夏 2-6
夏の朝、まだ太陽が顔を出しきらない時間。学校の前庭には、冷たい朝露が残る草木がひしめき、空気は湿っぽいけれどどこか清々しい。
徐々に明るくなりかけた空には、ほんのりとピンク色が差し、日差しが強くなる前のひんやりとした空気が心地よい。
そんな早朝の静けさを破るように、野太い2人の男の声が響いた。
「なんでアンタがいるのよっ!?」クリスは指を刺す先にはセンセがいた。
「そっちこそ、なんでいるんだよ!」と、センセも思わず声を荒げる。
だが、すぐに「まぁ、そりゃそうだよな」と、肩をすくめるように言って納得する自分がいるのがちょっとおかしかった。
「……ミツキ、お前まさか……」
センセがミツキに視線を向けると、彼女はしれっとした顔で笑いながら言った。
「あはは。言ってなかったっけ?」
「……言ってなかったっけって、普通言わんだろ!」と、クリスが顔をしかめる。
その後、クリスはしばらく黙っていたが、ようやく口を開く。
「生徒のプライベートに関わるなんて、しかも海!?いやぁ!ハレンチよ!この淫行教師!」
「い……違う!オレは……保護者として……」
センセは手をひらひらと振って否定しながら、顔を真っ赤にしている。
「コウリもいるし……」と、慌てて言い訳を続けるが、それでもクリスは笑いながら言い放つ。
「……子供扱いすんな。」
「そうよ。コウリちゃんに失礼よ」
コウリは静かに意を唱えた。
「それに、高校生に保護者ヅラするのもどうかと思うわ。」
その言葉に、センセはさらに顔を赤くして、肩をすくめるしかなかった。
「……確かにいいぃぃ。」と、力なく返事をする。
「いや……!それならお前だって」
「私たちはミツキの護衛よ。あなたと一緒にしないでくれる」
「まあまあ、クリス。」と、ミツキが声をかける。
「私が誘ったんだし。」
「はぁ……ミツキ、アンタもアンタね。」
クリスは半ば呆れたように言う。
「なんでわざわざ教師なんて誘うのよ?」
ミツキはその顔に笑顔を浮かべて、少し照れながら答えた。
「えーだって……みんなと一緒に行ったら楽しいかなって。」
その言葉に、クリスは「はぁ、全く」と溜め息をつきながら、運転席に座る。
トーマスのワゴン車のドアが閉まり、エンジンがかかると、車内に冷ややかなエアコンの風が流れる。その空気に触れると、どこか熱を帯びた頭が冷めるような感覚が広がる。
「なにしてんの?なんでこんな朝早くに集まったと思ってんのよ。」と、クリスは真顔で言う。
「……早く行くわよ。」
車内では、ミツキがパァアアと明るい笑顔を見せ、リサは優しくセンセを慰めている。
「センセ、大丈夫?」と、リサは心配そうに声をかける。
「う、うん……」と、センセは頷きながらも、明らかに心の中では「淫行教師かぁあ……どうしてこうなったんだろう」と思っている。
そして、後ろの席ではコウリが一歩引いたように、冷めた目で二人を見ている。その表情には「またか」といった諦めにも似た感情が漂っていた。
こうして3人の魔法少女たちとクリス、そしてセンセを乗せたワゴン車は、エンジンの音とともに走り出した。車内には、早朝の涼やかな風が軽く吹き込み、窓からは朝の空気が心地よく流れ込んでくる。
安心してください。
先生、きしょいなって自覚は筆者にもあります。




