秋 3-4
オレは教室で頭を抱えて悩んでいた。
病院にもいない、養護施設にもいない、引き取られた先の家もあてにならない。藤原雪を探す手がかりは、もはや何ひとつ残されていない。
オレはちらりとコウリの方を見た。最近、唯一藤原雪と接触したのは山口コウリだけだ。だが、そのコウリはここ最近、オレに対して露骨に距離を取っている。
最低限の会話どころか、目すら合わせようとしない。オレが話しかけようとすると、さりげなく視線を逸らし、そそくさとどこかへ行ってしまう。こうなっては、コウリから雪の手がかりを聞き出すのは絶望的だった。
(くそ……どうする……)
悶々と考え込んでいると、不意に目の前で机が「ドンッ!」と叩かれた。
「ねー?センセ、聞いてんの?」
「……ごめん。聞いてなかった」
顔を上げると、ミツキが呆れ顔で腕を組んでいた。彼女の後ろには、リサが気まずそうに視線を泳がせ、コウリは相変わらず無表情で座っている。
「もー!真剣に考えてよね!」
腕を組んで不満そうなミツキの隣で、リサが小さな声で言った。
「せ、先生……最近、元気がないように見えますけど、大丈夫ですか?」
その声にオレは思わず驚いた。リサがこんな風に口を開くなんて、よほど心配しているのだろう。彼女はいつも控えめで、言いたいことがあってもなかなか言えないタイプだから。
「大丈夫だよ、リサ」
「そ、そうですか?」
リサは小さく頷くものの、やはり心配そうな表情を浮かべている。
「先生、無理しないでね。私たちが力になりますから……」
その言葉にオレは少し驚く。こんなにも気を使ってくれるなんて。
「ありがとう、リサ。でも、今は文化祭の準備の方が大事だな」
オレがそう言うと、ミツキがすかさず口を挟む。
「だよねー!もう時間がないんだから、センセもちゃんと考えてよ!リサも言って!」
「は、はい。先生も協力しないと……」
リサは少し顔を赤らめて、そう続けた。やっぱりリサはオドオドした様子があったが、少しずつ言葉を交わせるようになってきていることに、オレは内心嬉しく思う。
「で、具体的には何をやるつもりなんだ?」
「うーん、それがまだ決まってなくて……」
「そうそう!せっかくの文化祭なんだから、楽しくやりたいし!」
オレは黒板の「文化祭 催し物」という文字を見ながら考え込む。3人だけでできる催し……。
「じゃあ、例えば——」
こうして、オレは気づけば文化祭の準備に巻き込まれていくことになるのだった。




