第26話 迫る執念
――――一方、山道の橋の近くでは……。
ガターの腹心だったギドラは、トラップの撤去作業中のドワーフに声をかけた。
「忙しいところ申し訳ない、尋ねたいことがあるのだが?」
「おっ、あんた誰でぇ? ルミナの者じゃあなさそうだな 」
「……旅の者だ」
「かぁ~っ、このご時世に旅なんざ、なかなか気合い入ったあんちゃんじゃねぇか! なぁ、エルフの字、そう思わねぇかよ!」
「ああ、アタイもそう思うぜ! この周辺には強力な魔物がいるんだけどよ、大丈夫なのかよ?」
二人の奇妙な勢いにギドラは気圧されながらも言葉を返す。
「あ、ああ、まぁな。ここに来る途中、何匹か倒してきたからな」
「お、やるじゃん。さすがは一人旅をしようって気合の入った漢だぜ! で、ここに何の用なのさ? 魔族のようだけど、ここから先は人間の統治領域・カイリ国だぜ」
「俺……私はルミナの思想に感銘を受けてな。アルト国王陛下にお会いはできないだろうが、それでも一目見たいと思い……だが、町で不在と聞き、その町の住人からカイリへ向かったと教えてもらった」
「おいおい、それで追いかけてきたのかよ! どんだけファンなんだ!? へへ、でも、アタイらの王様が慕われてるってのは良い気分だな。なぁ、大将!」
「ああ、そうだな。旅のあんちゃんよ、アルト様ならついさっきこの橋ぁ渡っていきなすったばかりだ。走りゃあ、すぐ追いつけると思うぜ」
「……そうか、礼を言う」
ギドラは深々と頭を下げて、最大級の礼を取り、橋へ向かう。
ドワーフとエルフを背後において、彼はこう思う。
(実に変わったドワーフにエルフだ。それに町の住民もそうだったが、警戒心もなくこうも易々と俺の言葉を信じ、王の居場所まで教えてくれるとは……敵ながら、不安になる連中だ。しかし――――)
彼は周りで作業を行う人夫たちを見やる。
(皆、嬉々として作業を行っている。先ほどのドワーフたちと言い、民から慕われているのだな、アルトという男は……)
ここで彼は――拳を壊さんばかりの勢いで固く握りしめた。
(だが――ガター様の仇であることには変わらない!! アルト、貴様がどのような人物であろうと許せるはずがない!!)
――――ギドラを見送るドワーフとエルフ
エルフの女性がドワーフに尋ねる。
「今の兄さん、帝国からの刺客とかじゃねぇのか? 隠しているようで、わずかに殺気が漏れてたし」
「かもしれねぇがよ、相手はあのアルト様だ。心配なんざいらねぇだろうよ。だいたい、うちの王様がこの程度でくたばるタマじゃねぇってんだ」
「へへ、確かにな。それに、ここまで来たってことは、ブルックの旦那も承知の上で放置したんだろうしな」
「まったくよ、あの御仁はよ。ここぞとばかりにアルト様に試練でも与えてるつもりなんだろうぜ」
「ブルック様はそういうところあんからなぁ」
「もっとも、万が一、気ぃ抜いたってよ、イロハちゃんがついてんだから心配いらねぇってもんよ」
「だなっ。ともかく、民間人の大将や、一兵卒のアタイが口をはさむような話じゃねぇか」
そう言って、エルフの女性は撤去作業を行っている作業員たちを見上げた。
そこであることを思いつく。
「そうだ、大将。トラップをあのまま処分するのはもったいねぇよな」
「そいつぁ、仕方ねぇさ」
「仕方なくはねぇかもよ」
エルフの女性はにやりと不敵な笑みを浮かべて、続きをこう言った。
「なぁ、大将。爆弾を改良して、花火にしてみねぇか? 魔石の粒をポポイっと火薬に練り込めば、派手さはないが綺麗な色で弾けるだろ?」
「花火? 急造でうまく弾ける保証はねぇが、何とかできるかもしれねぇな。しかしよ、エルフの字。一体、何しようってんだ?」
エルフの女性はどや顔で、カイリ国へ向かっているアルトたちの姿を追う。
「へへ、花火をドーンとぶち上げて、アルト様の武運を祈ろうじゃねぇか」




