冬 4-5
ミツキは息を切らしながら教室の扉を押し開いた。
——その瞬間、目の前の光景に息を呑んだ。
窓ガラスは粉々に砕け、床には細かい破片が散乱している。壁際の棚は倒れ、床に散らばった教科書やノートは無惨に破れ、めくれ上がっていた。
しかし、それ以上に異様なのは、教室の中央——机と椅子の無残な有様だった。
4人分の机と椅子が、何か強大な衝撃を受けたかのようにひしゃげ、無造作に倒れている。足の部分はねじれ、天板には不気味な亀裂が走っていた。まるで、内側から何かが爆発したかのように。
ミツキの心臓が早鐘を打つ。
「な、なにこれ……」
教卓も無事ではなかった。重い木製の天板には大きな凹みがあり、まるで怪物が拳で叩き潰したような跡が残っている。だが、そんな惨状の中で、ただ一つ、黒板だけがまるで何事もなかったかのように無傷だった。
そして、その黒板の中央に、白いチョークで書かれた文字があった。
ミツキはそれを見て、言葉を失った。
——読めない。
日本語ではない。英語でも、中国語でもない。どんなに目を凝らしても、それが何の言語なのかすら分からない。
だが、ひとつだけ分かることがある。
この言葉は、地球上のどこにも存在しない。
喉がひりつくように乾いた。
「なっ……なにこれ……!?」
恐る恐る後ずさりながら、ふっと視線を上げる。
——旧校舎の廊下に、人影があった。
誰かがゆっくりと歩いている。何人もの教師の姿が見えた。その中に——
「センセ……?」
いた。
他の教師たちとともに、センセが無表情で歩いている。いつもと様子が違う。彼らの歩みは揃い、一切の迷いがなかった。まるで導かれるように、一方向へと進んでいく。
ミツキはその先を知っている。
あれは——屋上へと続く階段だ。
ミツキとセンセが、密かに語らい、笑い合った、あの場所。その記憶が蘇ると同時に、彼女の足は勝手に動き出していた。
「……待って!!センセ!!」
ミツキは廊下へと駆け出した。割れた窓から吹き込む冷たい風が、彼女の背を押すように。




