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金曜日、私がいつものように起きて、朝ごはん食べて歯磨きして制服着て……と学校に向かおうとしてるときに、Twitterのほうでなんだかお知らせが来た。
DMが届いている。
ママたちのコラボのお誘いかなー? めっちゃコラボするぐらい仲良くなってるし。
それとも勇者メロンとか? と思っていると思いっきり違った。
相手は……。
「Eclips World Online公式……!?」
ニセモノ……とかではないな。
企業マークついてるし、本物だ。間違いなく本物。え、公式がなんの要件?と思い、メッセージを開く。
書いてある内容は。
「私を広告に起用……!? マジすか!」
嬉しい…‥と思ったが、私はあることを思い出した。
あの炎上のこと。ああいうことした手前、私が広告に出ていいのかという疑問。
いや、嬉しいし、なんならあのマルーンの父さんにもらった3Dモデルあるし、出れるんだけど……。
私でいいのかと聞いてみると、構いませんと返ってきた。
マジすか。あれは土下座案件なのに。まぁ、やるかぁ……。やってるゲームだし、広告に出られるなんて初めてだしな……。
というわけで、今日は帰ったら東京いくか。三連休だしな今日終わったら。
というのが、昨日までの私。
今日はめちゃくちゃ緊張しております。
「初めまして。EWO、ゲームプロデューサーの佐久間です」
「初めまして……。玉藻イナリ、でふ……」
「そんな緊張しないでください。本当に高校生、なんですね」
「はい……。年齢に嘘偽りはございません……」
「飛行機で来たんですか? 親と?」
「お一人で……」
「一人で……。すごいですね。では、さっそく広告についてなのですが……」
私は広告の説明を受けた。
私のゲームのアバターではなく、私のVに似せたアバターを作成したからそちらで、広告のために作った小さい世界でこの台本の通り演技すればいいらしい。
ふむふむ。私は台本を読み、記憶する。
「一応カンペは出しておくので」
「いや、覚えたんで大丈夫です!」
「そうかい? なら早速撮影行ける?」
「はい!」
私は会社にあるめちゃくちゃお高そうな機械に寝転がり、目にヘッドギアが装着される、
そして、私はそのゲームの世界にやってきた。私の体には金色の狐の尻尾に狐耳、そしてお茶目な狐のお髭。八重歯もついている。まじの私のVの身体だ。
前のモニターにはプロデューサーさんの顔が写っている。
『準備はいいですか?』
「はい!」
『では、開始します』
そういうと、演技を始める。
「皆さんこんにちは! 私はVTuberの玉藻イナリです! 私は今、魔物の大群に追われています!」
なんと私は魔物に追われながら宣伝する。
なんでやねん。
「私が今プレイしている、エクリプスワールドオンラインはさまざまな体験がいっぱい! 剣士、魔法使い、狩人に……鍛冶職人、大工、錬金術師! なりたいもの、やりたいこと、ゲームで見つけませんか?」
と言いながら逃げてる私。
「私も、やりたいことたくさんやってます! 以上、玉藻イナリでした〜、時間潰させてごめんなさい!」
と、私が走っていると目の前にどでかい象みたいな魔物が現れる。
そう。これも伝えるのだ。私は象が目の前に現れて。
「え、これがレイドボス……?」
とだけ言い残し、魔物に轢かれ吹っ飛ばされる。キラーンと古典的な表現と共に、現実世界に引き戻された。
プロデューサーさんが手を叩いて褒めてくる。
「一発ってすごいね。文句なしです!」
「よかったです……」
「ありがとう。広告料に関しては、銀行口座に振り込んでおきます。額はこのくらいと……」
「いえ、私は受け取れません……。その、前にあんなことしたので……」
「あぁ、そのこと。いいんですよ。私たちも詰めが甘かったので。受け取ってもらわないと企業として困るので」
「あ、あざっす……」
このお金、どうしよっかなぁ。めちゃくちゃ広告料として高いギャラをもらった。
私は鞄にしまい、気になったことを聞いてみる。
「あの、そもそも何で私なんですか? 他に有名なVとかいますのに……」
「ええと、あなたが一番海外人気が高いし、株主の要望なんですよ」
「えっ……株主の……?」
「はい。嬉しいことにあなたがやってるからこの会社の株をたくさん買ったという人もたくさんおりまして。あなたを広告に起用するようにとおっしゃられて」
「…………」
言われてみればそうだよな。
マルーンの父親……帝野家は金持ちだ。会社の社長が付き合うとなったらそれこそめちゃくちゃ偉い人だろう。だって金持ちだし。
金持ちの友達は金持ち、なんだよな……。株とか余裕で買えるわ……。
「ありがとうございます。あなたのおかげです」
「いえ、私はただ好きに配信してるだけなんで……」
帝野家を味方に回すとやべえよ。どんだけやばいことしてんのか自覚あるのか帝野家。
改めて私は戦慄しました。




