。ただし、人を見るだけで発動出来る鑑定っていうオリジナルを持っているわ。あの2人の実力は大体わかってる……まあ、フレイさんは強さの一部だけと…フレイアちゃんへの愛だけです。正体は、さっぱり。まるで、本物の神のようでした」

いや、まあ、本物の神なんだけどね。

そして、フレイの愛はそれほどまでに強力だったのか、リコはちょっと引いたような顔をしていた。

それは、おいといて。

「そうだったのか…けど、治癒魔導師がなんでソロだったんだ?」

「私、家出中」

と言ってウインクをくれるリコ。えっと、何言ってんだこの人。

「政略結婚。嫌んなっちゃって。逃げちゃった」

てへって感じで舌を出す。最強かも知れない。

「んー、まあ、いいや。それで、レベルと達成クエストだな?レベルは7、達成クエストはレベル15までのモンスター討伐6件くらいだ」

「え?それだけですか?しかも、7?」

俺はフレイアには正常にレベル判定が働かない話をした。リコは心底不思議そうな顔をしていたが、やがて一つ大きく頷く。

「うん。まあ、すごく強かったですからね。魔力は。バクを起こしてしまってもあり得るのかもしれません」

それでは、話を戻しましょう、と言ってリコは真面目な顔へ戻る。

「そのレベルなら、低レベルダンジョンの方で探すでしょう。フレイさんの強さは誰もが承知しているでしょうが、フレイアちゃんは抱っこされていただけなので。冒険者の常識として、弱い人に合わせますよね」

そして、それが問題なんですよね、と困ったような顔をして、リコはため息をついた。

「光山へ行った理由はわかりません。最近、あそこにはホーリードラゴンが出ていましたよね?それかもしれませんが、はっきりしたことは、身体に触れてテレパシーでも使わないことにはわかりません。とにかく、そこへ向かったのなら、二人が戻ってくるのは最短でも一週間後。ここの冒険者が見つける可能性は先に述べた理由から、低いでしょう。王がここへ来るのは三日後です。私たちの処刑は免れません」

はあ、と深いため息をもう一度つく。その姿は悲しげではあるものの、死を恐れているわけではなさそうだ。まあ、アルフレッド家のご令嬢ならば王との面識もあるだろうし、刑も免れるかもしれないよな。俺は、多分死ぬけど。


その日からは別に対した変化もなく、リコの予想通り、冒険者たちは2人を見つけられず、王が来る日になった。

「やっぱり、間に合わなかったですね」

ふぅ、と息を吐いてリコは俺に話しかける。今は街の広場に2人仲良く鎖で繋がれて立たされている。俺たちの前にはエレンをはじめとした処刑対象者が五、六人立っていた。

「そうだな。まあ、これも仕方がないよ」

と、適当に返事をしたとき、高らかに蹄の音を響かせて颯爽と王が現れた。

燃えるような赤い髪に同色の目。逆三角形の逞しい筋肉に包まれた身体に堂々たる佇まいは何もしていないのに人を圧倒させる何かがある。すでに俺とリコ以外の者は全員平伏をしていた。別に、俺たちは反発しんからしないんじゃなくて、鎖の所為でしないわけだが。

しかし、王のクラスはなんだろう。もちろん、王ってクラスなのかもしれないが。魔剣士とかか?その髪と目は火属性魔力の色だろう。背には大振りの壮麗な赤い剣を背負っているし、大体あたりではないだろうか。

「頭を上げろ。そこの、武器商人。聖槍(グングニール)を持って来い」

王である、確か…えっと…ああ、ルシウス・ガルシアが渋い声でそう告げる。ガルシアとはこの国の名でもあるのだ。今は三代目だったか?しかし、彼の歳は幾つくらいだろうか?三十は越えているだろうことくらいしかわからない。しかし、こんな呑気なことを考えていられるのは俺だけのようで、リコは面倒そうな軽蔑するような眼差しを王に向けている。対して声をかけられた側のエレンはビクリと肩を震わせたあと、カタカタと震えるのみだった。

「じ、じつは!……実は、あぁあの…ぬ、盗まれて…しまっ!しまい…ますました‼」

声が裏返り、何度もどもってしまいながらもエレンは必死にそう叫ぶ。声が震えている。泣いているのだろう。

「…何?」

しかし、王はそんな様子は気にも留めず、素直に怒りの感情をエレンに与えていた。エレンはいよいよ震え上がり、傍目からは激しく痙攣を始めたように見える。

「どういう管理をしていたんだ!」

「も、もうしわけ!申し訳、ありまひぇん!で、ですが、とんでもなく強い者、がーー」

ボト……ドサリ

エレンの台詞が変なところで来れた。そして、一つの頭が地面を転がる。怒り、真っ白な馬を降りた王がその大剣でエレンの首をはねたのだ。

「次のやつ。続きを答えろ」

「ひっ!はひ!りょうひゃいです!」

今度はエレンの真横だった者が声をかけられる。エレンの首無し死体に倒れてこられていて、とても正気ではないようだが、必死に説明を試みていた。しかし、説明半ば、フレイが槍を投げた話の前でその首も地面に転がる。

「次」

どうやら王は事情を聞くことと処刑を同時に行うつもりらしい。その後三人の首をはねつつ、やっ全ての話を聞き終えていた。残った処刑対象者は町長と俺とリコだけ。

「大まかなことは理解した。町長、お前はまだ生かしておいてやろう……その者たちはなんだ?」

とうとう王の関心が俺たちに向けられた。咄嗟に死を覚悟する。しかし、王はにやりと笑った。

「これはこれは、久方ぶりだな、リコ。まさか家出中のアルフレッド家のご令嬢にこんなところで会えるとは」

「人違いです」

リコはさらりと受け流す。やはり面識があったか。妙に嫌そうにしていたのはそういうわけだったんだな。

「人違いではないだろう。王を侮辱するのもほどほどにしろ。己の婚約者を見間違えるか」

なんと!嫌だった政略結婚とは王との結婚だったか。よっぽど嫌なのか、声が低い。

「そっちは誰だ?…見覚えはあるが……気のせいか?」

王が俺を見る。俺はもちろん、王との面識はない…はず。心当たり、なくもないが。しかし、リコはそんなことには構わず、すぐに焦ったような声をあげた。

「私のパーティーメンバーよ!殺したら許さないわ!」

ガシャンと音を立てて俺とリコを縛っていた鎖が取れた。王が斬ったのだ。そして、リコに微笑みかけて、言う。

「ならば、こいつは殺さないから、俺と結婚しろ。ちゃんと帰って来い」

「…………」

「なんて、甘いことを言うと思ったか?」

にやり、と王が笑い、俺に剣を向ける。その視線の先は俺の首。同時に、リコは王のお付きの者に捕らえられていた。

「どうせお前も処刑対象者だったんだ。その命を助けてやる代わりに連れて帰る。つまり、こいつの命なんて関係ないな!」

そう言って、喜々と言ってもいいくらいの楽しそうな笑顔で剣が振り下ろされた。

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