春 1-11
昼食を終えると、班ごとに分かれて旧軽井沢銀座通りの散策が始まった。
クラシックな洋菓子店や、木の温もりを感じる土産屋が軒を連ね、観光客や学生で賑わっている。
「センセ!見て見て、このマグカップ可愛くない?」
「……お前、それもう三つ目だぞ」
お小遣いは3000円までの話じゃなかったのか、重箱の隅を突くセンセを無視するミツキが片手にお土産袋を抱えながら、さらに新しいマグカップを手に取る。リサとコウリも、キラキラした目で色んな店を巡っては歓声を上げていた。
一方で、クリスとセンセの間には微妙な距離が生まれていた。
「……なんか、さっきからセンセとクリス、空気変じゃない?」
ミツキが小声でトーマスに尋ねる。
彼は相変わらず無言のまま、ただ首を横に振る。
「なーんか気になるんだよねえ……」
ミツキの心の中で「センセとクリス仲良し作戦」 が静かに発動した。ゾロゾロと街中を歩いていくと急に大きな建物が見えてくる。
「あ!トリックアートミュージアム!」
リサが指をさした先には、軽井沢の人気観光スポットのひとつ、トリックアートミュージアムがあった。
「せっかくだし、みんなで行こうよ!」
「オレはいい」
「私も、外で待っているわ」
即答するセンセとクリス。
「えー、せっかくだから一緒に行こうよ!」
ミツキは粘ったが、センセは「興味ねえし」と腕を組み、クリスも「私は……そういうのは」と苦笑いするだけだった。
ミツキは少し考え、それからぽんっと手を叩いた。
「じゃあさ、センセとクリスは二人で散策してきたら?」
「は?」
「……は?」
息の合った返事。
「ほら、銀座通りって結構広いし、行ってない店もいっぱいあるよ。せっかくだし、二人でゆっくり回ってきなよ!」
センセとクリスは、まるで同時に「いや、別に」「なんで野郎と観光地なんて巡るんだよ」と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
ミツキの提案に、リサとコウリが「いいね!」と乗ってしまったせいで、もはや流れを断ち切ることはできない。
「……仕方ないな」
「……では、少しだけ」
こうして、センセとクリスは妙な形で二人きりの散策に向かうことになった。
トリックアートミュージアムの前ではすでにリサとコウリがはしゃいでいた。
「……うわっ!」
「めっちゃ飛び出して見える!」
「トーマス、そこ立って!写真撮るから!……ヤバっウケる!!」
トリックアートミュージアムの中では、ミツキたちが大はしゃぎしていた。
壁に描かれた絵の中から飛び出す動物、錯覚を利用した不思議な空間。どれもが魔法とは違う“奇跡”で、見ているだけで楽しい。
しかし、ミツキはふと、センセとクリスがどうしているのか気になった。
「……仲直り、できてるといいけどね」
そんなことを呟きながら、ミツキは次の展示へと駆けていった。




