夏 2-13
もークタクタだ。
指先ひとつ動かす力はない。
コウリは疲れ切った体を車の座席に預けた。頭を背もたれにすり寄せ、目を閉じる。着いてくるんじゃなかった、と思う反面、どこかで満ち足りた気持ちになっていた。長い一日がようやく終わろうとしているのだ。
前の席には、自分と同じ魔法少女のミツキとリサがいる。2人ともすでに、眠っているようだった。
リサは首を少し傾けて、無防備に寝息を立てている。ミツキは目を閉じたまま、車の揺れに身を任せている。
ボクは、彼女たちよりも3つ年下だ。
魔法少女の能力に加えて、脳みその出来が評価されて飛び級を許されたが、実際には大人達がボクの扱いに困っての処遇だということもボクは知っている。
でも、ミツキもリサもボクのことを同等に扱ってくれる。そんなところが、認めたくはないがボクには嬉しくてたまらない。
センセも、そうだ。誰かに自分の居場所を認められるのは、なんだか安心できる気がする。
だけど、昔からいる場所もボクにとってはかけがえのない場所だ。それに、なんだか今日はずっと落ち着かない。だから、少しでも気を紛らわせるために、何かをしようと思った。
バッグから、古びたVRメガネを取り出す。
シンプルで無骨なデザインだけれど、これをかけると、今はもう懐かしいあのゲームの世界に戻れる気がする。
メガネを頭に乗せ、レンズが目にフィットするのを確かめる。ゲームが起動するまでのほんのわずかな時間が、少し心を落ち着ける。
久しぶりだな、こんな感覚。
手元で操作をしながら、ゲームが立ち上がっていくのを待つ。
ゲームが始まると、目の前に広がる仮想の景色が現れる。色とりどりの光の粒が渦を巻き、どこまでも広がる幻想的な世界。
ボクは少しだけ、深呼吸をして、その世界に意識を委ねる。それが、今のボクにとっては大切なひとときだった。




