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星の子たち1  作者: あじのこ
19/70

夏 2-3

「ねぇねぇ、ねぇっクリスぅう!」

「ダメ」

「まだ何も言ってないのに!?ひどくない!?」

「言わなくても分かる」


ミツキの声が部屋中に響く。クリスはため息をつきながら、フライパンの上のソースを木べらでかき混ぜた。ガーリックとトマトの香りがふわりと広がる。うん。いい匂いだわ。


「ねぇトーマスぅ〜!」


ミツキはキッチンの壁にもたれかかるようにして、トーマスのほうを見た。だが、トーマスは一瞬、動きを止めると、すぐに踵を返した。


「……」


無言で部屋を出ていこうとするトーマスを見て、クリスは思った。

あ、逃げたなアイツ。


「ちょっと、トーマス!」

「……任せた」

「」


トーマスは早々に撤退し、キッチンにはミツキとクリスの二人だけが残る。


「ねぇクリスぅ、お願い!」

「アンタ分かってるの?軽井沢の一件があったばかりデショ」


クリスは鍋の中のパスタを湯切りしながら、鋭い視線を向けた。だが、ミツキは全くめげた様子がない。


「で、でも、リサがね、海に行ったことないって言ってたの!」

「だから?」

「だから、リサを連れて行ってあげたいの!」


クリスは手を止めた。しばらく無言のまま、じっとミツキを見つめる。


「……」

「ねぇ、お願い……?」

「……」


じわじわとプレッシャーが増していく。ミツキはぷるぷると唇を震わせて、上目遣いになった。


「……仕方ないわねぇ……」


ぽつりとクリスが言うと、ミツキの顔が一気に輝いた。


「やったあああ!!!」


彼女の歓声が、キッチンに響き渡った。クリスは「はぁ……」と深い溜息をつきながら、パスタを皿に盛りつける。どうせこうなるって分かってたのに、なぜ断れないのか。


まったく、世話が焼ける……。

これでは警護というよりも、子育てである。


そんなことを考えながら、クリスはいつものようにミツキの分の皿をテーブルに置いた。

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