人間やめた?
文化祭の準備も着々と進んでいく。
私も先生たちと打ち合わせをしたりして放課後まで残ることが多かった。
今日も先生との打ち合わせに向かおうとした際、屋上に続く階段から物音が聞こえた。
「誰か屋上にいってんのか? 幕下げ?」
いや……まだ文化祭まで日がある。
まさか……な。
私は屋上に続く階段を登っていく。
屋上は元来立ち入り禁止……。そんなとこで物音がするなんておかしいよなぁ。
幽霊かな?と思い、私は屋上へ続く階段を登っていく。登る時に段数を数えながら。
すると、屋上の扉が開いており、私はその扉から覗き込む。
すると、屋上の柵を越えて今にも飛び降りそうな男の子が立っていた。
「……えっ」
また出会うの?
先生を呼びにいくか? と悩んだけど、呼んでる暇はなさそうだった。
男の子が呪詛のように、俺をいじめた奴らは呪ってやると告げて、下の方から声が聞こえる。先生方が校庭で眺めているようで、呼びにいく時間がない。
仕方ないか。
私は全力で駆け出し、飛び降りようとした男の制服を掴む。
「ぐあっ、重っ!」
「だ、誰だ!」
「知らんやつだよ! 何私の前で飛び降りようとしてんだコラ!」
私は両手で男の子を持ち上げようと力を込める。
下には先生たちや、生徒たちがポカンとした顔で立っていた。
「離せよ! お前には関係ないだろ!」
「関係あるだろうがよ! 自殺したいんならもっと別の場所で密やかに死ね! こんな学校なんかで死ぬな! 何があったのかは私にはさっぱりだし、興味もそこまでないけど……人の死ってのは心に大きく傷を残すんだよ!」
「離せよ!」
「それしか言えないのか! お前は自殺という手段で世間に何かを訴えようとしてるかもしれないけど、自殺した後どうする? どうやって世間を変えたことを見たり聞いたり、自慢したりすんだよ!」
「…………」
「世間を変えたいなら生きて変えることをしろ! 復讐なら法律に則ってやれ! それに、この高さならワンチャン死ねないぞ!」
私は全力で男を引っ張りあげた。柵の内側に倒れる男の子。
私は息を切らしながら男の子に語りかける。
「お前さぁ! マジでやめろよ人の目の前で死ぬの! こんなか弱い私にこんなことさせんなって! 生きてて2回目だぞこういうの!」
「……ごめん」
「何があったかは私が聞いてやるから。死ぬのはやめろ。お前の親だって悲しむぞ。親が悲しむのに自分は死ぬからそれでいいって責任あんのかお前……」
私がそう叱咤すると屋上に先生が到着した。
「よくやった吉備津! 能登も神倉。怪我ないか?」
「……ありません」
「そうか。まずは立て。とりあえず保健室に行こう。何があったかは先生が聞いてやるから」
「……怒らないんですか」
「怒らん。そう聞くってことは怒られるようなことをしたと反省してるんだろう? お前は怒らん」
「……ごめんなさい」
そう言って先生に連れて行かれる神倉という男の子。
私は柵にもたれかかり、一件落着と言おうとしたときだった。柵が壊れ、私の体が空中に投げ出される。
「えっ」
「えっ」
「吉備津……!」
私は、そのまま重力に従って落下していく。
「なんでええええ!? なんでこうなるのおおお!?」
私はそう叫びながら、態勢を整えて、着地する。受け身を取り、校舎の4階から落ちた衝撃をなんとか受け流す。
なんで人生で2回も同じ目に遭ってんだ。私は強く打った腰を摩りながら立ち上がる。少し遅れて先生たちがやってきた。
「大丈夫か!?」
「救急車……!」
「いいっす……。腰打っただけなんで……。ついてないぜ……」
日ごろの代償かぁ?
先生は救急車を呼んだ。私の頭から赤いものが垂れてくる。頭も打ったらしい。
私は救急車に乗せられて病院まで先生と一緒に向かっていろいろ検査した。
腰とか足とかレントゲンを取られた。
「……本当に4階以上の高さから落ちたんですよね?」
「はい」
「それにしては随分と骨が……。どこも折れてる箇所がないというか。ヒビもない……。嘘をついてるわけではないですよね?」
「はい」
「え、えぇ? あなたどんな体してるんですか?」
と、医者からそう言われた。
「ちなみにこれ2回目くらいなんすけど」
「えっ!?」
「昔、5階くらいある校舎から落ちたこともありまして……」
「えっ、えっ?」
「4階くらいならこんなもんかと思ってたんですけど」
「なわけ……。普通4階から落ちたら最悪死ぬんですよ!?」
「えっ!?」
「えって驚くどころではないです!」
そうなの?
どんだけ丈夫なんだ私の体。私の体、本当にどこかおかしいんだよな……。
「ともかく……。軽い擦り傷や打撲の跡は見られますが……骨に異常はなく、脳も皮膚が切れた程度ですので安心を……」
「はい」
先生も呆気に取られながら病院を後にする。
「お前、本当に人間か?」
「…………自信ないです」
私ってもしかして人間やめた?




