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辺境の魔王アルト~世界で一番小さな国が、世界で一番強かった~  作者: 雪野湯
第一章 民の狂奔、王の知性――帝国への剣

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第7話 時間と後悔と

――――北の砦


 

 闇に浮かぶ壁。

 黒装束を纏う私とイロハはその壁を背にした。

「見張りの目に見つからず、ここまでこれたな」

「はい。ハルピュイアからの情報によりますと、深夜の見張りはザルという話でしたし」

「この三百年、敵が来るなど一度たりともなかったからな。さて、後は……」


 壁を見上げる。あまり手入れされていないようで、かつては堅牢だった城壁が風化して、あちらこちらがほころび、凹凸が生まれている。

「壁のくぼみやでっぱりに手足を掛ければ、簡単に登れそうだな」

「そうですね。ですが、風化していますので崩れる危険性を考慮に入れておいてください」

「もちろんだ。それでは早速登りたいところだが……」



 私は壁越しに砦の中を透過するように睨みつけた。イロハも同じように壁を睨みつける。

「ここまで近づいてようやく感じることができた。かなりの強者が砦にいるぞ」

「はい、兵士も想定以上の数かと。ジャミング魔石の影響で正確な数はわかりかねますが、おそらく最低でも五百はいるかと」

「五百か……しかもそれは最低値……」

「どうします? 作戦は中止しますか?」

「……いや、進めよう」


「想定外の事態。作戦の強行は最悪を招きますよ」


「わかっているが、こちらには時間がない。夏の終わりまでに、山道の確保と同盟を結ばなければルミナは滅びる。数日のズレが作戦どころかルミナの破綻を招きかねない……もっと早く、私が決断していれば余裕を持てていたのにな」


 無意識に拳を握りしめ、初めから諦めていた己の愚かさと悔しさが滲む音がギリギリと鳴る。

 その音へ、イロハは厳しくも私を思う言葉をかけてくる。

「アルト様、過ぎ去った時間を悔いても意味がありません。後悔は捨て、過去から学び、未来に生かすことを心に留め置くべきです」


「……ああ、その通りだ、気持ちを切り替えよう……内部のこの静けさ。こちらの動きは気づかれていないと見るべきか?」


 イロハは目を大きく開き、壁の向こう、内部の動きを探る。

「……ジャミング魔石の影響により、私の探知能力が低下。探知可能な範囲での兵士の位置取りや動きから、読まれていない可能性は78%。一部、高位の位置に奇妙な塊があって、それが懸念材料として浮上しています」

「塊?」

「申し訳ありません。よくわかんないんです」


「そうか。イロハでもわからないとなるとお手上げだな……だが、およそ八割の確率で気取られていないわけか」

「反面、二割の確率で気取られているかもです。これは作戦決行の大きな懸念で、通常であれば中止を具申します。ですが……」

「時間が、な……後悔は捨てたいところだが、どうしても過去からついてくる。その後悔だが……」



 私はブルックたちが潜んでいるであろう漆黒の草原を睨みつけた。

「ここらではもう、音や光でブルックたちに状況を伝えることができない。見張りに気づかれる可能性があるからな。はぁ、こんなことならエルフの一人を連れて来ればよかった」

「見張りに見つからぬ可能性を考慮すると、連れてくる選択肢は乏しいです。それに、連れていたとしてもジャミング魔石の影響で魔導通信は不可能でしょう」


「そうか……やはり、急遽決めた作戦ではあちらこちらに穴があるのは否めないな。君の言うとおり、取りやめこそが正解だろうが……しかし、時間の槍が背中をつつく――――行こう、元より無謀な(いくさ)。今は己の覚悟と信念を信じよう」

「了解です、アルト様」

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