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星の子たち1  作者: あじのこ
50/70

秋 3-13

クリスは、スクリーンの前に座ったまま、息を呑んだ。


画面上に映るセンセの姿を、もう一度じっくりと見比べる。先ほどの動画と、今目の前にいるセンセの姿があまりにも違いすぎる。柔らかな物腰、優しさが滲み出るような表情——それが今では、まるで嘘のように感じられる。


動画の中のセンセは、どこか冷徹で、引き締まった印象を与える。動画を拡大処理して見ると、不鮮明ながらもその目の奥にただならぬ気配を感じる。


その立ち姿が、クリスの胸を強く打った。


まるで軍人のようだ。


不安が膨れ上がり、クリスは頭をかき乱すように揺らす。脳内で記憶の引き出しが不気味な音を立てて開かれた。過去の一つ一つの細かな瞬間が一気に蘇る。


——初めてセンセと顔を合わせた日、クリスはその恵まれた体格に驚いた。あれほど、堂々とした人物は滅多にいない。


その時、ふと思い出す。海に行ったあの日、センセが頑なに服を脱ぐことを拒んだことを。クリスはその理由を訊ねたが、センセは「昔の傷があるから」とだけ言っていた。


その傷は一体何だったのか?


軍人…?


その言葉が、クリスの脳裏で何度も反響した。センセの姿が、今までのどこか不明瞭だった部分を、少しずつ明らかにしていく。


「……偶然よ。偶然に決まって……」


クリスは、自分に言い聞かせるように呟いた。だが、頭の中で確信に近いものが芽生え始める。


センセは、海外にいたと言っていた。

なぜ?何のために?


クリスは目の前のスクリーンを見つめながら、頭の中で次々と疑問が膨れ上がる。冷静に考えれば、日本の教員が長期間海外に行けるものなのだろうか。


旅行? ボランティア? 身内が海外にいる?

それとも……もっと別の理由があるのか?


だがその先に待っている疑問が、クリスの思考をかき乱す。あのセンセ、年齢はいくつだろう?


クリスはふと、自分が勝手に思い込んでいたことに気づく。センセは自分より年下だろう、と。だが、そう思い込むのは間違いかもしれない。自分にはアジア系の年頃感がよく分からない。それに……


センセは何歳なんだ?


その疑問が一つ浮かぶと、次々とまた疑問が沸き上がってくる。


住まいはどこだ? どんな生活をしているんだ?


結婚しているのか? それとも、独身なのか?


クリスは、思いもよらぬ方向へと考えが進んでいく。彼の背筋を冷たい悪寒が走り抜けた。その寒気は、ただの不安ではない。


その感覚が胸の奥に広がり、次第に全身に広がっていく。


しかし、そこでもう一つの疑問が湧き上がる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


そうだ。


あの時、何かを聞いたような気がするが——どんな名前だったのか、いまいち確かな記憶がない。


クリスはそこでハッとする。あの学校では教員も、生徒も……誰もあの『センセ』のことを、名前で呼んでいないのだ。

お待たせしました。

ここからが本編です。

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