夏 2-14
ゲームが立ち上がると、目の前に広がるのはまるで虹色の絵の具を散りばめたような、鮮やかな光の世界だった。
浮遊するプラットフォームの上で、色とりどりの光の粒がきらきらと瞬き、無限に広がるステージが眼前に広がる。空はピンクや水色、淡い紫色に染まり、星々がきらきらと煌いている。
下を見れば、クリスタルのような不規則に光る地面が足元に広がり、周囲を取り囲むのは幻想的な風景だった。音楽もまた、どこか夢見心地で、心を和ませてくれる。
ゲームのキャラクターたちが走り回り、空を飛び、手に持ったアイテムを光らせる。その明るさ、カラフルさ、音の軽やかさに心はどんどん引き込まれていく。こんな世界で遊んでいると、どんな現実も忘れられる気がする。やりたかったこと、考えていたこと、全てがこの世界ではどうでもよくなる。
手元の操作に合わせて、自分も次々とキャラクターを動かしていく。少しだけ無邪気に遊びたくて、スピードを上げたり、ジャンプしたり、コースを飛び越えてみたり。こうしていると、目の前の空間がどんどん広がっていくような錯覚に陥る。
その時だった。
ふと、画面の中で何かがひときわ強く光った。カラフルな光の波が渦を巻き、その中心に、見覚えのある黒髪のアバターが現れた。
普通なら、何の変哲もないキャラクターに見えるはずだ。
顔立ちは飾り気のない、基本的なパーツの組み合わせで作られている。髪型も服装も、どこにでもありそうなシンプルなものだ。それでも、コウリの目には、どこかで見たことのある姿だと思った。
そして、コウリは一瞬で気づく。
「……雪ちゃん?」
アバターが放つデータの波動。コウリはそれを一瞬で感じ取った。デバイスを通じて流れる、見えない情報。そこに確かな形があり、信号が浮かび上がる。
その存在が、目の前に立っているのはデータに過ぎないはずだという事実が、逆にコウリを驚かせた。しかし、彼女の能力がそのデータの裏側に隠された正体を感じ取った。数字やコードに埋もれた情報が、ここにある。
そして、その情報の正体が――
「コウリ。お久しぶり。」
その声を聞いた瞬間、コウリは深く息を呑んだ。
それは、間違いなく学校に来ていない『藤原 雪』の声だった。
おやおやおや




