表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の子たち1  作者: あじのこ
34/70

夏 2-18

トーマスの運転する車は、やがて高速道路の出口へと滑り込んだ。


車体が緩やかに減速し、街の灯りがフロントガラスに映り込み始める。


それまで流れるように過ぎ去っていた景色が、次第に現実の輪郭を取り戻していく。広い車線は狭まり、無機質なコンクリートの壁に挟まれていた視界が、一気に開ける。


眼下には交差点を行き交うヘッドライトの波。信号の赤と青が交互に街を染め、ネオンの明滅が建物の窓に反射する。


夜の空気はしっとりと湿り、遠くで聞こえるクラクションや雑踏のざわめきが、都会の生を感じさせる。


トーマスは無言のまま、適切な車線へと滑り込んでいく。その間も、車内の空気はまだ先ほどの話の余韻を引きずっていた。


そんな車内の異変に気づいたクリスが、助手席から後部座席に向かって振り返る。


「ちょっとちょっと〜!アンタ達、何騒いでんのよ?」


わざとらしいほど明るい声が車内に響く。しかし、後部座席に座るコウリとリサは沈黙したまま。


「……」

「……」

「え? なになに? どういう事になってンの?」


クリスの問いかけに、リサが戸惑いながら口を開いた。


「クリスさん。そ、それが……」


リサは、先ほどまでのやり取りを説明し始める。


コウリのしていたVRゲーム内に、入院中のはずの藤原雪が現れたこと。

センセは「そんなはずはない」と否定したこと。もし本当に雪がVR世界にいるのなら、なぜ学校に来ないのか——。


クリスは説明を聞き終えると、腕を組んで考え込むような素振りを見せた。


「ふぅん。というか、その雪ちゃん?の親からは何も話がないワケ?」


「藤原は……養護施設の、両親がいないんだ。」


その言葉に、クリスは「おや?」という顔をした。そして、ふと助手席の向こうに座るミツキへと視線を向ける。


「それなら、なおさらお役所が管理してるんじゃない? そもそも魔法少女だし」

「まぁ、そうなんだが……実は面会を申し出ても病院から断られていると言われた」

「そんなに重症なの?」


クリスの何気ない言葉に、リサの肩がピクリと震えた。彼女の手は、膝の上でぎゅっと握りしめられている。街の明かりが、リサの拳を淡く照らしていた。


クリスは、後部座席の二人を見比べながら、ふっと口角を上げた。


「そんなに気になるなら、その雪ちゃんが現れた場所に行ってみれば?」

「えっ?」


思いがけない提案に、リサが目を瞬かせる。


「コウリちゃん、どこのゲームセンターだったのか分かってるんデショ?」


「……バカにすんな。そんなの簡単だ」


コウリは僅かに鼻を鳴らしながら答えた。


「なら、このままみんなでそこに行ってみましょうよ」


クリスがあっさりと言うと、リサが慌てて身を乗り出す。


「クリスさん!よ、夜のゲームセンターは18歳未満は立ち入り禁止ですよ……!」


リサが心配そうに言うと、クリスは肩をすくめた。


「それなら、センセと私が見に行ってあげるわよ」


その言葉に、リサは押し黙った。


「……まぁ、ここでウダウダしてても仕方ないし、それでいいんじゃない?」


ミツキが欠伸をしながら、だるそうに言う。


「センセがその藤原って子に会えれば、それで解決でしょ。コウリも、それで気が晴れるんじゃない?」


車内の空気が、再び沈黙に包まれる。

外の街灯が、フロントガラスに流れていく。やがて、トーマスが無言のままウインカーを出し、目的地へ向かって車を走らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ