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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
女神の野望 準備編
135/157

グリーンアイズ戦7

「九尾が目覚めたわ。改めて、本当にありがとう。あの子を失わずに済んで、本当に嬉しい」

「いいえだよー。私が押し付けたようなものだよー?気にしないでだよー、隠し子ちゃんー」

「……ふふ、だから、違うってば」


私は前日に会ったばかりのこの国の王ーー名前はまだ知らないーーに頭を下げていた。もちろん、感謝の意を込めてだ。


「本当は、ガルムだけで抑えてるって聞いた時、おかしいなって思ってたの。さすがに、弱ってても指揮のないガルムたちだけじゃ荷が重過ぎるからね。アル、イー、アンは死んじゃったみたいだけれど、遺体が残っているだけ、マシだよね。本当、これだけ被害が少なかったのは、あなたのおかげだよ」

「えへへ〜。そんなに感謝されると嬉しいだよー!」

「…ふふ、そう?あなたはあまり王向きではないわね、前にも思ったけれど」


この王は九尾が倒れてから少し経った頃にここへやってきて、戦場を見て参加してくれたらしい。先ずは暴走しないよう、九尾の呪いを解こうとした。だがそれは不可能だとすぐに断念し、抵抗(レジスト)するための魔法を張ってやってくれたらしい。懸命な判断だ。少し手を加えただけで的確にそう判断できるものは少ない。大抵は実力を過信して俺ならできる!なんてよ迷いごとを言い出すから。

そして、取り敢えず九尾はそれで放置しておいて、次の問題はガルムたちだ。急いでその羽根で上空へと行き、私の知人であることを主張して指揮に従わせるようにした。そして、上空から支援魔法と回復魔法、時々攻撃魔法を駆使してギリギリでもなんとか持つようにしてくれていたようだ。


「本当に、大変だったでしょ?何と言っても感謝しきれないわ」

「いいえー。最後に倒したのは隠し子ちゃんじゃないー?」


確かに、それなりに戦況が厳しく、消耗戦に突入していた頃に帰って来た私が、残りの魔力を振り絞ってグリーンアイズを焼き払ったのだが、それでも、この王が駆けつけていてくれなかったらと思うとぞっとする。


「それにしても…驚いたよ、セイレーンさん?」

「…びくぅ!…あははー。バレちゃったかな??」

「ええ、自信はなかったんだけれど、私、口でびくぅ!っていう人始めて見たから、ああ、本物なんだなって」

「ああ!カマかけられたんだね!」

「うん、本当に、王に向いてないよね」


いやぁ、困っただよと本当に困ったように頭をかいているが、実はそこまで隠したかったわけでもないだろう。隠す気があったのなら、戦闘参加なんてしないはずだ。


「この国は王族だけが王位継承をできるんだね」

「うん、そうだよ。我がセイレーン家が代々、ね。けど、どうしてわかっただよ?」

「まあ、カマかけもあるけれど、1番はあなたの魔法の使い方かな。魔導聖歌(ルーンホーリーソング)だね?」


これは、今までイズンが使っているの以外で見たことがない。ということは、かなり希少なのだろう。もちろん、私やお母さんにも使えない。ただし、深海の歌姫と呼ばれる種族のマーメード、そのさらに上級種族のセイレーンなら、使ってもおかしくないかと思ったのだ。


「あれ、これを知ってたの?今、この世界の歌い手は私だけのはずなんだよー?」

「ちょっと、この世界以外の知り合いに歌い手がいて」

「えー、それはあって見たいだよ。私は私以外の歌い手にあったことがないだよ」

「え、ご家族は歌いてじゃないの?」

「セイレーンの一家は代々一人だけだよー。新しい歌い手が産まれると死ぬんだよー」


王の説明によるとセイレーンという種族は実質は一人しかいないらしい。生殖せずとも、歌い手の質が落ちれば自然と次のセイレーンが産まれ、その歌い手は死に至る、というサイクルを繰り返しているようだ。残酷なようだが、これは考えようによっては不死のサイクルだとも言える。人魚は老化しないので、老化による実の低下はあり得ない。ということは、質を落とさなければ絶対に死なないということだ。


「あなたは何年やっているの?」

「もう、何百年になるだよ。そろそろ飽きちゃった。きっと、歴代も飽きが来て質が落ちただよ。退屈で、死んじゃう種族なんだよー」


だから、私は同じ歌い手に会いたいだよ、と少し寂しそうな目でセイレーンは言った。


「名前もね、種族名で付けられるだよ。誰も考えてなんかくれないだよー。私は、この名前を呼ばれるたびに、望まれて生まれてきたわけじゃないってことを思い出しちゃうから好きじゃないだよー」

「ああ、だから自己紹介しなかったのね」


うん、そうだよーごめんだよー。と軽く謝った王はすぐに顔を真顔に戻すと声色を変えて、小声で話し始めた。


「ところで、あそこにいる…藍雪ちゃん?って、もしかしてだけど、鎖姫だよ?」

「あれ、よくわかったね、王さん。やっぱり鎖でばれるのかな」


王が指差したのは九尾と何やら楽しげに会話をしている私の新しい仲間、藍雪だ。今はあの真っ黒な身体と無数の鎖なんかではないから、一見すると普通の少女に見えるはずなのだ。王にはバレてしまったが。

藍雪は毛先は藍色、頭部の毛は雪のような白で、間はグラデーションになっている、と言う不思議な髪色と目も同じようなグラデーションが起こっている、童顔の普通の少女だ。ただ、服が白装束で手足に鎖が絡んでいるだけの。


「うん、あの鎖はどうしようもなかったの…じゃなくて、何があっただよ?」

「えっとね…」


そうして、私は王に少し前の出来事を話し始めた。




地面に浄化の光の魔法陣を貼り、その真ん中に鎖姫を立たせた私は左手で魔法陣維持をしながら右手で名で縛る儀式を進めていた。


「ユキの名を守り、鎖姫の名を滅ぼさん。我が名を授け、その呪いから解き放たん。魂のみの存在となっても、我が元を離れることを許さず、我の傍から離れられぬ存在と固定する」


まあ、色々と条件を足さないといけないから面倒なものなのだが、儀礼だし、必要なことだからしょうがない。ここからはしばらくお決まりの祝詞を述べて、名付ける。


「汝、我に下り永遠の時を共に過ごすことを命ずる。その縛りとして、名を授けよう。代わりに我は、名と共に、愛情を授ける。居場所を授ける。身体を授ける。そして…」

「……?」


本来なら、名と共に気持ちをあげる!とかでいいのだが、私はその程度で主従関係を結ぶのがどうにも嫌いだったので、毎度、約束をしていた。


「…きっと、いつかクウに会わせてあげる」

「……!」


私の約束を聞いてないはずの目が見開いたように見えたのはおそらく気のせいではないだろう。

ここからが、一番難しいのだが、この様子なら成功しそうだ。問題は浄化のタイミング。


「…我が名、藍玉から取り、藍雪と名付ける。我が元へ下れ!」

「……いつまでも、御身の傍に、仕えることを誓う」


鎖姫の承諾の意を聞き終えるよりも早く、私は左手から魔力を流し、浄化の光を発動させた。


「う、うぁぁあああああ!あ、熱い!!熱いぃいい!」

「一時だから大丈夫だよ!早く、その身体を捨てて!霊体になっても私の傍から離れられないから大丈夫だよ!!」

「う…ぐぅぅ!!」


鎖姫改め藍雪の苦しげな声はしばらく続き、身体が完全に浄化されて消え切った頃、傍にその気配を感じた。


「よし、無事に抜けれたみたいだね」

「チョット死んだと思った」

「大丈夫、既に死んでる」


むー、と不満げな声を上げる藍雪を宥めながら私は先ほどの仮初めの身体の元へと向かった。


「ん、弱いかな。後で手直しがいるかもなぁ」


ま、いっか。と思った私は藍雪にこの中に入るように言って、また魔力回復薬を飲んだ。ちなみに、浄化の時に既に九尾や私、グリーンアイズの解呪は済んでいる。


「うひゃ、ふ、服は?」

「ん?ああ、自分で作んないとだよ?」

「え、作ったことないよ、服なんて…」

「…実際にチクチク作るんじゃないよ」


イメージだよ、と針と糸を探し始めたおバカな新しい仲間に教えながら今回だけだよ、と私が服を作ってあげた。

…なぜか白装束になったのだ。ワザとではない。ただ、同じ系統にはしたいな、と思っただけで、他意はない。


「おおー!すごい…ですね?えっと、なんて呼べば?」

「ああ、そんなに気にしなくていいよ。けど、そうだね…みんなは主さんとか、主上とか、飼い主とかで呼んでいるけれど?」

「みんな?…私以外にもいるの?」

「…いるけど……待って、そんな、浮気された妻みたいな顔されても困る」

「そんなぁ…私が初めてだと思ったのに…」

「えっと、私が名付けたのは2人目だよ?あ、けど、ガルムたちも入る?なら、何千人目?」

「そんなに!?」

「ガルムだからね、ガー、ルー、ムー」





「とまあ、そんなやりとりがあって、身体を最適化させたらああなったんだよね」

「ええ…けど、鎖姫は世界消滅されないとなんじゃ…」

「大丈夫だよ。あの子はもう、呪いの力がないからただの無力な女の子になったんだし」

「あ、そっか。今まで強かったのはあの呪いの影響だよ?」

「そうそう。まあ、ただ弱いだけだったら自分の身も守れないから、私から魔法を一つプレゼントしたけれど、問題ないよね」

「うん、一つなら大丈夫でしょう。護身用だよね?」

「えっと、あ、うん、も、もちろんだよ」

「怪しすぎるだよー?!」


王はえー!と騒いでいたが、あの子にあげた魔法はお母さんのお気に入りで、私があまり使わなくて、威力だけはあるものだった。ただ、あげた理由として私よりも上手く使いこなせそう、というのがあるから、護身用だと声を大にしては言えない…。

あげた魔法は悪夢迷宮(ナイトメアラビリンス)。あそこまで夢世界の扱いに長けているのなら、藍雪の方が適任だろう。それ以外はからきしっぽいからあげていないが、あれ一つでも十分だ。


「ところで、王様?そろそろ私は仕事に移るね」

「ああ、おっけーだよ。帰りにまたお城に寄って欲しいだよー。お礼がしたいだよ」

「うん、わかった。王はもう帰るの?」

「うん、仕事から逃げてきてまたまたここに来ただけだっただよ」

「……」


なんだろう、私の周りの王って、みんな仕事から逃げているような…?

じゃーねー!とその大きな羽根でアッサリと飛んで行ってしまった王は放っておいて、未だに視力の回復していなさそうな九尾の元へ向かった。

とりあえず、グリーンアイズ戦は終了となります

あんまりグリーンアイズと戦ってないな…

それはともかく!

次回、セイレーンの王宮でまたなんやかんやして、

やっとガルシア王国に帰ります

ただ、帰ったら…妖狐と呪われた少女を拾った娘と神の母の面会ですよww

と、いう予定なのですが、大変申し訳なくも、先日書かせて頂いた通り、暫くお休みさせて頂きます

話の切れ目までは行きたいので詳しいことはまたその時に

毎度、中途半端でごめんなさい

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