夏 2-21
「ちょっとー!冗談じゃないわよ!アンタ、バカなの!?」
「……いやぁ、ごめんごめん」
誤魔化しながらゲームセンターから出てきたけど、全然誤魔化せてなかったわ!!なんなら通報されたんじゃない!?
助手席に身を沈めるクリスの声が響く。その間を申し訳なさそうにセンセの声が聞こえる。
「まぁ……でも藤原さん、いなかったんだ。」
「ミツキちゃん……。時間も遅いし、雪ちゃんはもう帰ったんじゃないかな?」
「……病院に?こんな夜更けに?」
リサの言葉を詰めるようにミツキは問う。そうしたところでリサが答えられるはずもないのに、ミツキは自分の言葉が思った以上に強かったことを悔いてため息を吐いた。
車内には不穏な空気が支配しつつあった。昼間はあんなに楽しかったというのに。誰もが唇を閉じた。
車はコウリとリサの住む寮の前へと着くと、センセもそこで降りた。みんなの間に籠る不穏な空気を払うように、センセは明るい顔で言う。
「まー……オレも病院の方に聞いてみるから、みんな心配するな!」
「心配、というか……」
そうではないという意識がセンセ以外の胸の中にあったが、それを言葉にする者はいなかった。
センセが車を降りると、車は静かに夜の街を走り去った。
その後ろに残ったのは、ただ静かな夏の終わりを告げる風の音だけだった。
空には星が点々と輝き、空気の中に感じるわずかな湿気が、この季節の終わりを思わせる。
車のライトが遠ざかるにつれ、車内に残された不穏な雰囲気が、じわじわと心に沈み込むようだった。
その夜、誰もが言葉を失ったまま、暗闇の中でそれぞれの思いを胸に抱えていた。
どこか遠くで、蝉の声が聞こえては遠ざかっていく。夏の終わりが、そこに迫っていた。
夏編終わり




