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星の子たち1  作者: あじのこ
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夏 2-15

「雪ちゃん、どうして学校に来ないの?」


コウリは嬉しそうに声をかけた。久しぶりに会う雪の姿を見て、無邪気に笑顔を浮かべながら尋ねた。


「まだ怪我が良くならないんだ」


雪は静かに答え、少しだけ目を伏せた。その表情は穏やかで、少し寂しげにも見える。だが、それを感じさせることなく、優しげに微笑んでいる。


「そうなの?え〜……でも、あれ?今ゲームセンターにいるよね」


コウリは何も気にせず、無邪気にその質問を続ける。ゲームの中でも、雪のアバターを見つけたとき、すぐにその存在に気づいていたからだ。特別な能力を持つ自分にとっては、こんな些細なことは当たり前だった。


「ふふっ……すごいねコウリは。そんなところまで分かるんだ」


雪は軽く驚いたように目を細める。そして、コウリの意外な洞察力を褒める。少し照れくさそうに微笑む雪の表情は、優しさに満ちていて、コウリの心を温かくさせた。


「えへへ」


コウリはにっこりと笑って、照れ隠しに肩をすくめる。


「遊んでいるところ悪いのだけれど……少し、仕事のお手伝いを頼めるかな?」


雪の声に、コウリは即座に反応する。頼まれ事が来るのはもう慣れたことだ。顔に浮かぶ笑みが、どこか自然で余裕を感じさせる。


「うん!もちろんだよ!」

「ありがとう。実は……空港の監視カメラを見たいの。日付は……と……なんだけど、できるかしら?」


その依頼に、コウリは少し考える素振りも見せず、すぐに答える。


「空港の監視カメラ?お安い御用だよ!」


もう何度もやったことだ。ゲームの世界でちょっとした情報収集が必要な時、コウリにとってはこれが日常的な仕事のひとつ。コウリの指先が空中で軽やかに動き、ゲーム内の空間があっという間に変わる。


まるで視界が切り替わるかのように、ゲームの世界が一瞬で別の空間に変わる。その中に、予告なく巨大なブラウン管テレビが現れる。そのテレビの画面には、リアルな現在の空港の監視カメラ映像が映し出されていく。


コウリはその映像を確認しながら、淡々と次々とカメラを切り替えていく。


「おっけー、問題なし。あとは細かい設定を調整するだけだね」


コウリはまるで何でもないことのように、雪に向かって微笑みながら言った。そこには驚きや感動もなく、ただコウリの持つスキルが当たり前のように発揮されているだけだ。


コウリは雪と並んで、ブラウン管テレビに映る映像を眺めた。そこに映し出されているのは、搭乗口で案内をするアテンダントの女性が二人。


映像は静かで、淡々とした時間が流れている。


彼女たちは規則正しく動き、やがて飛行機の出発時刻が近づくと、搭乗口の片付けを始めた。


「……これが雪ちゃんの見たかったもの?」


コウリは少し拍子抜けしたように尋ねる。


「ええ、そう。ありがとう」


雪の声は穏やかだったが、どこか含みがあるように感じられた。


「なーんだ。ただのアテンダントさんが映ってるだけじゃないか」

「……そうね。他には何が見えるかな?」


雪の問いかけに、コウリは改めて画面を凝視する。同じ搭乗口の映像、時間を変えても特に大きな違いはない。ただ、映っているのは違う年の同じような場面が二つ並んでいるだけだった。


「うーん……ボクの目には、特に珍しいものは映ってないけどなぁ」

「……ありがとう。よく分かったわ」


雪はそう言うと、ふっと踵を返す。いや、正確にはアバターの雪だったが、コウリには彼女が去ろうとする気配がはっきりと感じられた。


「もう行くの?遊んでいけばいいのに」

「あまり遅くなると病院の人に怒られちゃう」

「ああ、そうだったね。雪ちゃんも意外と大胆だなぁ」


コウリは肩をすくめながら笑った。


「ああ、そうだ。学校のセンセがけっこー面白いやつだから、早く怪我治して学校に来てよ」


「……うん。ありがとう」


コウリの言葉に、雪は小さく微笑むと、そのまま静かにログアウトしていった。


「ばいばーい!」


消えていくアバターに向かって手を振り、コウリはふっと息をついた。なんとなく時計を確認すると、意外にも時間が経っていたことに気づく。


(やば、結構長く話してたかも)


そう思いながら、重たい旧式のVRゴーグルを外す。

鼻の部分に少しだけ汗がにじんでいた。


「……コウリちゃん、大丈夫?」


ぼんやりとした頭に、優しいリサの声が響いた。


「?……うん、だいじょーぶだよ」

「コウリ。お前、今誰と話してたんだ?」

「え?」


コウリはまだ現実世界に意識が馴染んでいない。ぼんやりと視線を上げると、そこにはミツキとリサ、そして……センセの心配そうな顔があった。


状況がよく飲み込めないまま、コウリは顎を指で掻く。そして、きょとんとした表情のまま、当たり前のように答えた。


「雪ちゃんだよ?」

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