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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
女神の野望
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追憶

ルイードさんのことが好きなんですか


それは、唐突にかけられた言葉だった。


「…は?」

「だから、好きなのかと聞いているんです」

「随分と、急だね?」


ルシウスの王城の部屋に帰る途中の廊下でのことだった。


「私は、好きです」

「……」

「ルイードさんのことが、真剣に」

「…そう」

「はい。ずっと幼い頃から、大好きです」

「…それで?どうして私に言うの?」

「…わかりませんか」

「……」

「横から出てきて、勝手に荒らさないでください」

「……」

「好きでないのなら」



過去に、こんな話をしたことがある。もちろん、相手はリコだ。後で聞いた話だが、あの日、リコは改めてルシウスにプロポーズされていたらしい。そして家は、受けろとリコに強要したそうだ。

自分のための、確認だったのかもしれない。

けれど、少なからず私への確認の意もあったはずだ。

けど、彼女はこの光景を見ても、ルイードが好きだと言えるのだろうか。




「アクア。大丈夫か?」

「…ウンディーネ……大丈夫…だよ」


槍に宿ってくれていたウンディーネが声をかけてしまうほどに私の顔には余裕がないか。


「夢の光景と同じ…アクアちゃん、この戦いの結末は…!」


ノアが驚きの声を上げている。そう、これは結末の見えた戦い。絶対に、私が勝つとわかっている戦いだ。


「お母さん」

「何?」


振り返ると皆が私を心配そうに見つめていた。私は苦笑いをして、先に行くように促す。


「けど!」

「ここは、私一人で絶対に勝てる。ロキは中にいるはずだし、多くの魔道人形の気配もある。みんなで中に行ってもらいたい」

「アクア、それじゃあ、」


反論しようとしたところで、フレイの言葉が詰まった。アクアの身体から異常なほどに魔力が漏れ出ていたからだ。そしてそれは、魔法陣として形をなして行く。


「私は…ロキに会ったら暴走してしまう」

「……」

「みんなも巻き込んじゃうんだよ」

「……」


アクアなりの気遣い。それに気づき黙ってしまった面々にアクアを乗せたままの九尾が声をかけた。


「儂と藍雪がついておる。暴走はさせんよ。だから、ここは任せて早う中へ行け」

「……おい、行くぞ」


フレイに続き他の神々も心配そうな顔をしつつ城へと向かって行く。

今しがたその城から出てきた少女は止めようとするが、アクアから目を離すべきではないと思ったのか、動くことはなかった。


「そう、ルイード。本当に綺麗な顔」


女の子みたいって、クリスマスパーティーの時にも思ったな、とアクアは苦笑した。思い返せば、初めて会ったときも男か女かわからないな、という感想を抱いていた。そのくらいに綺麗な中性的な顔だったのだ。


ロキの城に着くと中から長く黒い髪の少女が出てきた。それは予想されていたことだ。ロキの性格から籠城はないだろうとけつろんづけていたのだから。しかし、予想外だったことは二つ。出てきたのがロキ本人ではなかったことと、それが半魔半人だったことだ。

人間の寿命で壊れてしまう魔法人形。そんな中途半端なものをなぜ。

その答えはその少女が顔を上げた時にわかった。

深緑色の美しい目がそこにはあったのだ。


「……主さん、殺す覚悟はできておるのか?」

「できてなくてもするしかないだろう。ノアが見たのはこの槍で突き刺すところなのだろう?」

「そんな!ご主人様はあの人が好きなんじゃないんですか!?」


周りからかけられる声に答えられない。声を出したら涙が出そうだからだ。魔道書になっても涙が出るかは不明だが。


「藍雪、あのね?」


魔法陣の上に乗り、九尾と藍雪から離れる。


「ああ成り下がった彼を殺してあげるのも、一つの救いになるんだよ」


都合のいい言い訳。けれど、そう言い聞かせないと出来ない。彼は、少女になってもなお、顔のつくりが変わっていないから。


「魔力を得たんだね?どんな魔法にかかったのかな」

「転生するための魔法ですよ。お話は終わりましたか?」

「転生…声も、より女の子らしくなったんだね…ルイード」

「今はルナといいます。残念ですが、あなたのことは覚えていません」

「…へぇ、そう。ありがとう、それを聞いて、より戦いやすくなったよ」


アクアは槍を握りしめ、剣を持ったルイードと対峙する。自身も気づかぬ間に漏れ出た魔力は数千の魔法陣になり、アクアへ支援魔法をかけ続ける。それ一つ一つに攻撃の能力がないのは、やはりルイードに攻撃したくないというアクアの深層心理ゆえかもしれない。


「…そう言えば、初めて戦うね」

「そうなんですか?」

「うん。どっちの方が強いかな?楽しみだよ」

「……」


アクアの言葉にそれまで無表情を崩さなかったルイードーールナの口元が少し歪む。それは笑みのように見えた。そして、何かを呟く。しかし、それは誰にも聞こえないほどに小さな声だった。


「始めましょう」


アクアは数千の支援魔法の恩恵を受けながら全力でルナとの距離を詰める。ルナも剣を構え、風属性の支援魔法と闇属性の武器強化魔法の併用を始めた。


振り返ってアクアの方を見ていた神々、そしてノアはその戦いを、その結末を見た。


夢の通りに、ルナがアクアに胸を突かれて倒れるのを。



「…行くぞ」


今はかける言葉もない。それをわかっている神々はただ先へと進んだ。






あなたはルイードさんが好きなんですか?

随分経ったけれど、今答えるよ。


好きだよ、堪えようもなく、流せるはずのない涙を流すほどに、女になっていても、変わらぬほどに。


好きだよ…


アクアは効果を発揮し終えた魔法陣たちが砕け、散るその中でルナの上に座りながらそんなことを考えた。


ルナの顔に、水滴が一滴だけ、零れていた。

短い!

けど、この2人はここからが長い!

ロキの方も神々との言い合いもありますしね

なんだかんだで戦ってないな、こいつら!

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