夏 2-5
リサは最初、魔法少女だけのクラスになると言われた時に少し不安を感じていた。
魔法少女なってからは普通の学生生活にはない緊張感の連続だった。いつ怪獣が現れるとも分からないし、勉強だってどうしても休みがちになるから途中でついていけなくなるかもしれない。……それを狡いっていう子がいることをリサは知っていた。
たぶん誰も深くは話さないけれどミツキちゃんもコウリちゃんもここまでにはいろんな事があったっていうのはすぐに分かった。私もそうだったから。
人にはない魔法少女になれる能力をすごいって言ってくれる人もいれば、気味が悪く思う人もいる。それを直接的に言われることもあった。
高校に来るまではどんな子達でどんなところなんだろう。また仲間はずれにされたりしたらやだなって不安に思っていたけれど、最初に先生の言葉を聞いた時にみんな吹っ飛んじゃった。
軽井沢での合宿、あのときは本当に楽しかったな。
あんな怪獣が出てきて、雪ちゃんもいなかったし、どうなることかと思ったけど、ミツキちゃんが一緒にいてくれて、思ってた以上にうまく連携できたし、それに……あの時、クリスさんが助けてくれたおかげで、安心できた。
「あぁ、ほんとうに、ありがたいなあ」って、あの日からなんだか、毎日が楽しく感じるようになった。
以前は怖かった魔法少女としての生活も、だんだんと自分の一部になってきたんだと思う。そっと胸の中でその変化を確かめるようにしてみるけれど、それでもまだちょっと不安は残ってる。
今日は、補習のとき。リサはふと、目の前にいるミツキちゃんを見つめた。あれ? ミツキちゃんって、なんだかすごく輝いて見える。教科書に顔を近づけて、必死に教えてくれてるけど、その顔が、なんか、キラキラしてる。
(……あれ?)
リサは思わず心の中で呟いた。思った以上に、その瞬間、胸がドキドキしていたことに気づいた。
ミツキちゃんって、センセのこと、結構見てるんだな。あんなふうに、キラキラした目で見るって、何だか、もしかして……?
その時、センセの声がリサを現実に引き戻した。
「おーい、リサ。聞いてるのか?」
慌てて顔を上げ、リサは「は、はい!」と返事をした。でも、どうしてもその一瞬のドキドキが胸の奥で収まらなくて、少し恥ずかしくて、顔を赤くしてしまった。
「聞いてなかったろー」
リサは顔を伏せ、ちょっと焦ったけど、すぐにミツキちゃんが「リサ、ここだよ」と教科書を差し出してくれた。
「あ、ありがとうミツキちゃん……」
少し落ち着いたリサは、心から感謝の気持ちを込めて、教科書を受け取った。
(2人のためにも、海に行けるように、追試頑張んなくっちゃ!)
その言葉を心に誓いながら、リサは教科書を見つめたけれど、どこかうわの空だった。気づけば、ミツキちゃんがセンセを見ているその顔が、リサの中で繰り返し浮かんでくる。
(ミツキちゃん、あんなにセンセのことを見る顔、キラキラしてたんだ…)
リサの胸の奥で、何かがふわりと温かくなるのを感じた。少し不思議な気持ちが広がっていくけれど、でもそれがなんだか心地いい。
(青春って、こんな感じなんだろうな。)
教科書の文字が、少しずつリサの目に入るけれど、どこか頭の中は、今日の出来事があたたかく広がっているような気がした。
「……頑張らなきゃね、リサ。」
リサは小さくつぶやき、もう一度心を決めた。そして、目を凝らして教科書の文字に集中した。
でも、何度も、何度もミツキちゃんのキラキラした顔が、リサの心の中で繰り返し踊るのだった。




