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誕生日には歌を  作者: 風花てい(koharu)
19/86

3人の偽物 3


 要が貴子に連れられて茅蜩館にやってきたのは、彼が5歳の時だった。


 それまでの彼は、孤児院に預けられていた。そこは、ホテルから大人の足で歩いて30分ほどの所に、今もある。預けられたのは、3歳の時だ。両親の顔は、もう覚えていない。  

 しかしながら、別れる寸前まで父親が自分の傍で暮らしていたことは、彼の記憶に残っている。そして、その父親が茅蜩館ホテルのオーナーではないことも知っている。なぜならば、要は、生前の恵庭久志オーナーをよく知っているからだ。


 要が預けられた孤児院は、変人だが篤志家としても知られていた故桐生喬久――すなわち橘乃の腹違いの兄の祖父が、その設立に深く関わっていた。その関係で、桐生と近しい関係にあった茅蜩館ホテルもまた、使用されなくなった備品の寄付や孤児達の就業支援などで孤児院の運営に協力しており、当時のホテルのオーナーであった恵庭久志自ら、しばしば孤児院を慰問に訪れていた。

 要が久志と最初に言葉を交わしたのは、孤児院に来てから日も浅い頃だった。自分を捨てた父親が別れた直後から要のそばをウロチョロしていたら、いくら要が幼くても気がつく。だから、久志は、要の実父ではない。それだけは、彼と久志の名誉にかけて断言できる。


 しかしながら、実の父親でなくても、要は、孤児院にいた他のどの子供よりも久志に可愛がってもらった。理由は、他の子供たちよりも幾分クセの強い、要の髪のせいだった。


 □ ■ □ ■ □



「君かな~? くせっ毛だからって理由だけで、みんなに苛められている要くんって子は」


 孤児院に入って2か月ほど経った頃だった。要は、久志と一緒に孤児院を訪ねてきた若い女性に、いきなり背後から抱き上げられた。


「うふふ。 可愛い子」 

 突然のことに面喰っている要に、女性が頬を摺り寄せる。随分と人懐っこい人であるらしい。しかも、子供の目から見ても、とても綺麗な人だった。だが、彼女の顔以上に、その時の要は、彼女の真っ直ぐで艶やかな黒髪に目を奪われていた。たぶん、彼は、その髪が羨ましかったのだろう。妬ましいとさえ思っていたかもしれない。

 あの頃の要は、自分の真っ直ぐでない髪が、つくづく嫌いになっていた。他の孤児たちは、この髪を理由にして要を仲間外れにした。大人に見えないところで、暴力をふるわれたこともあった。でも、なによりも悲しかったのは、『そんな髪をしているから、お前の父ちゃんと母ちゃんは、お前を捨てたんだ』と決めつけられたことだった。要がムキになって『違う』と言い返せば、子供たちは、余計に面白がって彼を囃し立てた。


「でも、それほどクリックリッでもないわよね?」

 女性が、隣にやってきた男性と同じ目線になるように、要を更に持ち上げる。その男性が久志だった。驚いたことに、彼の髪も要と同じ程度に『クリックリ』だった。


「そうだね」

 あごに手を当てながら久志が要に遠慮のない視線を向ける。久志は、穏やかな物腰と普通に低く感じる声よりも尚低く響く声の持ち主だった。それらが、彼に年齢以上の貫禄と落ち着きを与えている一方で、彼の落ち着きのない髪は、老成しすぎた感のある彼の外見に少年っぽいニュアンスや親しみやすい印象を与えていた。全体としてみれば、久志の年齢は見た目どおり――つまり、いなくなってしまった父親と同じか少し上の30歳半ばから後半といったところ。ついでに言えば、久志はクセ毛のことで思い悩んだりはしていないようで、要に向けられた彼の微笑みには、なんの陰りもなかった。

 

「むしろ、僕のほうがクセが強いぐらいだろうね。それなのに、この仕打ちは酷いんじゃないかな?」

 要の顔や腕に残るすり傷や痣を調べながら、久志が、彼が持ってきた菓子を目当てに集まってきた子供たちに責めるような視線を向けた。


 しかしながら、穏やかそうな風貌の久志に睨まれても、彼らは、恥じ入る素振りさえみせずに、はぐらかすような笑みを浮かべているだけだった。「そいつが、勝手に転んだんだ」と嘘をつく者や、横を向いてわざとらしく口笛を吹く者さえいた。

 要をいじめる子供たちもまた、孤児だという理由だけで世間からの風当たりの強さを感じている。自分たちよりも小さくて力のない者に当たるのは、やり場のない怒りを自分たちの中だけでは消化しきれないせいでもあろう。そのことは、久志もわかっていただろうと思う。だけども、彼は、子供たちの境遇に同情して彼らを甘やかすようなことはしなかった。


「いじめられて悲しかったね。よく我慢できた。だから、ご褒美だ。あの子たちの分も、全部君にあげる」

 そう言いながら、久志が要の両手の上に紙ナプキンに包まれた菓子を積み上げた。それを見た他の子供たちが、面白いわけがない。彼らは、顔色を変えて抗議を始めた。


「ずるいっ! ひとりに1個だろっ!」

「えこひいきだっ! 差別だ」


「先に差別をしたのは、君たちのほうだ」


 子供たちに、久志がピシャリと言い返した。「だから、僕は、差別されているこの子を、徹底的に君たちと差別することにしただけだよ」

 だが、そんなことを言われても、子供たちが納得するわけがない。久志の周囲は、『ずるい、ずるい』の大合唱となった。しかしながら、彼は、自分の行いを謝るどころか、しれっとした顔で彼らの抗議を無視した。居たたまれない気持ちになったのは、要だった。


「あの……僕……」

 もらい過ぎてしまった菓子を返そうと、要が、おずおずと声を出した矢先だった。


「お黙んなさいよっ!」

 要を抱き上げていた女性が、近くにあった木の椅子を蹴り飛ばすなり、大声を上げた。椅子が床にぶつかる大きな音と女性の怒鳴り声に、子供たちが顔を引きつらせた。


「『ずるい』っていうのはねぇ」

 要を床に下ろしたついでに倒した椅子を起こしながら、女性が口を真一文字に結んだ状態で固まっている子供たちを睨みつける。「やるべきことやってる奴だけが言ってもいい言葉なの。『みんな仲良く』っていう、この孤児院のたったひとつのルールさえ守れない奴らが、エラそうにほざいてるんじゃないわよっ!」

 怒鳴ると同時に、女性は、床に叩きつけるようにして椅子を置いた。その音と彼女の剣幕に、一同が更に縮み上がる。女性の一番近くにいた要も、その例外ではなかった。今にも泣き出しそうな顔をしている要に気が付いた久志が、「ボタン。そのへんでやめておこうか? 要くんが怯えてるよ」と、苦笑混じりに女性をたしなめた。


「はあい。ごめんなさい」

 久志に注意された女性が、態度を一変させた。その変わり様にも驚いて、ますます目を丸くする要に、女性が「恐がらせちゃって、ごめんね」と小首を傾げながら笑った。

 要は、ぶんぶんと首を振った。驚いたけれども恐くはなかった。彼は、女性の袖を引くと「『ボタン』っていうの?」とたずねた。

「そうよ。 変な名前でしょう? しかもカタカナよ! カ・タ・カ・ナ! ありえないと思わない? 親のネーミングのセンスを疑うわ!」

 この名前のせいで、自分も何度も嫌な思いをしたのだと、笑いながらボタンが打ち明けた。 

「もう慣れちゃったけどね。それに、悪いことばかりでもないわよ。変な名前だから、みんなに覚えてもらえる。要くんの、この髪も、ね?」

「うん」

 ボタンに髪をくしゃくしゃと撫でられながら、要は笑った。 

 要が笑顔を見せたことにホッとしたように久志も微笑んだ。その微笑みに勇気を得て、要は久志に近づいた。そして、菓子の包みでいっぱいになったままの両手を彼に突き出した。


「僕、こんなにいらない」

「遠慮しなくていいんだよ」

「ううん」

 久志の優しい笑顔に誘惑されることなく、要は、しっかりと首を横に振った。「いっぱいは嬉しいけど、1個がいいんだ。きっと、そのほうが美味しいから」

 

 少なくとも、孤児院に入る前の要は、みんなで分けたほうが、ずっと嬉しかった。食べる物にも着る物にも寝る所にも常に事欠いていたが、両親も姉も、いつだって少ない中から要の分を取り分けてくれた。要はそれが嬉しかったし、そんなふうに大事にしてもらっていたから、仲間の孤児たちの『両親に嫌われていたから、お前は捨てられたのだ』という言葉よりも、院長先生の『ご両親は、君が大好きだったからこそ、ここに預けていかれたのだよ。本当に君が嫌いだったら、どこでもいいから、そのへんにポイっと捨てちゃっただろうよ』という言葉を信じることができた。

 どうしてだかはわからないけれども、ここで自分が菓子を独り占めしてしまったら、要が一生懸命信じようとしていることが壊れてしまうような気がした。

 ……なとどいうややこしい説明を3歳の子供ができるはずがない。


「だから…… その…… えーと……」

 菓子の包みを両手に乗せたまま、要がしどろもどろになっていると、腕を組んだ久志が、「なるほど」と勝手に納得してくれた。

「君は、『1個でいい』じゃなくて、『1個がいい』んだね?」

 膝をつき、要と視線を合わせて久志が問う。

「そのほうが、ずっと美味しいと思うんだね?」

「うん」

 要は、大きくうなずいた。

「気に入った」

 久志は、要の肩をポンと叩いて立ち上がると、孤児院の院長を振り返った。


「院長先生。この子を、うちにスカウトしてもいいですか?」

「なんですか、やぶから棒に」

 院長が笑う。だが、すぐに気安い態度を改めると、「大変ありがたいお話です。ですが、そういうお話は、要くんがもう少し大きくなってから、本人と相談して決めたほうがいいと思いますよ」と久志に答えた。

「そうですね。この子であれば、この先、うちよりも、もっといい条件で育ててくださる人が現れるかもしれませんね。では、予約ってことでお願いします」

「まあ、予約ぐらいなら、承りましょう」

「あの……?」

「なんでもない。まだね」

 『すかうと』ってなんだろうと思いながら戸惑い気味に見上げる要に、久志が微笑む。「お菓子は君にあげたんだ。だから、君の好きにしていいよ。みんなで食べたかったら、君がみんなに配ってもいい。ただし」

 歓声を上げる他の孤児たちに、久志がすかさず釘を差す。「以後、この子に危害を加えることは、同じクセっ毛仲間の僕が許さないということを、肝に銘じておきたまえ」

 

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 久志を敵に回すと菓子を貰えなくなるからなのか、あるいは、いつも久志と一緒にいるボタンを怒らせるのが怖いのか、それ以降、要が髪のことでからかわれることはなくなった。

 

 久志とボタンは、ふた月に一度ぐらいの割合で、孤児院を慰問した。


「ちょっと見ないうちに、要は、どんどん大きくなるなあ」

 ふたりを見つけるなり喜び勇んで駆け寄ってくる要を抱き上げる度に、久志は驚いていた。ふたりが孤児院にいる間中、要は彼らにまとわりついた。ちょっとした手伝いを頼まれれば、それこそ有頂天になって手伝った。ふたりから特別扱いされる要をやっかんで嫌がらせをする者もいたが、そんなことが些細な事に思われるぐらい、要はふたりが好きだった。


「そうやっていると、本当の親子みたいね」

 彼らの訪問が10回を数えた頃、ボタンが、仲の良い久志と要をからかった。

「じゃあ、ボタンは、お母さんかな」

 明後日の方角を向きながら、さりげない口調で久志が言った。すると、ボタンは急に顔を曇らせて、「冗談でも、そんなこと言うもんじゃないわ」と、怒ったような口調で呟いた。


「ボタンお姉ちゃん。嫌だった? ごめんね」

 久志に抱っこされたまま、要は、顔を背けてしまったボタンの艶やかな黒髪に手を伸ばした。ここに来て一年も経てば、小さい要でさえも、世間には孤児という存在をひどく厄介に思っている人たちがいることがわかってくる。ボタンも、久志の手前仲良くしてくれるが、本当は、要のような孤児とかかわるのが嫌なのかもしれない。  


「馬鹿ね。違うわよ。私が要が嫌うわけがないじゃない」

 沈んだ顔の要を見て、ボタンが慌てた。

「そうだよ。ボタンは、要のことが大好きだよ」

 久志が、落ち込む要の顔を上げさせるように彼の額に自分の額を押し付けて笑った。「ボタンが嫌なのは、僕だよ。そうだよなあ。若くて美しい君が、僕みたいなオジサンとセットにされるのは嫌だよな」

「そんなことないよ。僕、総支配人はかっこいいと思う。やっぱり僕のせいだよ」

 ぼやく久志を、今度は要が必死になって元気づけようとする。互いに互いを思いやる要と久志に向かって、「だから、どっちのせいでもないんだってば!」と、焦れたようにボタンが叫んだ。


「私のほうが、ふたりにとってダメなの!」

「なんで?」

 要は、首を傾げた。ボタンは、とても綺麗で気さくで、そして優しかった。要が彼女の息子になるかどうかは別にしても、こんな素敵な人が母親ならば、その子供はきっと幸せに違いない。それなのに、どうして、ボタンは自分から自分を「ダメ」だというのだろう?

 

 要だけではない。いつもは何でも知っている久志も、ボタンの言っていることがわからないようだった。彼はひどく優しい口調で、「僕は、ダメだと思わない」と、彼は、ボタンに向かって首を振った。だが、優しい彼の態度は余計にボタンを苛立たせてしまったようだった。否。怒らせたというより、あの時の彼女は、ひどく怯えているようにみえた。


「ふざけないで」

 首を振りながらボタンが後ずさる。「茅蜩館の主のくせに、なに言っちゃってんのよ? この間も言ったけど、あたしみたいな女は、あなたには絶対に相応しくないの。あたし、パンパンだったのよ?」

「『ぱんぱん』?」

「わからなくてもいい言葉だよ」

 ボタンを見つめたまま、久志が要に教えてくれた。「君の過去など、僕は気にしない。母だって、そうだ。貴子だって……」

「でも、それ以外の人は、みんな気にするの! 私だって、誰よりも気にするわ!」

 彼の言葉を全身で拒否するように、ボタンが、硬く目を閉じながら叫んだ。「私のせいで、あなたが恥をかく! 散々世話になった女将さんや貴子さんが悪く言われる! そんなのは絶対に嫌よ! あたしは、みんなに良くしてもらったの。救ってもらったの。それなのに迷惑なんかかけられない。遊びだったらまだしも……」

「遊びなんかじゃない。本気だ」

「本気なら、尚さら問題だわ! ああ! もうっ! この話はお終い! あたし、先に帰る!」

 こちらを振り返ることなく、ボタンが駆け出した。長くてまっすぐな彼女の髪のひと房が、要の鼻先をすり抜けていく。


「……。怒らせてしまった……」

 逃げていくボタンを目で追いながら、久志がため息をついた。

「ねえ、追っかけようよ」

 立ち尽くす久志を、要は体を揺らしてうながした。当時の要は、自分がプロポーズの現場に居合わせたことに、気がついていなかった。それでも、とても重要な会話が自分の目の前で繰り広げられていたことぐらいの察しはついた。このままボタンを放っておいてはいけないことも、なんとなくだけども、要にもわかった。


 だが、久志は、「今、追いかけたら、彼女を追いつめるだけだろうから」と言うだけで、その場から動こうとしなかった。

「あんなことを言ったら、ボタンを困らせるだろうことは、僕にもわかっていたんだ。だけど、このままっていうのも、よくないと思うんだよ」

 子供に理解してもらえるとは思っていなかっただろうが、久志が大真面目な顔で要に訴えた。要は要で、久志に何を言われているのか全く理解していなかったが、生真面目な顔でうなずき返した。


「ダシにつかって、ごめんな」

 謝る久志に、要は無言で首を振った。『ダシに使う』という言葉の意味さえ彼は知らなかったが、自分がふたりにしてあげられることなら、どんな使い方をされても彼は文句を言う気はなかった。 


「総支配人。ボタンと仲直り、できる?」

「するよ。必ずね」

 不安を募らせる要に、久志が断言した。


「総支配人は、ボタンが大好きだからね。嫌われたままじゃ、悲しすぎる。絶対に仲直りするから、要は心配しなくてもいいよ」


 久志の言葉通り、その後ふたりは仲直りしてくれたようだった。それからひと月ほど経った頃の夕方、ボタンが独りで要に謝りにきた。 


「この間は、ごめんね」

 孤児院の敷地内に入ることなく、垣根越しにボタンが要の頭を撫でた。

「総支配人と、仲直りした? もう喧嘩しない?」

「始めっから、喧嘩なんかしてないわ」

 心配する要に、ボタンが弱々しい笑顔を浮かべながら、首を振った。

「本当? 総支配人のこと、嫌いじゃない? 好き?」

「なんで、私が、あの人のことを嫌うのよ? 大好きよ。好きすぎて困っているくらい。そんな質問、訊くだけ野暮ってものだわ」

 ボタンが要の頬を突っついた。

「全部、私が悪いの。『一度でいい。想いが通じさえすれば、後は死んだってかまわない』って思いつめた結果がこれよ。どこまで馬鹿なんだか……」

「ボタンお姉ちゃん?」

「なんでもない」

 ボタンは、はぐらかすように微笑むと、要の頭を撫でた。


「元気で大きくなるのよ。それで、いつか立派なホテルマンになって、総支配人を支えてあげて」

「ホテル?」

「そう。茅蜩館ホテル。お城みたいに素敵なところなんだから」

 『だから、約束ね。いつか茅蜩館においでね』と、立てた小指を差し出すボタンに、要は微かな不安を覚えた。というのも、これと似た状況を、要は、一年半ほど前に経験していたからだ。

 あの時。『すぐ戻ってくるから』と言っていたはずの両親は、『元気でね。大きくなるんだよ。約束だよ』と彼に指切りさせて、それきり戻ってこなかった。


「ボタンお姉ちゃん。また、来るよね?」

「もちろん」

 不安を顔に滲ませる要に、ボタンがふわりと微笑む。

「総支配人と?」

「ええ」

「約束だよ。絶対だよ」

「うん。約束。絶対ね」

 何度も念を押す要に、ボタンが何度もうなずく。

 

 それだけ約束したにもかかわらず、ボタンは、それきり要の前に現れなかった。ボタンだけではない。総支配人こと恵庭久志も、要を訪ねてこなくなった。およそふた月間隔での久志の訪問が予告なく途切れてから3月ほどが過ぎた頃、後に要の戸籍上の母親となる梅宮貴子が訪ねてきた。 




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