夏 2-10
白波が打ち寄せる浜辺で、少女たちの笑い声が弾ける。
波しぶきを浴びながら、きらめく海の中を無邪気に跳ね回る魔法少女たち。水しぶきが陽の光を受けて虹のように輝いている。
クリスは砂浜に腰を下ろし、その光景を穏やかに見つめていた。顔にはいつもの笑みを浮かべながら、濡れた前髪をかき上げる。
「……あの子達、飽きもせずにマァ遊んでられるわね」
どこか遠くを見るような目で、クリスはふと呟く。センセが隣で視線を動かし、ちらりとクリスを見る。
「……ああ」
短く相槌を打ったその声には、わずかな間があった。クリスはそれを気にも留めず、ただゆったりと手を砂に埋める。ひんやりとした感触が、じんわりと体温を奪っていくのを感じる。
波間でじゃれ合う少女たち。その姿はまるで夢のように、儚く、遠い。
クリスの指が砂を掬い、さらさらとこぼれ落ちていく。クリスは波打ち際を見つめながら、ぼんやりと呟く。
「こんな時間がずっと続けば良いわネェ」
ミツキとリサがはしゃぐ声、シオンの穏やかな笑み、遠くで弾ける波の音。焼けた砂の感触、潮風の匂い、空に浮かぶ白い雲──全てが、まるで夢みたいだった。
「……そうだな」
センセの返事は短かった。
クリスは横目で彼の顔を盗み見る。どこか遠くを見つめるような、寂しげな目をしていた。
──センセも、わかってるんでしょ?
こんな時間が、永遠に続かないってことを。だからこそ、願わずにはいられない。
「ねぇ、センセ」
クリスは砂をすくい上げ、それが指の間からさらさらとこぼれ落ちていくのをじっと見つめた。
「……このまま、どこかに消えちゃいたいって思うこと……ない?」
冗談めかした口調だった。でも、その言葉の端には、どこか本音が滲んでいた。センセは少しの間、沈黙していた。波の音だけが、静かに響いていた。
(こんな時間が、ずっと続けばいいのに……)
胸の奥に広がるのは、懐かしさにも似た感情。けれど、それは果たして本当に「願い」だったのか。




