夏 2-4
「じゃあ、補習始めるぞー」
センセがダルそうに黒板にチョークを走らせる。
「くぅ〜!やっと学校が終わったと思ったのに、夏休みになってもまた授業を受けることになるなんて……!」
ミツキが机に突っ伏しながら嘆いた。
「自業自得だろ」
センセが冷たく返す。
「えへへ……すみません……」
その隣ではリサはしょんぼりしながらノートを開いた。
「海に行くとか言って、お前ら全員が追試受けるんじゃしょうがねえな」
「えへへっ」ミツキは頭をかきながら笑う。
「す、すみません……」リサは申し訳なさそうに縮こまる。
「……」コウリは無言で視線を逸らした。
センセは盛大に頭を抱えながらぼやく。
「いや、ミツキとリサはともかく……コウリ、お前は話が違うだろ。噂の知能はどこにいった?」
「……ボクの勝手だろ」
「ははーん。お前、2人と一緒にいたくてわざとやったな?」
「……!」
コウリの耳がほんのり赤くなる。
「なっ……そ、そんなことあるわけ……!」
「ほら、図星じゃん!」
ミツキが笑いながら肘でつつく。
「うるさい!」コウリはバサッと答案用紙をめくって、そっぽを向いた。
「で、でも……補習頑張って、追試に合格すれば海に行けるんだから!」
「ポジティブだなぁ、お前は……」
センセはため息をつきながら、机の上の赤点答案を見て、ふと遠い目をした。
「……あー、オレの教え方が悪いのかなぁ……オレ、教師向いてないのかも……」
ミツキとリサの解答用紙には、信じられないほどの珍回答が並んでいる。
「……はぁ……」
センセは机に突っ伏した。
「こんなに必死に教えてるのに、なんで伝わらねえんだ……?」
「せ、センセ……!」
リサが心配そうにセンセの前に立ち、優しく微笑んだ。
「だ、大丈夫です!センセの教え方は悪くないです!私たちがもうちょっと頑張ればいいだけで……!」
「リサ……お前……」
「センセは立派な先生です!」
「……お前、いいやつだな」
センセはじーんとしながら、リサの頭をぽんっと撫でた。
「でも、慰めるなら赤点取らないように頑張ろうな?」
「うっ……」
リサは一瞬固まり、視線を逸らした。
「……あ、あはは……」
「おい。なんで目を逸らした?」
「ち、ちがいます!私だって頑張ってるんです!」
「頑張ってるやつは ‘みんな仲良くできなかったから’ なんて書かねえんだよ!」
「えっ、それじゃダメなんですか!?」
「ダメに決まってるだろ!!」
センセのツッコミに、リサがしゅんとする。
「ふふ……」
その様子を見ながら、ミツキがくすくす笑う。
「なんだよ」
「センセ、めっちゃ先生してるじゃん」
「……バカ言え、オレは教師向いてないって言ったろ」
「ううん、めっちゃ向いてると思うよ?」
ミツキがニッと笑った。
センセは「……チッ」と舌打ちしながら、黒板を叩いた。
「はいはい、いいから授業続けるぞ!ここからはマジで覚えろ!追試落ちたら海どころじゃねえぞ!」
「「はーい!!」」
「……」
こうして、補習授業という名のセンセの奮闘が始まった――。




