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Argo - Dive into Firewall -  作者: alphadex
残響と再誕
8/8

凍土

 刑務所内は、思想や信念が意味をなさない世界だった。


 「おい、天才。パスワードでもあててみろや」


 昼休憩のたびに、沙介は取り囲まれた。

 監視カメラの死角で、冷たい水をかけられ、便器洗いを押しつけられた。

 看守も目を逸らした。社会の“英雄崩し”を、どこか楽しんでいた。


 「人間は、正義を求めてるんじゃない。ただ、“罰”を楽しんでるだけだ」


 彼は、毎晩石のような布団の上で、自分の書いたコードのことを思い出していた。

 そして、自問する。


 あの行が、あの改行が、誰かを守っていたかもしれない。

   それとも──傷つけていたのか?

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