冬 4-16
串刺しにされた衝撃で、オレの体はうつ伏せに倒れ込んだ。
肺が押し潰される。
心臓がひしゃげる。
何かが裂け、何かが崩れ、何かがオレからこぼれ落ちていく。
刀が背から抜ける。ゆっくりと、まるで引き裂かれるように。微細な振動が肉の内側に響き、刃が体の奥から抜ける感覚が生々しく残る。そこから溢れ出す血が、コンクリートの床に冷たく広がっていった。
オレの体はもう動かない。
指先すら、思うように動かせない。
ただ、瞳だけがぎりぎりの意識を繋ぎ止め、必死に目の前の光景を焼き付けようとする。
そこに立つのは、黒髪が流れるように腰まで伸びたセーラー服の女。白磁のような肌。夜よりも深い瞳。そこに宿る感情は、ゼロだ。
こいつが——藤原雪。
直感で悟る。オレたちが待ち続けた存在。追い求め、焦がれ、そしてその手にかかることを宿命づけられた、魔法少女。
「やっと……会えたなァ……ふじわら……雪ぃ……!」
血の泡を噛み潰しながら、オレは声を絞り出す。体の奥底に沈んでいくような感覚の中で、指をわずかに動かし、床を這う。広がる血の中で、指先がじわりと冷えていく。
それでも、この感情だけは消えない。
憎しみと、渇望。
その白い肌を引き裂いて、果実のように赤い肉をむき出しにしたい。
「……オレたち、かいじんが……どれだけお前に焦がれているか、分かるかァ……!」
言葉が、呼気とともに零れ落ちる。意識が遠のく。けれど、消えない。
藤原雪は何も言わない。
ただ、静かにオレを見下ろす。
冷たい瞳がわずかに揺らいだ気がした。しかし、それは憐れみではない。怒りでも、迷いでもない。ただ、圧倒的な支配者の眼だった。
その沈黙が、逆にオレの心臓を握り潰すように、じわじわと迫る。
血の臭いが鼻腔を満たし、世界がぐにゃりと歪んでいく。視界が闇に沈む。
それでも、オレの意識の最後に残ったのは、雪の瞳だった。
どこまでも深く、どこまでも冷たく、どこまでも、どこまでも、消えないまま——。




