妖怪ランク
アナザードラゴンというのは、この世界における創造主の一匹らしい。
強者を求めてさまよい、自分の目利きに合う人間には唾をつける。その唾をつけられた人間がこの魔進化の泉という泉に認められ、初めて進化できるらしい。
一気に一番上まで……。
「なるほどぉ。で……。道行く妖怪たちが私の姿みてビビってるのはなんでです?」
「そりゃワシと同じSSランクの妖怪だからだよ!」
「ほえー」
閻魔大王に並ぶランクってことですね。
アンテは少し悔しそうにしているし、スコティッシュはすごいですねぇとほほ笑んでいるし、フォーチュンはキエエエエエ!と外で叫んでいる。
そして、進化おめでとうとスパチャもたくさん飛んできていた。
「そんなひっくいレベルで進化したのはお前さんが初めてだ! 唾を付けられるやつってのは基本100は越えてるからな……。偉業だぜ!」
「そうなんですか?」
「どんな手を使って認められたんだ?」
「ドラゴンの攻撃をよけて一回殴っただけなんですけど」
「はは、そうか。あの攻撃をよけられたか」
え、あの攻撃をよけるのそんなにむずかったのかな。
いや、思い返してみると結構難しかった記憶がある。難なくできたが、あれ普通に考えたら相当ムズイ、よな。
うん、ということは偉業だわ。
「ん、レベルが低いってことは……。まだ完全に天狐のスキルを取得したわけじゃねえな。ならまだ来る理由があるな!」
「えっ、そうなんすか?」
「ああ。最上級の進化だぜ? 1つだけで済むはずがねえだろ?」
まあたしかに?
私が異例らしいからな。アナザードラゴンと出会うのも確率だっていうのに勝ったとは言わなくても攻撃はよけられてるんだもんな……。
私がおかしいのかもしれない。
「レベルが100を越えたらもらえるだろ! レベルを上げてまた来い!」
「うっす」
レベルが足りない、か。
レベリングしてもいいが、王都付近の敵はレベルが低いんだよな。遠出してるとはいえ、私が余裕で倒せる範囲だ。そこまで強い敵じゃない。
「ふははははは! ならば我はまずアナザードラゴンと出会おう! そして、進化するのだ!」
「目指すのはいいが、レベルが足りんぞ」
「構わぬ! 何事も挑戦だァ!」
「向上心つよいですねぇ……。あ、そうでした。あのぉ、魔界鉄という素材が欲しいんですがそれってどこにありますかぁ……?」
「魔界鉄なら魔界鉱山って場所に普通に採掘できるが……。お前さんたち採掘レベル足りないな。天狐の権限で大体の妖怪は従うだろうし、鉱山で誰かひとり連れて行って採取してもらえ」
「わかりましたぁ。ありがとうございますぅ」
「ああ、あと魔界のナシっていうのは?」
「魔界ナシ農家が街にいる。譲り分けてもらえ」
「ありがとうございます! よし、じゃ、さっそくいこう!」
私たちは魔界のものをとりあえず採取することにした。
まず最初に向かったのは魔界ナシ農家。私が話をすると、天狐様が魔界ナシを欲しがっている!と号令が飛び、ものすごい数の魔界ナシが分け与えられた。
魔界ナシ。紫色の見た目をして少し禍々しいが、一つかじってみると。
「うまい! 甘くてシャリシャリしてておいしー」
「美味しいですねぇ。ナシのシャリシャリ感、蜜入りリンゴを思わせるようなこの甘さ……。美味しいですぅ」
「…………っ!」
フォーチュンは何個も魔界ナシを食べていた。味が気に入ったらしい。無言で結構な数平らげるフォーチュン。さすがに数もあるので、さすがに止めておいた。
次は魔界鉄。魔界鉱山に行くと、炭鉱夫の妖怪たちが足を止めて私にひれ伏す。
「どうしたのでありましょうか天狐様!」
「ああ、えっと魔界鉄が欲しいんだけど誰か一緒に採取してくれない?」
「なら私が行きます!! わ、私は鰻男と申します! よろしくお願いします!」
と、顔が鰻の……。鰻男って妖怪いるんだァ。
「わかった。お願いしていい?」
「はい! やったぁ! 天狐様から直々にご指名だぁ!」
「おま、いいなぁ」
「早い者勝ち!」
SSランクの妖怪ってめちゃくちゃすげえんだなぁ。九尾とかでもめちゃくちゃすごかったが。妖怪にとってランクはめちゃくちゃ大事なのかもしれない。




