1話 幸太の大きな一歩
これは、ある少年の純粋で甘く切ない恋を描いた物語。
一条幸太は中学の頃から男性恐怖症になり不登校だった。
その原因は、中学2年生のときに母が再婚した義理の父から受けた暴力だ。
母は泣きながら止めようとしたが、女が男の力に勝てるはずもなく、母は呆気なく振り払われた。
幸太はただ痛みに耐えるしかなかった。
幸太と母は父からの暴力に2年耐えたが、ついに母は我慢できなくなり離婚して幸太だけを連れて家を出た。
辿り着いたのは、周りには立派な家が建つ住宅街の中、場違いな一件のボロいアパートだった。
幸太はトラウマのせいで高校には行けなかった。
そして、母と2人での生活はお世辞にも裕福とは言えなかった。
幸太は長い間、母の笑った顔を見ていなかった。
幸太は思った。「お金があればまた母の笑った顔が見えるはずだ」と。
こうして幸太は働きに出ることを決意した。
色々な求人雑誌を血眼になりながら見漁った。
そして1つの求人募集のチラシが幸太の目に止まった。
それは建設業のアルバイトだった。
体力仕事ということもあってか、高時給だった。
幸太はこれしかないと思いすぐにその会社に電話をかけた。
プップップップルルルルル...
相手が電話に出るのを待つ間、幸太の心臓はうるさかった。
「お電話ありがとうございます。蒼葉建設です」
電話に出たのは太く低い声の男性だった。幸太は自身のトラウマを押し殺し、唾を飲んで続けた。
「あの......求人募集を拝見しまして、応募させていただきたくお電話いたしました」
「そーですか!ありがとうございます!いやぁ〜中々働き手が見つからなくてね。人手が足りないから困ってたんですよ。うちはすぐにでも働いてほしいんですが、どうです?」
幸太は手に汗握りながら、震える声で答えた。
「はい....ぜひ、働かせていただきたいです」
「では、明日の朝8時に蒼葉建設までお越しください。 場所は求人募集のチラシの右下に載ってますので。お待ちしております」
「明日の朝8時に蒼葉建設、ですね。かしこまりました。よろしくお願いいたします。」
ツー...
電話を切った幸太は喜んだ。
母の笑顔を見れる日が近づいたからだ。
幸太はすぐに母に報告したが、母はトラウマの事を心配していた。
幸太は照れながら小さい声で言った「お母さんの笑顔を見たいから」
母は泣いていた。
幸太は明日に備えて、いつもより早く布団に入り目を瞑った
トラウマと向き合いながら大きな一歩を踏み出した幸太。
そして見つけた職場、蒼葉建設。
その場所が、これからの彼の人生を大きく変えるとは、まだこの時の幸太は夢にも思っていなかった。




