表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/70

春 1-5

バスがゆっくりと校門を抜け、軽井沢へ向けて走り出す。窓の外では街が後ろへと流れていくが、ミツキはぼんやりとそれを眺めながら、考えごとをしていた。


最初に会ったときの印象は、正直最悪だった。


なんか、変なやつだな——それが第一印象。


向こうじゃ、教師なんて勉強を教えるだけの存在だったのに、コイツはやたらと絡んでくる。くだらないことで笑って、魔法少女だからって特別扱いするでもなく、私たちをただの生徒として扱ってくる。ウザいし、ジャージ姿ばっかりだし、たまにタバコ臭いし……。


でも、「ここでは戦わなくていい」

そう言われたとき、不思議な気持ちになった。


向こうの国では、「魔法少女」は観察対象でしかなかった。


研究者たちに囲まれ、戦闘データを取られ、能力を測られ、結果を求められる存在。だから、先生と生徒の関係なんて、ミツキには理解できなかった。

あの国で「先生」と呼ばれていた人間たちは、ただミツキを観察し、あれやこれやと指示を出すだけだったから。


でもセンセは、違った。


バスの中で、魔法少女たちは座席の取り合いをして騒いでいる。リサが窓際を死守しようとして、コウリに押し返され、ちょっとした小競り合いが起こる。その様子を見ながら、センセは苦笑して「はいはい、仲良くしろよー」と、適当なことを言う。


ミツキは思わず、「こんなんでいいのかよ」と呟く。ただの遠足みたいな雰囲気。


「なんだ、ミツキ。お前も窓際取り合うか?」


そう言って、センセは冗談めかして笑う。


「……バカじゃないの?」


けど、ミツキの声にはいつものトゲはない。


本当に、変なやつだ。

だけど、少しだけその「変さ」に、安心している自分がいるのも確かだった。


窓の外、青空の下をバスが進んでいく。

ミツキは深く息を吐くと、座席に背を預けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ