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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
女神の野望 終章
151/157

チョコレートの日

ちょっと早いけどバレンタインネタ。もしかしたら当日の話は当日に投稿するかもしれないけど投稿しないかもしれない。

アクアとルイードが付き合う前、ノアたちが表から岡崎たちを連れてきた後のイフ話。番外編です

「ばれんたいん?」


いつも通りの昼下がり、九尾がアクアの服を剥き、麗麟がきゃっきゃと服を選び、藍雪が髪型を整え、白愛は富白とイチャつくというノンビリした空気漂う人外組に先日漸くこちらに来た高野が話しかける。


「そうです、バレンタイン。こっちにはないんですか」

「うーん?ボロッコの日みたいなもの?」

「ボロッコの日?」

「男が好きな女に薔薇の花を贈る日よ」


なかなか色っぽい状態で話すアクアもアクアだが、気にせず会話をする高野も高野だなと思いつつ九尾は着実にアクアの着物を脱がしていく。麗麟は漸く服を選び終えたようで藍雪と髪型について話し合っていた。


「あー、それの男と女が反対版、みたいなものです。それで、あげるのは薔薇の花じゃなくてチョコレート」

「チョコレート!あの甘いやつね!」


アクアが目を輝かせて食いつく。毎年花屋が開ける本数見知らぬ男から薔薇の花をもらうが、大して嬉しくもなく飽きてきていたのだろう。気付いていたルイードは毎年魔法石やらなんやら違うものを渡していたが。


「アクアさんがもらうんじゃないですよ。あげる方」

「あげる方ね。チョコレートってこっちにあったかしら?」

「カカオ豆はないんですか?作れるらしいですけど」

「富白、チョコレートだって!食べたい?」

「…お、おう…無理しなくていいぞ…」


高野に詳しい話を聞くアクアの後ろで白愛が富白に抱き着きながら問いかける。見るからにリア充爆発しろな状態だが答える富白の顔は青い。白愛の壊滅的な料理センスを思えば当然のことかと麗麟が哀れみのこもった目で見つめた。


「ルイード、喜ぶかしら」

「…俺にはないんすね…」

「義理でよければ」

「ありがとうございますっ!」


こうして、情報提供者も無事報われ、アクアのバレンタインは幕を開けた。




「は?チョコレート?なんだそれ…」

「甘ったるいお菓子。あれ、こっちにねーの」


同時刻、ガルシア国内猫国大使館(ノアによってとうとう作られた)にて、魔力なしで使える日用品を開発していた岡崎がルイード全く同じ話をしていた。ルイードはアクアと違い表を知らないので話は難航を極めたがそこはそれ、異世界人に慣れた岡崎にとって大した問題ではなかった。

ノアに頼まれると断れない岡崎は現在猫国の大臣の一人。技術開発を担当している。大学で学んだ技術を惜しみなく使い、この世界の科学革命を目指して日々邁進中だ。


「甘ったるい菓子…なくはないか?アクアのとこの奴らが好きだった気がする」

「ただの菓子じゃねーけど、こっちにねーなら何でもいいか。花菜は好きじゃねーの」

「あいつは飯食わねーんだよ」


なんだかんだで意気投合した二人はいい友人としてよく連む。今も岡崎の仕事を適当に教えられながら手伝うルイードは存外筋がいいらしい。これでガルシア国貴族の次期当主でなければ引き抜くのに、と岡崎はため息を飲み込んだ。


「でもあれだな、お前ら絡んでると百合っぽい」

「百合?」

「レズってこと。あれ、その概念ねーの」

「レズって…女同士ってことか?俺一応男なんだけど」

「女のお前にしか会ったことねーからなぁ。男って言われてもピンとこねーな…なに?スッゲー美形だったの?イケメン?」

「…なに?顔の話?」

「顔の話。変わんの?どこが変わんの?」

「……お、男っぽくなんだよ」

「へー、見てみてぇ」


適当な返事をする岡崎と青い顔をするルイードと。ルナの姿では文句無しの美女だが、男に戻るとただの女顔なのがコンプレックスなルイードだった。


「そんで、チョコレートがなんだよ」

「ああ、バレンタイン近いなって」

「バレンタイン?ボロッコの日のことか」

「ボロッコ?」

「由来知らねー。赤い薔薇を好きな女に贈るんだよ」

「へぇ、白じゃダメなのか」

「血で赤くすればいいんじゃなかったかな」

「怖いわ」


同じような話の展開をしてからバレンタインの概要を説明される。


「なるほど、お前はノアから貰うってか」

「くれっかな。それとも俺が薔薇あげるべき?」

「どっちもすれば?俺は今年何やろうかな。あいつ薔薇喜ばねーんだよ」

「そうなん?」

「毎年アホほど貰ってるからな。お陰で翌日は魔法かけられた薔薇が行進してたりする」

「えー、何なんだよさっきから。ホラー?」

「これはどっちかっつーとメルヘンだろ」


グダグダである。無気力感が半端じゃない。二人だけの部屋で顔も合わせずにカチャカチャ機械いじる男二人が作る空気は他人を寄せ付けないものがあった。


「ノアに話ししたのか」

「した」

「何て?」

「そんな暇あるかにゃーって」

「暇あったら作んのかよ」


もーお前ら結婚しろよーとルイードが机に沈む。岡崎が顔を真っ赤にしてすごい速さでルイードを振り返った。


「まだ早いだろ!まだ付き合って一月だぞ!」

「お前な、あいつがどんだけ頑張って表からお前連れてきたと思ってんだよ。こっちきた途端イチャイチャラブラブしやがって。人の気も考えろ」

「なんだよ、お前だって同じじゃねーか」

「はぁ?俺ら付き合ってねーし」

「いやなんでだよ」

「あいつが折れてくれねーんだよ」

「告白は?」

「したしされた」

「両思いじゃねーか、ますますなんでだよ」

「子供作れねーからって嫌がるんだよ」


ブフォ、と運悪く茶を飲んでいた岡崎が吹き出す。作りかけていた部品が茶まみれである。ルイードがキレた。


「何してんだよ、もうちょいだったのに!」

「何してんだよはこっちのセリフだよ!お前ら何してんだよ!」

「はぁ?……………………………はぁっ?!ち、ちげーよ!なんもしてねーし!」


お互い立ち上がって叫び合う。意味を理解した途端赤くなるルイードにこれなら本当に何もなさそうだとほっと息を吐いた。


「じゃあなんでそんな話になるんだよ」

「俺らの立場のせいじゃねーの」

「ああ…子供いるもんな、お前…」

「お前んとこもだろ」

「ノア舐めんな、あいつ死なねーから」


アクアも死なないが、この場合子供が必要なのが女側か男側かの違いである。ルイードは家のためにも子供が必要だ。ノアは死なないので後継者が必要ではない。そもそも、獣人の国は血で後継しないのでどうしても必要ということはない。


「てかそもそも、この身体じゃなんもできねーよ」

「出来たらすんのかよ」

「お前しねーの」

「……」

「……」

「……」

「…黙って赤面すんなキモい」


何を想像したのか徐々に顔を赤くしていく岡崎の頭に手刀を落とし、ルイードは帰り支度を始める。暫く痛みに悶えていた岡崎はそれに気付いて涙目で見上げた。予想以上のクリーンヒットだったらしい。


「お前、もう男に戻んねーの」

「さぁ。アクアが色々考えてくれてるから、そのうち戻んじゃねーの」

「…ノアに会うなよ」

「…なんでだよ」


視線をそらして言う岡崎に胡散臭そうな目を向ける。ボソボソと聞き取りづらい声で返事が返った。


「…お、お前…イケメンには勝てねーよ」

「……男の時からの知り合いだよばか」


呆れた目を向けるルイードに岡崎は困ったような顔をした。自身もイケメンの部類に入るだろうに、とため息を押し殺す。


「あいつはお前大好きじゃねーか。浮気しねーだろ」

「…花菜もお前のこと大好きじゃねーか」

「知ってる」

「…薔薇の花やったら」

「はぁ?」


すっぱり言い切ったルイードに今度は岡崎が呆れた目を向け、さっさと付き合えよと内心呟く。


「お前からのだったら喜ぶんじゃねーの、薔薇の花」

「…じゃあ、黒薔薇渡すわ」

「は?なんで。赤い薔薇なんだろ?」


荷物を持って部屋を出て行こうとするルイードを止めて問いかける。ルイードは暫く言い淀んだ後、頰をかいて答えた。


「似合いそうじゃん」

「……………女みたい」

「うるせー、いーんだよ。今は女なんだから」

「お前が女々しいと俺浮気になんじゃん」

「ノアはそんな細かいこと気にしねーよ」


軽口を交わして、部屋を出る。早めに花屋に行かないとボロッコの日近くになると店から薔薇がなくなってしまうと忠告を残して。岡崎はこの後、部屋を施錠して急ぎ足で薔薇を買いに向かった。

黒薔薇の花言葉は

「貴方はあくまで私のもの」

「永遠の、決して朽ちることなき愛」

です。ルイード女々しいしちょっと重いし若干病んでる

岡崎と会話するときは男の子みたいになるルイード

いや、いっつも男の子だけど!

この二人会話させるの楽しい。二人ともリラックスしてお互いの女を自慢します

アクアのところはいっつもあんなん。白愛はアクアにくっつくだけで着せ替えして遊ばないので麗麟たちにとって邪魔。富白を呼んできて追い払います。みんな仲良いです。着飾ったアクアを見る係。高野報われない。でもルイードのこと女だと思ってるからなんだかんだチャンスがあるとか思ってる人。

大使館はゴリ押されたルシウスが負けて作りました。最近ルシウス残念な面しか出てきてないけどちゃんと王様やってます。リコの方がまともに外国と渡り合えるけど。尻に敷かれてます。リコはマイペースだけどしっかり者の嫁。

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