冬 4-1
「魔法少女よ。愛する人と口付けを交わしてこの世界の住人に戻るのか。
それとも、魔法少女のまま、この世界の外へ行くか。」
冷たい風が吹き抜ける。
遠くで鐘が鳴る音がした。
「……選んで。最後の魔法少女よ。
キミはどこへ行くの?」
雪は、すべてを白く染めていく。
まるで、答えなんて最初からなかったかのように。
◇◆◇◆
朝の冷えた空気を突き破るように、ミツキがバタンと玄関の扉を開けた。
「もう!学校行くからね!」
「ちょっと待ちなさいよ!」
クリスの鋭い声にも、ミツキは振り返らない。
「冬休みまであと少しなの!もう登校日数も残り少ないんだから!」
「だからって、アンタ今そんな呑気なこと言ってる場合じゃないのよ!」
ミツキは足を止めず、すでに階段を駆け下りていた。クリスは溜息をつき、隣に立つ男を見た。
「しょうがないわねぇ……ついて行くしかないかしら」
「……クリス」
「トーマス。さっきも話したけれど、学校はもう安心できるところじゃないわ。なるべく早くにミツキを本国に戻さないと……」
寡黙な男、トーマスは無言でサングラスの奥からクリスを見やると、頷き、ミツキの後を追う。
「ったく……30過ぎのオッサンを、朝から走らせないで欲しいわよ……」
クリスもまた、ため息と共にミツキの後を追った。
◇◆◇◆
学校に到着すると、トーマスはミツキのすぐ後ろにつき、無言で警護に入る。
「ミツキ、絶対に目を離さないでよ?HRが始まる前にここを出る。私は少し野暮用を済ませてくるわ」
トーマスはわずかに顎を引いて応えた。
クリスはそのまままっすぐ職員室へと向かった。
ガラリと扉を開けると、朝の職員室にはすでに何人もの教師が揃っていた。
突然の侵入者に視線が集まる。
一瞬の静寂の後、騒然となる室内。
「ちょっと!君、勝手に入っちゃ——」
「校長はどこ?」
クリスは低く、しかしよく通る声で言った。
教師たちは互いに顔を見合わせるが、クリスの恵まれた体格に気圧されたのか、誰もそれ以上の言葉を発せなかった。
やがて、奥のデスクに座る校長を見つけると、クリスはゆっくりとした足取りで近づき、目の前に立つ。
「教員に関する書類を出して頂戴」
校長は困惑しながらも、クリスの威圧感に逆らえず、静かに引き出しを開ける。
「えっと、その、どの教員の……?」
クリスは口角を吊り上げ、しかし目は笑わずに言った。
「センセのよ」
校長の指がわずかに震えるのを目の端で捉えていた。




