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レヴェイユ  作者: ヤヤ
第一章 人喰いの少年
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十六話 同種という可能性

 



「主様、調査報告が届きました」


「またか。今日でもう七度目だぞ」


 調査班は仕事熱心だなぁ、なんて言葉を漏らし、報告書となる紙を受け取る。報告書には近隣の街での聞き込み結果が記載されており、結果は収穫なし。だろうなと心の中で頷き、あと数回は来るであろう報告に息を吐き出す。


「なんや忙しそうですね」


 調理の仕事を終え、手持ち無沙汰になり主の元を訪れたオルウェルが、自作のカップケーキを食しながらリレイヌを見る。長い前髪の下に隠れた青の瞳が、大丈夫かと言いたげな色を宿していた。


「忙しくはないよ。今のところ。忙しいのは調査に駆り出されてる者たちさ」


「報告聞くのも一苦労でしょうに……あ、ケーキ食べます?」


「いただこう」


 差し出した皿をイーズが受け取り、主の元へ。リレイヌは手渡されたそれを受け取り、香ばしい香りを放つカップケーキを片手にとる。


「で、なんの調査なんです?」


「人喰い病の調査だよ」


「ああ、あの子が患っとるあれね」


 かぷりとケーキにかぶりついたオルウェルを尻目、同じく手元のケーキに歯を立てたリレイヌは、それを口内で咀嚼するとごくりと飲み込む。程よい焼き加減とふっくらとした生地、練り込まれたフルーツの酸味に自然と口元が緩んだ。いけないいけない。

 とっさに口を抑えて、リレイヌは平常心で口を開いた。


「調査結果は毎回成果なし。そんな噂は存在しないとされていてな」


「へー」


「つまりメニーが患っているのは流行病ではない。未発覚の病なわけなんだが……」


「ほー」


「……私は正直、病ではないと思っている」


 静かに告げれば、屋内の視線は自然とリレイヌへ。答えを待つように沈黙する二人に、彼女は再びカップケーキに歯を立てた後、もくもくとそれを咀嚼し嚥下。言葉を発す。


「メニーは……あの子は、我々と同種なのではないかと……」


「同種って……え?」


「龍神なのではないかということさ」


 ぼとりと、オルウェルの手からカップケーキが落下した。皿の上で跳ね返り、テーブルをバウンドし、やがて床に落ちたケーキはころりと転がりソファーの下へ。慌ててソファーをどかそうとするオルウェルを止め、リレイヌは片手を振った。それにより、落ちたカップケーキが吸い寄せられるように皿の上へと戻っていく。


「落ちた物は食べないようにね」


 一つ注意をし、言葉を続けた。


「話を戻すが、メニーは私や……いや、私ではなくコトザと同種である可能性が非常に高いと思っていてな。コトザは人間と龍神の血を持つ者。いわばハーフ。人工的に作られた神だ。メニーもその類なのではないかと思うんだよ。神気などは纏っていないから、判別に困るがね」


「い、いやいやいや、ちょお待ってくださいよ! 人工的に神族作ることは禁止されたはずでは!? レヴェイユの資料室にもそげなこと書かれた資料たくさんありますけど!?」


「禁止したからときちんとやめられるものではなかろう。人は罪を犯したがる生き物だからな。知的好奇心というものもある」


「いやまあ、そうでしょうけども……」


 あの子供が、目の前の神と、同種……?


 信じられないとオルウェルは頬をひきつらせ、イーズは納得出来るところがあるのか一つ頷いてから主に紅茶を淹れてやる。あたたかな紅茶が一定量入った真っ白なカップを受け取ったリレイヌは、己の従者に感謝を述べてから手にしたそれに口をつけた。


「……とりあえず、現在の調査が終わり次第、レヴェイユには動いてもらう。理由はどうあれ神族を作ることは罪だ。しっかりと取り締まらねばな」


「早々に取り締まった方がいい気もしますがね」


「焦ってバレて逃げられでもしろ。それこそ厄介だぞ。まあ逃げても居場所の特定は容易いんだが……」


 そこまで言って、リレイヌは視線を窓の外へ。一度言葉を止めてから、眉を寄せて一言。


「厄介なのが来た……」


 げんなりと呟いた。

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