春 1-14
「リサ!怪獣の後ろにシールド展開できるかしら?」
「う、うしろ……ですか?」
「そこでミツキに手足を狙わせて!お願いね!」
「……!クリスあんた……」
「いいから、任せなさいな!」
その時、細い道を猛スピードで駆け抜ける見覚えのあるバス。ハンドルを切る音が鋭く響き、無駄のない動きで車体を操るのは——トーマスだ。
サングラスの寡黙な男はコウリの叫び声など歯牙にもかけず、バスの窓から巨大な物体を放り投げる。その瞬間だけ、サングラスの奥の鋭い目がクリスを見据えた。
「トーマス……来たわね!」
クリスは軽々とキャッチし、すぐに“それ”を確認する。金属が手に馴染み、ずしりとした重みが心地いい。銃というにはあまりにも巨大で、砲というには精密すぎる機械。
「そ……そんなもの、どこに積んでたんだ!?まさか、“それ”をこんな街中でぶっ放すつもりじゃないだろうな……!?」
「アラ、やだ聞いてないの?魔法少女状態のミツキがいる半径10キロの中は——治外法権よ」
「はぁぁあああ!?」
「サァ、怪獣!これで勝負よ!」
クリスは笑みを浮かべると、鮮やかな手つきで機器を操作し始める。冷たい金属の感触が指先に伝わり、精密な動作が武器と一体化していく。まるで長年の相棒を扱うように、スムーズかつ正確に。
「リサ、ミツキ!急いでよ!」
「わかってる!」
リサは魔法を解放。次の瞬間、空気が震え、巨大なエネルギーシールドが展開される。光の壁はうねりながら拡大し、怪獣の動きを封じ込めるかのように周囲を覆っていく。
「ミツキ、頼んだわよ!」
クリスの目が鋭く輝く。
ミツキはその一言を受け、星の魔法弾を放つ。鮮やかな軌跡を描いた弾は怪獣の足元に着弾すると、瞬時に鎖のように絡みつき、四肢を封じる。
「シールド、そのまま維持してよ!」
リサは歯を食いしばりながら力を込め、シールドがさらに厚みを増す。
その間にも、クリスの手は無駄なく装置の設定を進めていた。金属の操作音が響き、計器が次々と反応していく。手元のスクリーンには怪獣の心臓部——光る核が映し出される。
「照準合わせ……よし、完璧!」
クリスは息を整え、指先に集中を込める。音が消えたような静寂の中——
「行くわよ、バカ野郎っ!」
引き金が引かれた瞬間、轟音が空を切り裂いた。圧縮されたエネルギーが解放され、真っ直ぐに怪獣の胸部へ。
直撃。
凄まじい爆風と閃光が炸裂し、衝撃波が周囲を揺るがす。怪獣の核が砕け、その巨体がスローモーションのように傾ぎ、ゆっくりと崩れ落ちる。
砂煙が舞い、静寂が訪れる。
クリスは肩で息をしながら、ニヤリと笑う。
「ほら、やっぱり私に任せて正解でしょ?」
砲を片付けるその手際は鮮やかで、まるで日常の一部であるかのようだった。その表情には余裕と自信が満ちていて、まさに歴戦の戦士そのものであった。
なんだ歴戦の戦士って。




