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いきる、なう  作者: ねこうさぎ
新しい生活
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四日目〜三十日目

ノアが学校に通い出してからの生活は大体パターン化して来ているので、走ってもいいか?

というか、俺はあまり語れないんだ。何せ、このひと月は勉強漬けだったもんだからさ。

まあ、最後の悪あがきってやつだ。全力でやらせてもらった。

さあ、じゃあ、ずっと放置していた異世界人たちの俺の知れる範囲での生活ぶりを語ろうか。

まず、ノアは学校で異常なほどの人気を誇った。

「のあちゃん、どこの国から来たの?」

「猫国だよ」

「ん?どこそれ?」

「最近出来た国なんだ」

「へー。いつ?」

「七年前くらいかな」

「へー、本当に最近なんだねー」

クラスの奴らが天然でよかったと思う。

ノアはいつもクラスの奴らとはこんな感じではぐらかした会話をする。猫語もなしだ。

以前、嘘をつくならもっと最初から真面目な嘘をつけ、と言ったのだが…

「私は嘘が嫌いにゃ。だから、一つも嘘にゃんてついてにゃい!」

「けどお前…お前の国七年前にできたって絶対に嘘だろ」

「嘘じゃにゃいもん!私が王様ににゃったのは七年前だもん」

「お前、そしたら9歳から王様やってる計算になるんだぞ?!」

「その通りですけどにゃにか!?」

そんな言い争いになったので諦めた。

というか、建国からやったとか聞いてねー。

9歳で建国とか、どんな子供だったんだよ。


次ー、アイルと花菜。

この2人は3日ほどで図書館のアイドルになっていた。魔法の使えない2人だから不安は残るが母さんが信号とかを教えてくれたおかげで今のところ何か危険が及んだりはしていない。それに、毎日俺とノアが迎えに行ってるしな。

しかし、あまりいい成果は出ていないようだった。もともと、花菜に発想力をつけさせようということで図書館で読書に励んでいたようだし、そんなに期待はしていなかったそうだ。…まあ、たったひと月で図書館の本の大半(辞書とかは読んでない)を読破したと言うから恐ろしい。あともうちょっと通ったらもういいそうだ。

飯は基本的に四人でとる。なんでも、ルシウスは忙しいのだそうだ。一緒に行った黒猫も帰って来ないのでノアが寂しそうにしていた。そしてアイルが毎朝疲れた顔をしていた。

さっきも言った通り、この間にセンター入試も二次試験もあった。センターでは俺は何とか最低でも取りたかった程度の点数を取ることはできた。それでも、希望通りとはいかず、希望大を変えようかとギリギリまで悩んでいたのが記憶に新しい。

ノアは当たり前のようにセンターを受けていない。当然だ。こっちに残る気はないのだから。学校に来たのはあくまでも情報収集だったようで、以前、学校は情報収集に長けたいいところだと嫌な笑みを浮かべていた。

しかし!なぜか俺よりもこちらの勉強ができる。こっちに来る前に勉強したにゃ、とか以前言ってたが、それにしたってこんなにできる必要はないだろう。この世の中って理不尽だなと少し腹を立てた。


そんなこんながあって、こいつらがここに来てもう一ヶ月になる。


俺の二次試験も無事終わり、あとは合否を待つだけとなったので、今日は学校もサボって、俺は久々に思いっきりケータイゲームを楽しんでいた。

「隆太様、お昼はどうされますか?」

「あ、任せるよ」

「隆太?その答えが1番アイルを困らせるにゃ」

「オムライスでお願いします」

そんな感じでもうすっかり異世界人がいる生活にも慣れたわけで。

アイルもとっくに家のキッチンのどこに何があるのか把握してるし、こちらの料理もかなり覚えてきてて、普通に店で食べるよりも美味くなっていた。

「…あー!思いつかないよぅ!!」

と、隣で本片手にウンウン唸る幼女が一人。

今日は蒼い髪を頭の高いところで纏めている花菜だ。

彼女は封魔の首輪を壊す方法を探っている。

「…隆太ー」

「ん?なんだ?」

「何やってるの?」

「魔道書狩り」

今日は火属性の魔道書の日だった。俺はあんまり火属性持ってないから育てる先はないんだけど…まあ、他のやつにふってもいいしな。

「魔道書狩り?」

「おう。魔道書狩り」

ケータイを覗き込んでくる花菜によく見えるように角度を変えてやりながら俺はゲームを続ける。そう言えば、今火属性限定ガチャがきてるな。

「魔道書…魔道書って、どんなのだっけ?」

花菜がノアと俺に問いかける。

いやいや、俺に聞かれても。

というか、お前らは専門じゃねぇの?

そう思いつつ答えてやる。俺って優しー!

あ、ちなみに、高野はこのひと月何もしてきていない。学校では俺と普通に接してくれるし、花菜には会わせないようにしているし。

まあ、嵐の前の静けさとも言うから、こいつらが帰るまでくらいは気を張っておこうと思うが。

「あれじゃねぇの?それ自体も魔力持ってて、魔法陣とか呪文とか書いてるやつ。なんか、古ぼけた感じの…まあ、俺が取りに行ってんのは合成したらレベルが上がるやつだけど」

「んー、魔道書にゃあ。魔法の教科書にゃよね?陣保存の機能付きのやつもあるにゃ」

「陣保存?なんだそれ?」

「えってにゃ。魔法陣って、いちいち書かにゃいといけにゃいものにゃんだけど、自分に大量の余剰魔力があれば幾つかは身体に保存ができるのにゃ。要するに、書かにゃくても陣を発動できるってことにゃね。それは便利だけど身体に出来る数はすくにゃいにゃ。だから、魔道書に保存をーー」

「それだぁっ!!」

俺とノアの会話を黙って聞いていた花菜が突然テーブルを叩いて大きな声を出す。ノアの今日は見える大きな耳がうるさそうにペタンと伏せていた。

「にゃにがわかったにゃ?」

「ノア!それの使い方をもっと詳しく教えて」

「それ?陣保存?」

「うん!」

いきなり元気を取り戻した花菜に驚きつつもノアは話を続けた。

「陣保存ができる魔道書に陣を書くと消えるのにゃ。今度はそれを発動させようと思ってそれにあった属性の魔力を流す。そうすることで陣が発動するにゃ。けど、これは高いからあんまりアクアちゃんは使う機会がにゃいと思うにゃ」

「けど、それがあれば私でも魔法が使えるよ!!」

「それは無理だと思われますよ?」

珍しく嬉しそうな表情をはっきりと浮かべ顔を紅潮させていた花菜の後ろから水をさすような台詞が聞こえた。

驚いて花菜が振り返るとそこにはお盆に四つオムライスを乗せたアイルの姿があった。

「…む、り?どうして??」

「はい、ちょっとお待ちくださいませ」

悲しげに問いかけた花菜に笑いかけてお盆をテーブルの上においたアイルが懐からチェーンで燕尾服に繋がった懐中時計を取り出す。

「アクア様。これには時読みという魔法が陣保存されています。これは時間を合わせるための魔法で、時計技師が必ず初めにこれの付加(エンチャント)技術を修行する、ありふれた魔法ですが…これを発動させて見てください」

「え…う、うん」

言われて時計を手に取った花菜はぎゅっとそれを握り込んで真剣な顔をしたーーと、思った瞬間にキョトンとした表情になる。

「わかりましたか?アクア様は、陣保存されている物体への魔力導入すら止められています。おそらく、アクア様が出発前に眠っている間に、そういう風に変えられているでしょう。そうでなければ、図書館で変な男たちに絡まれた際の怒りに反応してその神器が発動しているはずです」

「ーーあ。」

そこで、花菜は確かに、という納得したような顔を見せ、同時に顔を曇らせる。

どうしてそこまでするのーー?

俯いて、口の動きだけでそう呟いていた。それを、ノアもアイルも悲痛そうに見詰める。

しばらくしてから、顎に手を添えたアイルが躊躇うように独り言のように呟いた。

「この課題、本当の答えを、果たしてフレイア様はお持ちなのでしょうか?」

「…どういう意味だ?課題?」

俺が問うとアイルは目で花菜に許可を取ってから話し始めた。

「アクア様は母親であるフレイア様にある日いきなり封魔の首輪をつけられました。表向き、それはアクア様に魔法以外での戦う技術をつけさせるためにも見えましたが、それなら既に槍術を習得されていましたし、武器なしなら白愛様がカバーなさったでしょう。なら、何かあるはずだと考えた私たちは先日、これは封魔の首輪を自分で破壊する、もしくは筈すということが最終目標の課題ではと結論づけました」

「おそらく、その判断自体は間違ってにゃいにゃ。フレイアちゃんは本気でそんにゃことをしそうな人だし、彼女自身にはとてもできることじゃにゃいし。けれど、方法を見つけたから、自分じゃできにゃいからアクアちゃんにやらせるって言うにゃらわかるが…もしかしたら、本人もまだ見つけていにゃいのかと思うと…」

あとを引き継いだノアの説明も聞き終えた俺は気づかぬ間に拳を爪が食い込むほどに握りしめていた。

「そんな課題、無謀だろう…花菜の戦力はガタ落ちなんだろ?何かあったらどうするつもりなんだ、その人は…」

以前に花菜は何か大きなことに巻き込まれてる、というか、中心にいると聞いた。その時に花菜を守って親友2人が死んだことも。死人が出るほどの何かの渦中にいる彼女の力を奪うことは自己防衛の方法を奪うということは、彼女をわざと危険に晒そうというのと同じではないだろうか。そんなことを、母親がしていいのか。

「私がダメになって、1番困るのはお母さんだよ」

ポツリ、と花菜はそうこぼした。自然と俺たちの視線が花菜に集まる。

「代わりはいくらでも作れる…わけじゃないと思う。私を逃せば、次は何千年かかるか…いや、もう2度と、同じ女神が2人なんてイレギュラーなことは起こらないかもしれない。最悪は私を人形にして使役することだけど、自己意識で動いているわけじゃないものはどうしても行動がパターン化する。それじゃあ、お母さんの求める強さにはなり得ない」

「アクアちゃん?にゃにが言いたいの?」

花菜の独白は花菜自身しか知らない情報が多分に入っているようで、あまり多くを聞かされていない俺はもとより、ノアたちでもよくわからなかったようだ。

しかし、半ば無意識で話す花菜はそれには答えず、話し続ける。まるで、自身の頭の中を1度吐き出して整理するように。

「あの人が望むのは完璧に自身と同じ戦力を保有した自分。それは魔力だけ持っていても意味がない。経験的な意味で言えば確実に埋められない穴を埋める何かが必要なんだ。けれど、お母さんにできないことなんて早々ないし…近接戦闘で、槍術で埋められるほど小さな穴でもない。近接戦闘以外であの人ができないこと、が封魔の首輪を破壊すること、かな…」

ツラツラと続く独白を聞いていたノアとアイルが共に思案顔で黙り込む。俺は思考を邪魔しないように静かにしておくしかなかった。

「あの人は封魔の首輪にトラウマがある。自分自身では絶対に何があってもつけたがらない。それに…一千年の間に思いつくことができなかったんだ。だから、私とお母さんの穴を埋めるモノとして封魔の首輪破壊を選んだ。最悪は自分が私を守れる位置について」

何かスッキリした顔でそういった花菜は最後に悲しげに呟いた。

「これらがあっているのなら、この課題には答えがないということになる…」

それを聞いていたノアがごめんね、と断ってから質問をした。

「もし、関係にゃかったら悪いんにゃけど…フレイアちゃんは、どれくらいの縛りのある封魔の首輪だったの?そんにゃにキツイ縛りの封魔は初めて見るにゃよ?」

封魔にも何段階かあるんだな、と俺は思いはしたが口には出さず黙って成り行きを見ていた。

「お母さんは、魔力を外に逃がしてそっちで魔法を使うこと自体は可能だったみたいだよ。封魔の首輪をつけられた時に可能な限り抵抗(レジスト)してその術式を壊していたからわりと自由ではあったみたい。まあ、かけた巨人たちが自分たちに攻撃をかけられない程度でいいやってしてたのが幸いしたんだね。自分の身体では魔法を使えないから、1度意識だけは離して、それも自分の身体から離れるほどに使える魔法も増える…?」

「?どうしたの?」

なぜか途中で話すのをやめてしまった花菜にノアが首を傾げる。

けど、やばい。俺、なんかわかったかも。

この場合の課題の答えが。

走っちゃてごめんなさい

あと、今回と次回で

あれ?前に書いてた説明と違うくない?

ってなる部分があるかもですが、スルーしてください

作者もがんばって探します

決定的にズレている部分は教えてください

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