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レヴェイユ  作者: ヤヤ
第二章 裏切りの少女
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四十五話 魂の在り方

 ピッ、ピッと定期的に鳴る機械音。

 心拍の数値を表すそれを視界、そっと白いベッドの上に眠るふたりの男女を見たリレイヌは、その場で深々とため息を吐き出した。先程から治癒術を受けている彼らは、どうも目覚める様子がない。

 固く閉ざされた目にもう一度嘆息した彼女に、その従者であるイーズが困ったように声をかけた。


「主様。お座りになった方が……」


「いやいい。大丈夫だ」


「しかし……」


 もごりと口ごもるイーズ。どうしようかと視線を迷わせる彼を横、黙り込むリレイヌに治療を終えた様子の女性が一礼。「主様」と声をかける。


「……何かあったかい?」


「はい、それが……」


 頷いた女性は、ちらりと眠るふたりを確認。小さく息を吐いて、覚悟するようにリレイヌを見る。


「身体的な傷は治療を終えました。怪我についての問題はありません。しかし、治癒術をかけている中で気づいたのですが、どうもその……魂の在り方がおかしいんです……サイ、さんの……」


「魂の在り方?」


「はい。なんと言いますか……不安定、と言えばよろしいんですかね? どんなに治癒術をかけても、それだけが揺らいで治らなくて……これが治らなければ、恐らく、サイさんが目覚めることは不可能かと……」


「ふむ……」


 小さく下を向くリレイヌがすぐにその顔を上げた。そして、「イーズ」と己の従者の名を口にする。


「至急連絡班に連絡を。あの時あの場で共に保護された猫──ミオの様子を教えてくれとな」


「……はい」


「シェリル。悪いが引き続きふたりの回復に努めてくれ。何かあれば逐一報告してもらえると助かる」


「かしこまりました」


 ゆるりと頭を下げた女性が、その美しい金色の髪を揺らしながら踵を返し、眠るふたりの傍へ。再び治癒術をかけ出すその姿を尻目、リレイヌは「行こう」とイーズに呼びかけた。イーズは頷き、連絡班への連絡を終えてから歩き出す彼女の後を追う。


「あ、リレイヌ」


 と、医務室から出た彼女に声がかかった。ゆるりと振り返れば、そこにはゆるやかにウェーブした茶髪を持つ女性がひとり。傍らに猫耳の生えた銀髪の女を連れて立っている。


「優花……」


 リレイヌが女性の名を口にした。それに女性──柊優花は小さく笑うと、「あなたも来てたのね」と、困ったように微笑んだ。つい、リレイヌは口を閉ざして黙り込む。


「エスとサイ。狂人にやられたんだって?」


「……ああ。こちらにはそう報告が来ている」


「よね。私のところにもそう来たから……ふたりの様子、どうだった?」


「エスはともかく、サイの方は危険な状態だ。おそらく、狂人により魂の在り方を変えられている」


「……そう」


 頷く優花。困ったような顔で腕を組む彼女に、リレイヌはそっと視線を下げて「悪い」と一言。キョトンと目を瞬いた優花は、ああ、と落ち込むようなリレイヌの様子に目を細め、柔く笑う。


「あなたが今回、なにか悪いことした?」


「……いや」


「なら、謝らなくていい。こうなってしまったのは、きっと仕方の無い事だったと思うし……」


「……」


 されど晴れないリレイヌの顔。暗い顔で俯く彼女に、優花は沈黙。してから、「そういえば」と、声に反応して顔を上げた小さな少女に笑いかけた。


「シジミくんが帰って来てたわよ」


「! リンちゃん隊長が?」


「そ。長旅で疲れた〜、って嘆いてたから、会いに行ってやったらどうかしら。ほら、アイツあなたにはとことん甘ちゃんだしね」


 パチン、とウインクを飛ばした優花に、リレイヌは「そうだっけ?」と悩ましげな顔に。思わず「気づいてないんかい」とつっこんだ優花は、苦笑しながら「とりあえず行ってきな」と小さな彼女の背中を押す。


「可愛い従者のことは面倒見とくからさ!」


「え、あ、うん……じゃ、じゃあ、挨拶だけして……来ようかな……」


「うん。行っといで行っといで」


 あはは〜、と笑いながら手を振る彼女に頷き、リレイヌは足早にその場を去っていった。残された面々は沈黙。した後に、ジッと優花に目を向ける。


「……優花ぁ、こういうの聞くのアレにゃんだけどもぉ……シジミくんって、誰にゃ??」


「ああ、アンタらは知らないわよね」


 笑う優花が、「一言でいえばただの阿呆」と発言。猫女とイーズが思わずと顔を歪めるのに、彼女は笑って言葉を続ける。


「阿呆だけど、根はすごい良い奴よ」


「まあ、優花がそう言うんだったらそうなんだろうけどもぉ……」


「納得できませんね。なぜその阿呆に主様があのような反応を示すんです?」


「ん? それはねぇ〜」


 優花は言い、クスリと笑う。


「アイツが、あの子にとっての恩師だから」


「「恩師?」」


「そ。リレイヌとって、シジミくんはステキなお師匠様ってコト」


 ふたりは納得したのかしていないのか、微妙な顔で互いに顔を見合せた。優花はそんなふたりに、笑いながら言う。


「ま、古ーい付き合いなのよ。アイツも私も、あの子たちとね」


 これ以上は教えない、と口を閉ざした優花にふたりは沈黙。やはり難しい顔をしながら、黙ってリレイヌが去った方向を見つめていた。

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