秋 3-8
街中にある学校にしては珍しい立派な紅葉樹の横を通り過ぎながら、みんなで後片付けに勤しんでいた。
落ち葉が風で流されるたびに、少し寂しい気持ちになる。あんなに賑やかだったのに、今はもう誰もいない。
その寂しさが、どこか不安を呼び起こしていた。
「あー終わった終わった!」
「みんな、楽しんでもらえてよかったね」
「えぇ〜子供ばっか来て大変だったじゃん」
「ミツキ。お前も子供だろう」
「うるさいなー」
ミツキが持っていたゴミ袋を振り上げようとしたので、オレはそれから慌てて逃げた。
「無事に終わったし、片付け終わったらみんなで打ち上げいこーよ」
「え、クリスさん達は大丈夫なんですか?」
「だいじょーぶ!なんか、最近緩いんだよね。コウリも来るんだぞ!」
逃げ出そうとしていたコウリの肩がびくりと動く。
「……分かったよ」
「コウリは最近付き合い悪いからなぁ」
逃げないようにミツキはコウリの肩を組んで歩き始める。
「あ、教室に忘れ物しちゃった」
リサがそう呟く。
「え、早くしないと校庭で最後の集会が始まるよ?」
「ああ〜!ごめんね。先に行ってて」
「急げ〜」
リサの走る方へオレは目を向ける。ミツキとコウリはゴミ出しへと向かったようだ。
ああ、長い1日が無事に終わった。
タバコを吸いたくなる気持ちを抑えて、オレは温泉に入るサメの絵が描かれたベニヤ板を持ち上げた。
その時、強い風が吹く。
紅葉樹の黄色と赤のコントラストの中に、1人立つ生徒がいた。
腰ほどもある長い髪が漆黒のように黒く、まるで日本人形のようだ。黒地のセーラー服を着ていたが、制服のデザインはうちの学校とは違う。肩には長い筒状の革袋を持っている。
背を向けているため、顔は見えない。しかし、遠くからでも分かる。まるで異世界から来たような、異質な雰囲気を放っていた。
「センセー?なにしてんの」
突然、ミツキの声が響き、オレは我に返った。振り向くと、ミツキが立っていた。
「ああ……いや、そこに他の学校の生徒がいて……」
オレが指差すと、そこにはもう誰もいない。風で葉がざわめく音だけが響く。空気が、ほんの少しだけ重くなったような気がした。
その音が、今までと違って耳に残る。
「誰もいなかったよ?ねぇ、早く行こっ!」
ミツキが不思議そうに言う。
その顔が少しだけ心配そうに見える。
オレは何かを感じながらも、それを言葉にすることができなかった。
「あぁ……気のせいだな」
こんなところに藤原雪は、いない。
そう言って、無理に笑おうとするが、心の中にひっかかるものがあった。あのセーラー服の生徒、何かおかしくなかったか。いや、何かを感じた気がするだけだ。
でも、その気配が消えた今、何も言葉にできない自分がもどかしい。それでも、背中に冷たい汗が流れるような気がした。
まるで今、何かを見逃してしまったような不安が胸に残っていた。




