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星の子たち1  作者: あじのこ
12/70

春 1-12

日本人の平均身長を大きく超える二人の男は、あてもなく軽井沢の街を散策し始めた。


周囲の人々はその圧倒的な体格に目を見張るが、二人の間にはしばしば言葉が途切れたが、しばらくするとクリスは大きな声を出した。


「ネェ、もしかして私たち、あの子に気を遣われたんじゃない……!?」

「……そうだな」


少し間を空けてから、センセがようやく言葉を発した。今日はほとんど口をきかなかったが、それが意図的だったわけではない。ただ、話す内容が思いつかず、沈黙が自然に広がっていった。


そして、その空気を壊すことなく、二人は16歳のミツキに気を使われる形になったことを、どこか恥ずかしく感じていた。


「……さっきはその、仕事のことに口を挟んでしまって、すまん」


クリスは少し驚いた顔をした。


「いえ、私の方こそ……」


沈黙の中で二人は、ふと目を合わせ、また少し顔をそらす。その一瞬の照れが、ミツキの作戦が成功した証のようだった。


微妙な距離感が少しずつ埋められ、二人は再び並んで歩きながら、その空気の変化を感じ取っていた。その時だった。


「……? なんだ、あれ……?」


オレの視線の先、旧軽井沢の街並みの向こう側に、巨大な影がゆっくりと姿を現した。

ビルの合間を縫うようにのそり、のそりと進むその異形の姿。


「……ちょっと、冗談でしょ……?」


クリスが呆然と呟く。


「オイオイ……なんだよ……あれ……」

「“怪獣”よ!センセ!はやく逃げなさい!」

「かい……じゅう……?」


クリスはぐっと唇を噛み、通信機を取り出して操作する。しかし、ザーッとノイズが走り、まともに繋がらない。


「チッ……障害が発生してる。このままじゃ、救援要請もできないわ」


センセが黙って怪獣を見つめる。

その瞬間——轟、と空気が震えた。


「センセ!クリス!なにしてんの!?早く逃げなさいよね!」


ミツキの怒鳴り声とともに、まばゆい光が弾けた。


──夜空に星が生まれる瞬間のような輝きだった。


ミツキの足元から、星屑が弾ける。光の粒が彼女を包み、青い夜空のようなマントを形作った。スカートの裾には細かな星の刺繍。手には、星の光を宿したロッド。


「星の導きに従い、闇を打ち払う!」


ミツキがロッドを振ると、流星のように光がきらめいた。


一方、リサの周りには、静かに温かな金色の光が広がる。


光がふわりと集まり、淡い黄色のケープを形作った。六角形の模様が浮かび、それがそのまま魔法陣の盾へと変わる。


「黄金の壁よ、私たちを守ってください……!」


小さく呟くような声。それでも、展開された魔法陣はしっかりとした力を帯びていた。


二人の魔法少女が、光の中に立つ。


轟、と空気が震えた。


「いくわよ!」


ミツキが真っ先に駆け出した。


「スターインパクト!」


ロッドを振ると、流れ星のような光弾が怪獣に向かって放たれる。


しかし──


「えっ……?」


星の光は、怪獣の黒い身体へと吸い込まれていった。


「ミツキ、下がって!」


リサがすかさず前に出る。六角形の魔法陣が展開され、光の壁が二人を覆った。


「くっ……ありがと!」


ミツキが慌てて構え直す。


初めての二人での戦闘。なのに、息はぴったりだった。ミツキが攻め、リサが守る。


合宿中の生まれた交流の絆が今、確かに現れていた。その後ろで、クリスは奥歯を噛み締めながら怪獣を見つめていた。


(やっぱり……こいつは魔力を吸収する……!)


街の喧騒が一変し、異様な静寂が広がる。


旧軽井沢の通りには人の姿が消え、残されたのは、止められたままの車と、不気味にそびえ立つ怪獣の影。


道路脇に停車していた軽トラック——まだ無傷のその車体に、クリスと先生は身を寄せた。


「なぁ……気のせいかさっきからあのバケモノ、少しずつデカくなってないか……?」


先生が低く呟き、隙間から怪獣の姿を覗く。


「センセ、目が良いのね。その通りよ」


クリスは片手で通信機を操作しながら答えた。


「その通りって!?」

「……あれは恐らく魔力吸収型の怪獣よ。魔法少女の使う魔力を餌にしている。倒すには……直接あれの核を撃ち抜かないといけないわネ」

「なんだそりゃ」


オレは自分の顔の筋肉が硬くなるのを感じた。


「……いや、撃ち抜くって、お前……」

「できるわよ。やるしかないでしょう?」


クリスは小さく舌打ちし、通信機を握り直す。しかし、ザーッとノイズが走るばかりで、まともに繋がらない。


「チッ……障害が発生してる。このままじゃ、救援要請もできないわ」


「じゃあ、どうするんだよ!?あのままじゃアイツらやられちまうぞ!!」

「……させないわよ」


クリスは静かに呟いた。


「トーマス。聞こえるかしら。バスに積んでおいたアレを持ってきてくれる?」


昼の陽射しが軽トラックの窓に反射し、クリスの横顔をぼんやりと照らす。その目は鋭く、何かを決意したかのように冷静だった。


——大人の矜持にかけてね。

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