夏 2-11
海の美しさと、魔法少女たちの遊びに興じる儚い姿。
遠くで楽しげに戯れる声が、まるで波に溶け込んでいくようだった。その光景をぼんやりと見つめる自分は、一体何をしているのか分からなくなるほどの脱力感を覚える。頭を振ると、もやが少し強くなった気がした。
(……?なんだろう。思考が霞む)
クリスは目を閉じ、熱を感じる額に手をやる。
これが、ただの熱中症であるはずがないと知っている。
だが、肉体に不調を感じることは、もはや少しずつ慣れ始めている自分にとっては不自然なことで、冷静に考えようとすればするほど、どこか違和感が拭えなかった。
指先で眉間を押さえながら、クリスは再び視線を上げた。
「クリス?オイ、大丈夫か?」
センセの声が、どこか遠くから響く。しかし、クリスにはその声が、目の前で囁かれているように感じられた。脳裏にその声だけが鮮明に残り、他の音が霞んでいく。
返事をする。
何も考えずに、無意識に答えた。
「ええ……大丈夫よ。」
その言葉が喉から出るとき、胸の奥に不安が広がる。センセの視線を感じる気がしたが、顔を上げると、センセは黙ってただ見守っているように見えた。ただ、その目がどこか不安定で、少しの間クリスはその目を直視できなかった。
「センセ、目が……」
「疲れてるんだろう、無理しなくていい。」
その声に、少し救われた気がした。
だが、すぐにそれが本当に救いだったのか疑問に思うのだが、目眩の中でその疑問も霞んでいく。やがて掴んだ砂が手のひらから溢れていくように、あるいは海の中で拾った貝殻が波にさらわれたいくように、跡形も消し去られてしまった。
おやおや?




