黒猫の夢
“闇”と、“光”が交わる。
最後の日に。
蒼き魔道書の悲嘆にくすんだ瞳が移すのは、
悠然と、美しく、長く、艶やかな黒髪をたなびかせて自身へ向かってくる、1人の魔女。
黒き魔女の顔に浮かぶのは、嘆きか苦しみかーー歓喜か。
その辺りに散る闇よりも暗い瞳には生気が感じられなかった。
「ーーー!」
蒼き魔道書が半ば悲鳴のように名を呼ぶがその表情は冷酷なまま、変わらない。
暗く、俯いた蒼き魔道書は自身の周りに陣を幾つも、幾千も展開する。
「ほんとに、これで………」
静かな高い声が紡ぐのは、
「最後………なんだね…」
少しもそれを望んでいない、別れの言葉。
黒き魔女は少しだけ悲しみに顔をゆがませたあと、ポツリと何かを呟くが、それは誰の耳にも入ることはなかった。
どこからともなく出した、自身の瞳のように黒い剣を緩く構え、蒼き魔道書に向かって戦闘態勢を取る。
2人の顔から零れ落ちた涙が地面に落ちると同時に、
2人の身体がぶつかり合いーー
幾千の魔法陣が、皿を割るような音を立てて
黒い剣が真ん中で綺麗に折れ、何処かで涼やかな音を鳴らして
ーー黒き魔女の身体を、蒼く壮麗な槍が貫いていた。
黒き神子は目を覚ます。
これを、決して忘れることなく。
未来に視たことを現実とするため。
そうとは知らずに努力する。
神ならざる彼女には避けられぬことで、
未来は確実に、決まった道を歩むのだ。




